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臨床経験シリーズ:あんな言葉は出ない

どうもどうも。齊前です。1週間に1度の更新頻度というルールを破るとこでした。。。という訳で、2つの病院と5つの診療科を渡り歩き、(一応、全部希望です。適応障害ではありません。)ひろくあさー----い臨床経験を有する僕の経験をシェアする形のシリーズ第1弾(思い付き)。



タイトルからは予測できない内容ですが、臨床経験を振り返った時に真っ先に思い出すのはこの事例です。6年経った今でも鮮明に覚えています。当時は、救命救急センターICUに所属していました。いわゆる3次救急ですね。当時は、Nurse Practitioner(以下、NP)になる気満々でした。実は、僕が所属していた病院は当時、(今も?)日本一NPを有する病院で3年前の時点で9名所属していました。その影響もあり、NPを志していたのです。

余談ですが、本年度から阪大でもNPを育成するコースができ、聴講を考えています。今後のためにポケットエコー使えるようになっておきたい。。。


さて、事例に戻りましょう。

救命救急センターではよくCPA(心肺停止状態)の人が運ばれてきます。その際は、CPR(心肺蘇生法)を行い、ROSC(心拍再開)を目指します。CPR中に挿管するので、しばらく(状態による)はコミュニケーションが行えません。ROSCできると、CTなど原因検索をしていくって感じです。(CPAに至るエピソードと心電図次第では、即PCPS導入。)


はい。だめですね、事例に戻りましょう。


その人は、CPAで運ばれてきました。一時的にはROSCできたのですが、再度CPAとなる状態。この状態を繰り返すと、蘇生困難のため、通常は家族へ連絡し再度CPAとなった場合をどうするかを確認します。僕の経験上、まず家族は混乱状態となる。当然ですよね。大抵、CPRを希望されます。しかし、原疾患等により治療の見込みがない場合は、本人を傷つけたくないという思いから最終的にはDNARを選択します。こういう時の我々の仕事は、代理意思決定ができる時間稼ぎくらいしかできません。


家族へ連絡し夫氏に来院してもらいました。医師の説明に対して、夫はCPRを希望。CPAとCPRそしてROSCを3回行った夜勤帯を経て、日勤の僕が受け持ちました。申し送り時、夫が認知症疑いで代理意思決定者として怪しいこと。しかし、他に家族がいない状況であると。その日の日勤は、玉突き事故の重傷者を受け入れることとなっており朝からバタバタ。迅速かつ正確な意思決定の連続が求められる現場でどうすべきか悩みました。まず、夫と話し、現状をどの程度把握されているか評価。んー。中々難しい様子。というか「帰ってもよいか」と言われる始末。そうこうしている間にCPAへ。最少人数でCPRをします。結果的に日勤帯でも2回しました。


るい痩に近い状態の方への胸骨圧迫時、肋骨が折れる時があります。2回目の2サイクル目の胸骨圧迫時に折れた感覚が手に伝わりました。



無意識的に夫の方とみると、椅子に座った状態で寝ていました。



言語化が難しい感情になりつつもCPRを継続。なんとか、ROSCしましたが、いまにもCPAとなりそうな状況。この状態が延々と続きかねない。どうしたらいいのだろうか。そう悩んでいる時に、当時の副師長さんが夫の元へ行き、そっと、「もうお母さんに、無理させないでいいんじゃないかな?」と。


そしたら、それまで頑なにCPRを希望されていた夫が、「うん。わかった。」と。その10分後に亡くなられました。


これは、僕が受け持ってから40分程度の話。この副師長の声掛けがベストだったかはわかりません。でも、未だに戦場ともいえる救命救急センターでのあの澄んだ空気感は忘れられないですね。


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