メタルと世代交代

最近考えたことを書いてみます。読み返さずに前から書いていって公開するつもりなので、まとまった文章になるかはわかりません。


メタルの歴史を考えるとき、1990年代というのは大きなポイントである。ジャンルのクロスオーバーが進んでニューメタルやオルタナティヴメタルが生まれ、個性的なバンドが数多く登場した。KoЯn、Slipknot、System Of A Down… など、パッと思いつくだけでもかなりクセ強なバンドが多い。一方で、デスメタルにメロディを取り入れる動きが起こり、メロディックデスメタルというジャンルが形成されたのもこの時代である。At the Gates、In Flames、Dark Tranquilityなどの登場は、現在まで続くメロデスシーンの基礎となった。

ここで生まれる疑問が、”なぜ1990年代というタイミングでこれほど多くの個性的なバンドが出てきたのか” ということである。

これは単なる偶然と片付けることもできる疑問であるし、仮に理由があったとしても、単純な因果関係で説明できるようなものではないだろう。複数の要因が複雑に絡み合い、偶然も作用しながら、90年代のシーンが作られたのだと思う。

そのうえで、90年代のシーンの活発さの要因の一つとして自分が考えているのが、"1990年代は1970年代から20年経過したタイミングである" ということだ。

これを具体的に考えてみると、たとえばKoЯnのJonathan Davisが生まれたのは1971年である。同年にリリースされたアルバムとしては、Black Sabbathの3rdアルバム "Master of Reality"などがある。

つまり、90年代に登場したバンドのメンバー達は、ヘヴィメタルの黎明をリアルタイムで体感していないのだ。彼らにとってのヘヴィメタルの位置づけは、ヒップホップや電子音楽などの他ジャンルと対等であり、特別な存在ではなかったのだろう。

それゆえに、ヘヴィメタルの定石を守ることへのこだわりが薄く、他ジャンルとメタルを混ぜることへの抵抗もなかったことが、90年代のシーン活性化の一つの要因ではないだろうか。

つまり、90年代に個性的なバンドが数多く生まれた理由は、一言で言ってしまえば "世代交代のタイミングだったから" ということだ。

世代交代というのは、新たな歴史を作るうえで非常に強力だ。今のところ老化を止めることはできないので、どんな文化でも時間が経てば、文化の担い手が年老いて、衰退していく。そして、新たな価値観を持った若者が文化を担い、歴史が進んでいく。これは、年長者側から見れば、自分たちが築いたものが蔑ろにされているように感じることもあるだろう。"〇〇はメタルじゃない" と主張するおじさんがいるのは、まさにこれが原因だ。

すなわち、若者とおじさんで意見が食い違うのは、文化の担い手が更新されて新たな歴史が刻まれている証であり、全く健全なことなのだ。

最近、USのメロデスがアツいと個人的に感じている。これも、世代交代の力が大きく働いているのではないだろうか。Cannibal CorpseやDeicideといったUSデスメタルのレジェンドたちの登場から30年以上経ち、USメロデスの若手バンドたちは、USデスメタルの黎明を体感していないはずだ。そのため、メロディの導入やハードコアカルチャーとの接近に抵抗がなく、結果として新たなシーンが興っているのではないか。

もちろん、自分はUSのシーンを肌で体感したわけではないので単なる推論でしかないのだが、世代交代というのが大きなパワーを持った事象であることは間違いないと思う。若者とおじさんの意見が食い違ってこそ、活発なシーンであると言えるのだ。

だから、「〇〇はメタルじゃない」と主張するおじさんに出会った時こそ、心の中で叫ぼう。

”ヘヴィメタル万歳!!” と。

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