漆をつかったアパレル!?が熱い!というお話
月に数記事ずつ更新しているこのブログも、案外多くの方に読んでいただけているようで、嬉しい限りです!
最近ヌーを知ってくださった方からも「ブログ記事読んで興味を持ちました!」と連絡をくださる方もいて励みになります。
先日から取材いただいている、朝日放送某番組の放送作家さんもこのブログを読んでくださったことがきっかけの一つとなり、密着取材に繋がりました。
Instagramでは書ききれない内容が深堀できるところもいいみたいですね。やっぱり、日々コツコツ書きためておくのも大切だと実感させられます。
というわけで今回は、みなさん興味を持ってくださる「漆のアパレル」について。
漆のアパレル
漆塗りの職人が、アパレルをつくっているというのもなかなか珍しいと思うので面白い記事になるのかと。
小さい頃から着るものへの素材などこだわりが強かったと母親から聞いてます。
デザイナーさんとのやりとりなど、なかなか表に発信しないところも今回少し記事にできたらと思います。
最近でいうと、4月に梅田阪急本店でのPOP UPにて、前日告知でゲリラ的にリリースした「夏バテぬーすけ群れTeeee」
ゲリラにも関わらず、多くの方から反響をいただき、POP UP用に準備していた分は即日完売。
わざわざ足を運んでくださった方のためにと、確保していた在庫も急遽放出しました。汗
残すところオンライン分にとっておいた、少量のみです。。笑
この漆アパレルプロジェクトに関しては、追加生産はせず、販売するのは初めに作った分だけ。
しかも、大量に作ることをせず、少ロットであえて量産できないやり方で、こだわったモノづくりをしようと決めてやってます。
なので、作った分が無くなってしまったら販売は終了です。
いつもアパレルでタッグを組む京都にある刺繍屋の浅田さんと生地を企画。同時並行でデザイナーさんと刷りのデザインを練って、制作完了まで8ヶ月程かかりました。収益を優先するなら、売り切れたら追加追加でつくる方がいいのですが、それはやらないと決めてます。
「大量生産、大量消費、使い捨てのサイクル」
大量に作ることでコストを下げてつくって、シーズンが終わる頃に残った分はセールをして。それでも残ったら処分。アパレルが''環境汚染産業"と言われるのも納得です。
コストを下げるために生産国も、日本ではなく海外に移っていきます。
使い手も、飽きたら捨てて新しいモノを買う。
「使い捨て」の文化。最近の日本の良くない流れです。
「昔は着物でも、お母さんが着てたものを娘が仕立て直して着るやろ。それをまた孫に受け継ぐのが当たり前やったんよ。」
僕も昔、母の大好きな大島紬(おおしまつむぎ)で、小さい頃羽織を作ってもらって着ていました。
これは漆の産業も同じ。大量に安い器が作られ、海外からも輸入が増えた頃、手間と時間がかかる漆器はどんどん売れなくなります。
すると安価な「漆器まがい」のものも流通を始めます。1000円の漆器には1000円の理由がある。プラスチックや混ぜ物、あらゆる搾取などでコストを下げてモノをつくります。
「永く大切に使ってもらえる、いいモノをつくりたい。」
ヌーを始めたときからの一貫した想いです。
始まりは漆でシルクスクリーンをしてみたところから
「漆のアパレル」というだけあって、なんとプリントに漆を使用しています。特別な技術で漆を発泡して生地に定着させており、普通のプリントとは強度や艶も違います。
「ウルシルクスクリーン」と呼ぶこの活動は、"印伝"(いんでん)という、鹿革に漆を施す技術にも似ています。印伝は16世紀ごろ、西暦1500年代に日本で発展した技術。
はじめに着想を得たのは、テレビで特集されていた「和太鼓」でした。
実は和太鼓に描かれている"三つ巴の紋"は漆で描かれています。最初に観てからというもの、漆で紋を描く職人さんの映像が頭から離れませんでした。
完成した太鼓を、鳴らせば鳴らすほど時間をかけて擦り減っていく紋様。使い手がモノの歴史を作っていくようで、魅力的で美しく感じました。
その頃からなんとなく「キャンプギアやウェアに漆でこんな紋書けないかな?」と妄想にふけっていたところ、友人から「シルクスクリーンのワークショップがあるから遊びに来ない?」というお誘いが。
ピンと閃いてから実行までの時間が早いところだけは、持ち前のスキル。笑
当日、ダメ元でTシャツやカーミットチェアなどに漆で刷ってみたところ、まさかまさかの大成功!!
その日のinstagramのストーリーズには、"ワークショップ開催希望'"のDMがたくさん寄せられました。
夏バテぬーすけ群れTeeee
昨年の「群れTeeee」リリースから一年。このときも追加生産はしなかったので、復活の問い合わせを多くいただいていました。
今回は冬に作ったJAPAN PRIDE Parkerに続いて、ONO5S(オノゴス)さんに描き下ろしていただき、"夏バテしたぬーすけ"を前面に刷ったデザインに。
かわいいというテイストと、でも大人にも好かれるカッコいいテイストを合わせもつオノゴス調のタッチが、アメリカンなスタイルにもバッチリ合います。
カラーも迷った挙句、昨年とは違うスミと白の二色展開に。
サイズも前回はXLとLのみでしたが、「Mも作って欲しい」という要望も多くいただいていたので、今回はXL,L,Mの3タイプ。
90'sに流行ったカレッジなスタイルでアメリカンテイストに仕上げました。
この頃の古着を見るとよくわかりますが、現代のプリント位置より、ほんのすこーーしだけ低いのが特徴です。
あまり低すぎても野暮ったくなるので、ここはONO5Sさんと入念な打ち合わせ。
通常より5mm〜7mm程度低い位置にプリントすることで、90'sの時代の古着テイストに。
仕上がりは思った通り、ドンピシャ!
もう一つのこだわりは、関わってくださった工場やデザイナーさんのネームを裏側に縫い付けています。
これは無理を聞いてくれて、丁寧に仕上げてくださっている職人達への感謝と敬意、尊敬の意味を込めて。
アパレルといえど、工藝畑で育った考え方で細部まで手を抜かずに、職人さんの想いも使い手に届ける配慮は忘れずに仕上げました。
デザイナーさんとのやりとり
イラストデザインをデザイナーさんと一緒に進めるときは、まずこちらの頭の中にあるものを鮮明に伝えるところから。
このとき、すでに参考になる絵やモノ、資料を見せて「こんな感じのテイストで...この部分をこうして...」と伝えれば早いのですが、
これをやってしまうとどうしてもデザイナーさんが見せたモノの印象に強く引っ張られてしまうため、クリエイティブの広がりに制限がかかってしまう気がします。
なので、僕はひたすら言葉と擬音とジェスチャーを交えて伝えていきます。笑 創造力をお互いにぶつけ合うイメージ。
あとは熱意を伝えるため、文章や電話ではなく、直接会ってミーティングするか、会えない場合はオンラインで。
このやりとりは多い時だと数回に渡ってくりかえしながら、使用する用途や世界観、テイストなどを丁寧に擦り合わせます。
脳内の擦り合わせがある程度のところまできたら、一気にデザインに取りかかってもらいます。
イベントなどに合わせてプロダクトを進めることも多いので期日もなかなかシビアな中、デザイナーさんを信じ切って進めるスタイルではありますが、このやり方で百発百中!
他のクリエイターがどう進めているかはわかりませんが、いつもこんな感じで進めてます。
もちろん、お世話になっているデザイナーさんの技術の高さの賜物でしかありませんが。笑
キャンプギアへのウルシルクスクリーンイベント
今のところ年に1〜2回開催している「キャンプギアへのウルシルクスクリーン」
もっと機会を増やして欲しいとお声をいただきますが、どうしても物販のイベントでの同時進行は難しいので、GNU CAMPやSHOPさんでのワークショップイベントなどの際に開催しています。
あらゆるギアに刷ってきたので、ある程度漆が乗る素材と乗らない素材がわかってきました。
ここからガシガシ使用して、漆があの和太鼓のように擦れて経年変化していくのを楽しみつつ、ギアを育てていってください!
漆とアパレルの可能性
まだまだ未知数なこの挑戦。
でも分かりきっていることをチャレンジするより、誰もやったことのないことをやってみる方が、やってる方もみてる方もワクワクしますよね。
もちろんここからまだまだチャレンジは発展していくわけですが、みなさんももっともっと漆の魅力を体感してもらえたらと思います!
漆と繋がる人をふやし、感動を分かち合う世界へ。
最後まで読んでいただきありがとうございました!
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GNU urushi craft / 中川喜裕
GNU urushi craftは、「漆文化を広めよう」を合言葉に、様々な”漆の新たな可能性”を探り、5代目塗師中川喜裕が”ヌーの群れ”と共に、漆文化を広める挑戦を続けるプロジェクトであり、コミュニティーであり、アウトドアブランド。
漆と繋がる人をふやし、感動を分かち合う世界へ。