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Plaid: 静かなる進撃
このAPI企業の次の章はカテゴリーを定義するものになるかもしれない。
今回は2021年1月31日にテックメディアThe Generalistより公開された米フィンテックのPlaidに関する記事を紹介します。
約1年3ヶ月前の少し古い記事ですが、Plaidが何をやっているのか、そして何が凄いのかが簡潔にわかるとても良い記事となっています。
この1年はPlaidは基本的にグローバルなデータアグリゲータとしての打ち手を継続するとともに、およそ独占的にも思われていたその地位を脅かしうるプレイヤーたちの登場が目立った1年でした。具体的に何が起こったのかをまととめてみます。
2021年3月: Plaidが雇用者の収入や雇用の証明を可能にするPlaid Incomeを発表
このサービスを利用することで、ユーザーの許諾がある場合にはフィンテックや金融機関がPlaidのAPIを通じてそのユーザーの収入や雇用の照明が可能になります。これによりレンディングにおける審査プロセスの簡素化、電子化などを効率的に行うことが可能になりました。2021年4月: PlaidがシリーズDで$450Mの資金調達を実施
既存投資家であるAltimaterを始め、Ribbit CapitalやSilverlakeら新規投資家も含め$450Mを調達。2020年には顧客が60%増、従業員は当時の時点で650人存在することが明らかになりました。2021年6月: VisaがオープンバンキングプラットフォームのTinkを$2Bで買収
同年1月に独占禁止の観点からPlaidの買収を断念したVisaが”ヨーロッパのPlaid"であるTinkを買収。
去年4月の時点でPlaidの評価額は$13.4Bとデカコーン入りしており、今も勢いは止まっていないという理解です。というのも、Plaidは米国の膨大な数の金融機関と統合している唯一と言っていい会社だからです。歴史的に金融機関が多く、オープンバンキングが盛んではない米国ではPlaidのような多数の金融機関に単一の統合でアクセスできる企業は貴重です。
しかし、この1年でKlarna、そしてStripeとフィンテックの巨人がその領域に進出してきたというのも事実です。Plaidがこれまで築き上げてきた統合金融機関数とプロダクトスイートは大きなMoatですが、今後もその地位を維持できるかは全くわからない状態になってきました。
Post-Visa時代の主役とも言われるPlaidの物語をどうぞお楽しみください。
原文はこちらです。
著者であるMarioさんのTwitter ↓
本記事は著者の許可を得て翻訳するものです。
本記事は1万字強のボリュームとなっています。
僕のTwitterでは国内外のフィンテック情報を中心に毎日発信をしています。主戦場はTwitterですので、ぜひ覗いてみてください。
それでは本編です。
Zach Perretはスポットライトを当てられることを気にしていないように感じられます。市場の混乱と操作で混乱した週、つまりWallStreetBets Redditコミュニティが空売りを排除し、Robinhoodを切り捨てたときに、PlaidのCEOはかなり慎重なツイートをしました。
「今週は200万人以上の新しい個人投資家をオンラインにする予定です。」
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もっと大げさで宣伝上手なリーダーの手にかかれば2つ目の文章はこうなっていたかもしれません。
「そして、そのほとんどすべてがPlaidを使うことになるだろう。」
投資家がRobinhoodを捨ててPublicやWeBullに移ったり、安定的な暗号資産取引所Coinbaseのに移ったりしても、1つの要素は変わりませんでした。彼らはPerretのプラットフォームを介して銀行口座へのアクセスを許可したのです。
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PlaidがVisaの買収を断り(Visaの買収断念は2021年1月)、独立を維持する決定を発表してから1カ月も経たないうちに同社は過去最高の週を迎えたに違いありません。
しかし、Plaidは新たな命を得て何をするのでしょうか?
Plaidのリーダーシップからのメッセージ、Visaの買収を独占禁止法に基づいて阻止しようとする司法省の訴訟、そして新製品の展開を検討することで、今後の道筋が見えてきます。地域や技術の違いを超え、PlaidとPerretはテクノロジー業界の歴史に残る偉業を成し遂げようとしています。
今回の記事では以下のことを探求していきます。
Plaidの優れた防御力
同社がターゲットとしている地域(そして次に行くべき地域)
エンドランに向けた製品のラダーリング
Zelleと脅威の協調
1. Plaid: メタファーで理解する
Plaidとは?
金融機関がフィンテックアプリケーションにデータを渡すことをユーザーに許可するAPIだと説明しても、ピンと来ない人もいるかもしれません。
もっと直感的な言葉で表現してみましょう。
おめでとうございます、あなたはMi6に徴兵されました。あなたの最初の任務はCOBOLのUnholy Hallから重要な書類を取り出すことです。
Unholy Hallに到着すると、左に3つ、右に3つ、計6つの扉があり、それぞれの扉の前には警備員がいます。そしてそれぞれの扉の向こう側には必要な書類があります。ミッションを達成するためには6つの部屋すべてに入り、情報を集め、アメリカ人のフィン・テクに渡す必要があります。
最初の警備員に近づきます。
「求めないものは得られない」という母の言葉を思い出しながら、ステルス訓練を無視して、警備員1に「お願いします、部屋に入りたいのですが」と言います。
「パスワード」と警備員1は無愛想に答えます。
パスワードは持っていません。でも次の警備員はもっといい人かもしれないという希望に任せ、あなたは警備員2に歩み寄り、要求を繰り返します。
警備員2はフランス語で「パスワード」と答えます。
続いて警備員3がドイツ語でパスワードを尋ね、次に警備員4がアッカド語で要求します。警備員5が口を開くと、数字や図形が次々と現れ、コウモリのように暗闇の中を飛び回り、警備員6は甲高い悲鳴を上げます。
その夜、スーパーシングルスパイミキサーでフィンテックが笑い、ほくそ笑むことを知りながら、イライラして穢れたホールを後にするのです。
「一体何が起こったんだ?」 フィンはミキサーの前であなたの肩を激しく叩き、コベルティーニをこぼしました。「1時間も待ってたんだぞ」
「待ってくれ」とあなたは答える。「努力はした。しかしそこに着いた時、警備員はパスワードが必要だと言った。少なくとも私は彼らがそうしたと思う。そのほとんどは理解できなかったが…。誰がアッカド語を話すというんだ。」
「アッシリア語だ」とフィンは気取って言います。
「後ろ盾を連れて行かなかったのか?」
あなたは首を振りました。
「それが問題なんだよ。専門家が必要だ。私はある男を知っている。この種のことにはぴったりの男だ。彼はEl Tartánと呼ばれている。」
その名前を聞いただけで背筋がゾクゾクします。
翌朝9時に到着すると、新しいパートナーが来ていた。El Tartánは分厚いツイードのスーツを着ていて、あなたが歩いてくるとうなずきます。無言のまま2人はUnholy Hallに入る。
昨日と何も変わらない、同じ扉と同じ警備員です。El Tartánが先頭に立ちます。
「パスワード」と警備員1が言います。
「Rosebud」
その名が口をついて出るやいなや、扉が開き、警備員1が身を引きます。
El Tartánは何の前置きもなく警備員2に向かってこう言いました。「Bouton de rose」再び扉が開きます。
El Tartánは、残りの警備員に音節と音とイメージを組み合わせた音の連なりを見せ、廊下がエネルギーに満ちた声で満たされると、4つの扉の鍵が開かれます。あなたとEl Tartánは部屋から部屋へと急いで書類を集めます。フィン・テクがその書類を受け取り、任務完了です。
これこそがPlaidがもたらす価値です。ユーザーの要請に応じてフィンテックのインフラであるTartánが翻訳者や暗号解読者として、金融機関が使用している旧式のシステムとRobinhood, Chime, Venmoなどの最新のフィンテックアプリケーションを結びつけます。この連携により、Plaidは銀行口座の詳細や取引データなど有用な情報が詰まった書類の扉を開きます。これらのデータはより優れた金融商品の開発に利用することができます。
2. 支配力
この機能がどれほど強力なものであるかは想像に難くありません。6つのドアがある廊下ではなく、Plaidは数万のドアがある廊下で活動しています。推定ではありますが、世界には32,000の金融機関があると言われています。この分野でのファースト・ムーバーであるPlaidは少なくとも米国では揺るぎない地位を築いています。司法省は、Plaidが米国の11,000の金融機関と2億以上の消費者の銀行口座に接続していることを反トラスト法に基づいて訴えています。(つまり、Plaidは1つのインテグレーションで複数の銀行に接続することができるのです。)
このロングテールの広がりはPlaidの価値提供にとって重要です。仮に米国の金融機関が200社しかなかったとしたら、あるいは20社だったとしたら、反乱軍は挑戦しやすくなります。比較的短い時間で新しい会社がPlaidの製品を模倣し、同等のアクセスを提供することができます。現状ではこのような試みは無駄なことだと思います。Plaidは7年の歳月と3億ドル以上の資金を投じて現在の地位を築きました。
また、それぞれの統合は例えその1つであっても些細なことではありません。例えば、銀行ではいまだに重要な機能を動かすために1959年に開発されたCOBOLというコーディング言語が使われています。Plaidはそこまで古いものに触れる必要はないでしょうが、扱いにくい言語との戦いであることは間違いありません。難解な言葉に精通した技術者を探すのは大変ですし、その扉を開けるための作業は意味があります。
羨ましいことに、Plaidのポジションはビジネスに柔軟性を与えてくれます。この位置にいるといくつかの方向に優位性を広げることができます。国内で規模を拡大し競合他社をさらに抑制することもできるし、最も価値のある市場での支配的な地位を利用して他の地域での推進を補助することで地理的に拡大することもできるし、自社の顧客と競争するために製品を強化することもできます。
3. 地理的拡大
Plaidはすでに次のフロンティアを選んでいます。ヨーロッパです。2019年にロンドンに拠点を設けた後、フランス、アイルランド、スペイン、オランダにも進出しています。PlaidはVisaと決別したこときっかけに海外で過ごす時間を増やすことを決めました。国際部門の責任者であるKeith Groseは同社はユーラシア大陸で積極的に規模を拡大すると語り、スタッフは2倍になると述べています。
GroseはヨーロッパでのPlaidの需要の高さを強調してこの決定を説明しました。確かにその通りですが、ヨーロッパに注力するという選択は攻めの姿勢というよりもむしろ守りの姿勢と言えるかもしれません。
最近のポッドキャストではPlaidのエンジニアリング責任者であるJean-Denis Grezeが米国と欧州のエコシステムの違いについて説明しています。
ヨーロッパには「オープンバンキング」というものがあります。これは、さまざまな銀行や様々なプレーヤーによって、様々な程度で実装されていると思いますが、事実上、あなたのコアバンクが「A」で、その銀行が持っているデータの一部に依存するアプリを使いたい場合、ある銀行から別の銀行へデータを共有するためのメカニズムがあります。アメリカではそれが存在しません。
アメリカでPlaidが生まれたのは偶然ではありません。アメリカでは銀行の複雑なインフラを自由市場に任せていますが、ヨーロッパでは規制当局に負担をかけています。PSD2と呼ばれる「決済サービス指令」のようなルールにより金融情報の収集プロセスが簡素化されました。例えて言えば、欧州のオープンバンキングでは、6つのドアではなく1つか2つのドアを開けるだけで必要な情報にアクセスできます。また何種類もの言語を話す必要もなく、英語で対応できます。
統合の手間を省くことで、オープンバンキングがPlaidのような認証システムを提供することはかなり簡単になりましたが、それでも時間と資本の投資はもっと少なくて済みます。その結果、Tink, Truelayer, Budなど、それなりに資金力のある競合他社が登場してきました。
この視点から見ると、Plaidのヨーロッパ進出はあまり筋が通っていません。米国よりも課題が浅く、競争が激しい市場になぜ投資するのでしょうか。
守りの手としてはそれなりの効果があります。競合他社が米国市場に挑戦するにはキャッチアップに充てられる十分な資金がある場合に限られます。フィンテックのエコシステムが確立され、比較的裕福な消費者層を持つ欧州では、多くのフィンテックは比較的安定を求める経営をするでしょう。
さらに、この大陸にはPlaidが競合他社から守りたいと考えている大規模な金融機関がいくつかあります。すでにBNP ParibusはTinkと提携し、同社のアプリに「マルチバンク機能」を導入することを決定しています。今積極的に動くことで、提携関係を維持し、成長を抑制することができるのです。
ヨーロッパ以外の地域に進出する際は、フィンテックのエコシステムが確立されている地域や、金融機関のロングテール化が進んでいる地域、規制が緩い地域や自由市場主義を好む地域などに焦点を当てたいと彼らは考えるでしょう。
後者の問題はアジアへの進出を複雑にします。中国は米国のテクノロジーを敵視しています。インドは国家的な決済システムを導入しています。香港では、「Commercial Data Exchange」と呼ばれるオープンバンキングを採用しています。シンガポールの金融管理局はすでに同様の技術的な取り組みをいくつか行っています。現地の規制に関するノウハウの重要性を考えると、買収によるアジアへの参入は最も理にかなっていると言えるでしょう。現時点ではBrankasとBrickが最も有望なターゲットと思われます。
ラテンアメリカ、特にブラジルは最も魅力的な機会となるかもしれません。2018年現在、この国は世界で14番目に銀行が多く、(メキシコと違って)規制の勢いはほとんどなく、消費者の意欲もあります。最近の調査では、ブラジルの消費者の73%がオンラインだけで銀行を利用することを望んでいると報告されています。興味をそそられるのは、昨年10月にVisaが、ブラジル、メキシコ、コロンビア、ペルー、エクアドル、ボリビアに拠点を持つ競合企業Yellowpepperを買収すると発表したことです。これに続いてPlaidが買収される日もそう遠くないかもしれません。
4. エンドラン
2021年1月28日、Plaidは新製品を発表しました。口座振替の切り替えです。まだベータ版ではありますが、この新サービス(Deposit Switch)はフィンテックがユーザーに新しい機能を提供することを可能にするもので、収入を受け取る口座を素早く変更することができます。従来、このような切り替えを行うためには消費者は書類を提出しなければなりませんでした。そのためサービスが中断されたり、次の給料がいつ、どこに届くのかわからなくなったりすることがよくあります。
これは比較的小さな機能追加ですがユーザーにとっては喜ばしいことでしょう。それ以上にこれはPlaidが終焉に向かっていることを示している可能性があります。
司法省11月の訴状でVisaによるPlaidの買収がいかに消費者に悪影響を与えるかを説明しました。訴状では、Plaidがその独自の地位を利用して、アクワイアラーのの独占を脅かす可能性があることに焦点を当て、Visaの幹部の発言を援用しました。今では有名な発言ですが、あるVisaの副社長はPlaidを「火山」のような島で「先端が水面に出ているだけ」と表現しました。これは、Plaidの潜在能力が現在の能力をはるかに上回っていることを意味しています。その幹部はPlaidには「Visaを脅かす巨大な機会」があると結論づけました。
訴状によると、Plaidはその幅広い流通網を活用して従来のオンラインデビット決済に対抗する「Pay by Bank」機能を提供できるとしています。このシステムは海外では珍しくないもので、消費者と加盟店の両方がVisaのようなデビットネットワークをスキップすることができます。
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ダイレクトな送金により取引コストは大幅に減少し、司法省の試算では95%もの削減になるとのことです。この削減分は加盟店に直接還元され、加盟店から顧客に還元されます。このような直接的な関係を築くために銀行との豊富なコネクションを持つPlaidほど適した企業はないでしょう。仮にこの作戦が成功すれば、Plaidの当初の買収金額53億ドルはまるで誤差のような金額になるでしょう。
Visaの反論にはいくつかの正しい指摘がありましたが、その中でも特に、Plaidはこれまで決済処理を行っていないことが挙げられます。また、Plaidは消費者や加盟店と明らかな関係を持っていません。しかし同じVisaの幹部が「IBMとMicrosoftの関係にはなりたくない」と警告したのには理由があります。先ほどの話に戻りますが、Plaidほど統合が重要で確固たる地位を築いている企業はありません。
このフレームワークにより同社の進むべき道が明確になりました。今後の主な課題は、Visaが認識したギャップに対応し、消費者に近づくこと、「Pay by Bank」ソリューションの課題を解決すること、そして統合を深め、ロングテールを成長させることで将来性を確保することです。
Deposit Switchの発表にあたり、Perretは次のように述べています。
金融サービスのデジタル化は消費者にとって大きな前進ですが、私たちはまだ初期段階にいます。消費者にもっと多くの選択肢を提供することに焦点を当てた最初の製品(いくつかあります!)を発表できることを非常に嬉しく思います。
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私はこういった進出は3つのカテゴリーに分けられると思います。
給与計算
リスクスコアリングと不正検知
バンキング・アズ・ア・サービス(BaaS)
最新(2021年1月末時点)のリリースでは給与計算を取り込むための一歩を踏み出しました。Deposit Switchのページを見ると、PlaidはADP, Gusto, Justworksなどのプロバイダーに加え、DoorDashやPostmatesなどのギグ・エコノミー・プラットフォームとも連携しています。
この方向に進むことでPlaidはFinch, Pinwheel, Argyleなどの新興企業と直接競合することになります。またPlaidはフルスタックの給与計算APIに不可欠な機能である、支払いの処理とアイデンティティ情報の収集のための基盤を確立することになります。さらにPlaidはDeposit Switchのような取り組みを通じて、消費者との関係を再構築することができます。プラットフォームは情報へのアクセスを許可するだけでなく、ユーザーの問題を積極的に解決しています。
また、情報へのアクセスを許可しているだけでなく、ユーザーの問題を積極的に解決できます。現在、Plaidは高度なリスクスコアリングを行うために必要なアクセスをすべて備えています。雇用データを追加することで、信用調査機関や他のサードパーティのソースとの統合を進め、能力を強化することができます。
このような動きは両刃の剣のようなものです。Plaidは消費者ローンの提供をかなり容易にしている一方で、同社は顧客の領域を侵すことになるのです。現在UpstartやBlendのようなローンプロバイダーはPlaidを自社のローン決定のためのデータソースとして使用していますが、サービスプロバイダーによって自社のUSPの一部を侵されることを望むでしょうか?
「Plaid Credit」はBloomのようなビジネスと競合し、「Pay by Bank」ソリューションのリスクを大幅に軽減し、ユーザーの支払い能力をより適切に評価できるようになります。
最後に、Plaidは、BaaS(Banking-as-a-Service)の分野で先頭を走り続ける必要があります。PlaidのコアAPIは業界を根本的に変えましたが、追加の銀行サービスを提供する新しいビジネスが現れています。その中には、Unit, Moov, Treasury Prime, Modern Treasuryなどの新興企業も含まれています。
これらのBaaSプラットフォームは銀行を設立するというよりも、銀行へのアクセスプロセスを簡素化することに重点を置いています。例えばUnitは、企業が既存の製品に口座開設、カード発行、決済、融資などの金融機能を組み込むことを支援しています。(興味をそそられる話です。余談ですがPlaidの創業者が所属するVCであるOperator PartnersがUnitに出資しています。)
現状ではこれらのビジネスは補完関係にあります。新しい金融サービスはほぼ確実にPlaidと統合され、顧客は自分のアカウントを他の金融アプリに接続できるようになります(Venmoを考えてみてください)。それはPlaidにとってもメリットがありますが、それ以上に大きな意義があります。より広範なBaaSを構築することでPlaidは新しいフィンテックにより深くサービスを提供することができます。データだけをAPIに頼るのではなく、新しい製品は必要な金融サービスをPlaidに頼ることになります。これにより大きな収益化の道が開かれ、Plaidの市場での地位が強化されます。反乱分子が金融商品を作りやすくすることで、Plaidはロングテールの成長を加速させます。11,000の金融機関にサービスを提供するのではなく、マーケットプレイス、ソーシャルネットワーク、SaaSアプリ、パブリッシャーなどに製品を組み込むことで、50,000の金融機関にサービスを提供することができるかもしれません。いざ「Pay by Bank」となったときに、これ以上の範囲と深い関係を持つ企業はないでしょう。
Perretが「テクノロジー企業を作ることのほとんどはロングテールをどのようにスケールさせるかを考えることだ」とツイートしたのは、おそらくこのことを意味しているのでしょう。
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5. 連携の脅威
このPlaidの躍進によって何かが証明されたとすれば、それはおそらく米国の金融システムの機能不全でしょう。しかし、Plaidに存在する脅威があるとすればそれは「協調」です。
その気になれば金融機関は自発的にオープンバンキングのプロトコルを採用することができます。そうすればPlaidの価値は下がり、米国の環境は欧州と似てきます。そうなれば反乱を起こすことも難しくなりますし、競争も激しくなるでしょう。
しかしこのようなプロトコルを作るだけでいいのでしょうか。何千もの金融機関が準備も人員も整っていないような余分な仕事を自発的に引き受けるモチベーションを得られるでしょうか。
より信頼できる脅威は既存の企業が力を合わせて挑戦者に対抗することかもしれません。2017年、銀行のコンソーシアムが「Zelle」というピアツーピアの決済サービスを発表しました。ZelleはVenmoと同様にオンラインで、特に携帯電話を使って支払いを送信・要求することができます。Zelleは後発で劣悪な製品を提供したにもかかわらず瞬く間にシェアを拡大し、支払い総額でVenmoやCash appを追い抜きました。2020年前半には、Zelleの処理量はVenmoの約2倍に達しています。
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現在は3倍近くの差がついている。
Zelle現象はPlaidを根本から覆すかもしれません。同社を井の中の蛙とは思いたくありませんが、Zelleの存在はより深くに潜む大きな怪獣を想像させます
。Venmoが銀行のJVによってシェアを急激に減らされることがPlaidにも起きないとは断言できません。
2019年、私はそのような動きは理にかなっているとの考えを示しました。
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Zelleの親会社であるEarly Warning Systems(EWS)がこの分野に目をつけているかどうかはまだわかりません。EWSはP2P決済以外にもアカウント検証やリスクスコアリングのサービスを提供しており、より幅広い機能を示唆しています。BofA, BB&T, Capital one, JP Morgan Chase, PNCバンク、U.S. Bank, Wells Fargoなど30以上の大手銀行が参加していますが、EWSはその中でも最も重要な役割を果たしています。
EWSはPlaidの最も有力な競争相手です。しかし、このコンソーシアムがPerretがここまで到達した意志と技術を過小評価するのなら愚かだと言わざるを得ません。
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私はPlaidのVISAとの取引が決裂した後、彼らは「現在の市場で最低200億ドル、さらに1000億ドルのビジネスになる可能性がある」と考えていると述べました。会社が150億ドルのプライベート・ファイナンスを容認し、投資家がVisaの4倍の価格でセカンダリー・セールを行っていることを考えると、他の人たちもそう思っているようです。
しかし、Plaidが成功するかどうかはこのエンドランができるかどうかにかかっているわけではありません。決済に手を付けなくても、PerretはVisaよりも桁違いに大きな成果を得ることができるでしょう。そこには大きな青写真があります。Plaidは地理的に拡大することで銀行とのネットワークを増やし、金融システムの中枢に入り込むことができます。また、商品を追加することで消費者との直接的なコミュニケーションが可能になり、「Pay by Bank」のリスクを回避し、新しい金融商品が普及してもPlaidは必要不可欠な存在であり続けることができます。ダイナミックで不安定な市場においてPlaidは静かな不変の存在です。