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【司法試験•予備試験】伸び悩みから脱出するために
自分は、非法学部から約5年かけて予備試験と司法試験に合格した。
合格したと言っても、ネットでよく見かけるような、「どう見ても元々優秀そうな人がスムーズに受かった」場合とは全く異なり、自分の場合は、元多浪、非法学部の凡人が、ノウハウや人脈も何もないところからのスタートで、途中では予備論文試験でオールFに近い成績を取ったりと、あれこれ試行錯誤の中で、先の見えない暗闇の中を長い間彷徨い歩くことも沢山あった。
今回は、そんな暗い森の中を彷徨い歩いていた当時の私の経験から、そこから脱出するための方法論を以下記載していく。もし、伸び悩みに苦しむ受験生の皆様の参考に僅かでもなれば幸いである。
1 自己流を今すぐ捨てて、人を頼ろう
まず最初に、君の周りには、今の自分の勉強法を相談したり、自分の起案を見てくれるような信頼できる人はいるだろうか。法律の勉強法や起案の書き方、採点について、自己流でやってはいないだろうか。もし、勉強法等を相談できる人が周りにおらず、自己流でやってしまっているのであれば、それは危険信号である。今すぐ誰か信頼できる人を見つけて、相談したほうがいい。
実際、迷走していた当時の私は、そのような自分の勉強法等を相談できる人はおらず、勉強法は適当に受験参考書やネットなどで見つけたものを参考に自己流でやっていた。あの頃の私は、人に勉強法を色々命令されるのは面倒くさい、自分のやり方があると思いこみ、人を頼ることを避けていた。
結果、自分の思考方法や起案の内容は、無意識のうちに、どんどん独りよがりな、合格からは程遠いものになっていった。
当然、それではいけない。
なぜなら、予備試験や司法試験勝ち抜く上での鉄則は、合格者の多数派が行なっている勉強法や起案の方法に、自分自身のやり方をトレースさせていくということだからだ。
勿論、君が天才なら話は違う。自分の考える自分に合った勉強を、そのまま続けていけばいい。しかし、そうでない自覚が少しでもあるのならば、今すぐに、自分が目指すべきゴールを解像度高く示してくれる人ーーすなわち、自分より先に予備試験・司法試験に合格している人や、合格しそうな優秀な受験生を頼るべきである。そして、彼らと一緒に戦うのである。
この予備試験・司法試験の受験は、想像以上に団体戦である。
優秀な人に自分の勉強法や起案の内容などを定期的にチェックしてもらいながら、その質を高めていくことができなければ、日常的にそれができている上位層の受験生に負ける。
実際、予備試験・司法試験の合格者たちと交友関係を持つようになって改めて分かることだが、今の君より遥かに優秀な受験生ですら、受験当時は合格者の先輩に教えてもらったり、優秀な仲間と協力しあったりして勉強してきたのである。であれば尚更、今どん底にいる君は、周囲の人に頼らねばならない。信頼できる優秀なパートナーと集団戦を敢行できる状態にあること、これは合格のための大前提の一つである。
2 この試験の本質は、どこまでも情報戦である
上で人を頼れと言うのは、予備試験だろうが、司法試験だろうが、結局、試験の本質は、「情報戦」である、と言うことと関係している。
そもそも、今の君の「一人でできる」と言う考え方の根底には、「必要な勉強法や基本書はネットで調べられる」とか「大手の予備校に行けばそこで全部教えてくれるはずだ」と言う前提に基づいていると思われる。
確かに、それは一理あり、今の時代、ネットで勉強法とか起案の型を発信してくれている合格者の人はたくさんいるし、「予備校だけで受かった」と言っている人もたくさんいる。
しかしながら、現実は、そんな甘くない。
実際、今の君は、ネットで合格のための勉強法をあれこれ探して試したり、予備校の教材を何周もしたりしているわけだが、結果としては伸び悩んでいる訳だ。
その理由は簡単で、結局、ネットでいくら良い勉強法を見つけても、いくら予備校の教材を理解しても、合否の差がつくところはそこではないからだ。
どういうことか?以下、説明しよう。
3 「みんなが知っている情報」では受からない
まず、①予備試験・司法試験の評価方式は、一般的に相対評価と言われている。それはつまり、たとえ自分が試験場で「非常によく書けた!」と思った内容であっても、他の受験生も同じくらいできていたら点は伸びないし、逆に、自分が「全然書けなかった…」と思った内容であっても、他の受験生の出来が皆それ以下であれば、大きく点が伸びる、と言うことだ。
そして、②予備試験の場合、受かるのは全受験生の約5パーセントで、残りの約95%は落ちることになる。
この①と②を組み合わせると何を意味することになるか?
それはつまり、「受験生の95%は出来ていないが、残りの5%はきちんと出来ている事項」ーーいわば全受験生の5%というごく少数のみが出来ている事項を君が試験場できちんと出来ているかどうかで、合否が決定する、と言うことだ。
つまり、ネットの情報は、みんなが見られるから、ネットで伝えられるレベルの情報「だけ」をいくら集めても、基本的に差がつかない。
大手の予備校の教材だってそうだ。その教材の記載から、受講生の「多数派が」理解することになるような情報は、その予備校が大手予備校であることを鑑みると、おそらく少なく見積もっても全受験生の少なくとも5%以上は理解している情報になるだろうから、それをどれだけ忠実に吸収したところで、それ「だけ」では合格できないはずである。
だから、「予備校だけで受かった」と言っている人(この「予備校だけ」の定義が曖昧だが、一旦それは置いておこう。)がいるとして、その人は間違いなく、受講生の多数派が理解している情報以上の、全受験生の5%しか知らないはずの情報を、何らかの形で獲得したと言うことになる。
4 受験「各論」ではなく、受験「総論」に関する情報を獲得せよ
では、その「全受験生の上位5%だけができている事項」に関する情報とは何なんだと言う話になるが、実際に予備試験に最終合格した自分がそれを説明するとすれば、いわば受験の「総論」に関する情報ーつまり、「そもそもどんな人を考査委員は欲しがっているのか?」「どんな考え方を有している人が求められているのか?」と言うことに関する情報がそれに該当すると思われる。
言い換えるならば、問題検討の際の「考査委員が求める思考様式」に関する情報であり、この情報の解像度が上位5%に達している人が合格する。
実際、あくまで私の主観的経験ベースであるものの、予備試験や司法試験の合格者と司法試験や予備試験に関する話をしてみると、使用した教材については人それぞれズレがあるものの、問題検討の際の思考様式については、大概みんな同じような思考様式をしている。知識の量については合格者間で多少差があることはあっても、彼らの間で問題検討に際しての一般的な考え方自体が大きくズレてしていることは非常に少ない。
すなわち、「起案の型をどうするか」「どんな基本書・予備校の教材を使うか」とか言ったような話は、結局、上記のような、「考査委員の求める思考様式」のもとで活用されるべき、「各論」的な情報に過ぎないというわけだ(もちろんそれはそれで重要な情報ではあるが。)。
しばしば判例や学説の知識を沢山覚えているのに、何年も受からない人がいたりするのは、結局この「総論」部分の情報を体得できていないからであると思われる。
5 「法律」の「知識」の「記憶」ではなく、「法曹」の「考え方」の「体得」をせよ
では、その受験「総論」の部分の情報をどうやって体得していくのかと言う話になる。
この点については、結論として、「法律」の「知識」の「記憶」ではなく、「法曹」の「考え方」の「体得」をしていく必要がある、と言うことになる。
以下、具体例を挙げて説明する。
例えば、迷走していた当時の私は、予備試験の過去問とかを解こうとするとき、問題文を読んで、「えっと、これは〇〇の論点だから、問題提起した後に規範定立としてその論証を書かなきゃ…そして、その論証に対応する事実を拾って当てはめて…」みたいな感じでやっていた。
当時の私に自覚はなかったが、これは、すぐ論証に飛びつく、条文摘示もしない、事情も全然拾えてない…といった、考査委員の求める人材からは程遠い思考様式となっている。論文成績でほぼオールFを取るのも然りである。
では今度は、今の私のやり方を見せる。
今の私は、例えば同じ問題文を読んだときに、以下のように解ていく。
「まず問題文上の事情を整理すると、この事情はこっちに有利で、この事情はむこうに有利…となっていって、それらを総合すると、明らかにこっちを勝たせなきゃダメだな。適用条文は法⚫︎条で、その趣旨は…まあよく覚えていないが、条文の内容的に⚫︎だろう。適用のための要件としては要件A、要件B、要件Cの3つ。しかしそのうちの要件Cについては、文言を形式適用しようとすると、向こうに有利に作用しまって、かえって条文の趣旨に反する不合理な結果になりそうだ(そして多分、だからこそここが勝負だな…)。ちょっと条文の趣旨から解釈して、こちらが勝つように少し調整してみるか…orそれでも流石に無理筋なら一般条項使うか…よし、整理した全ての事情を漏れなく、評価した上で各解釈後の要件に当てはめて、これで要件充足はOK、無事同条は適用されるな。次はそれを前提とした相手方による別条文の適用の可能性だが…」みたいな感じになる。
同じ問題文を読んでいるにも関わらず、全然違うことをやっていると言うのがわかるだろうか?
両者の違いを簡単に説明するとすれば、前者はとにかく論証知識を吐き出そうとしている(条文や事案の当てはめはそのおまけである)のに対して、後者は条文と事案の理解を何よりも大切にしている。
すなわち、「法曹」の「考え方」の「体得」をしていくとは、後者のような考え方を身につけていくことをいうのである。
なぜそのような考え方を身につけなければならないか?
それは、実務に出たら、名前も聞いたこともない、参照すべき基本書も一冊もないような法律に一から当たっていかなくてはならない場合も多々あるからである。
そのような場合には、条文解釈や事案検討に関する基本的な思考様式ができていないと、はっきりいって話にならない。そのような思考方式を身につけておくことは、法曹実務家としてまともに生きていく上でマストなのだ。
実際、私は、後者の思考法を体得してからというもの、模試でも本番でも、それまでよく取っていたF評価のような壊滅的な点数を取ることが激減した。
さらに、合格者がどれくらいの内容を書いてくるかといった「相場観」も、一定の解像度でわかるようになった。
また、判例についても、それまでのように規範ばかりに目がいくのではなく、類似の判例間の事案のズレが結論に及ぼした影響などに目が行くようになり、判例への理解がどんどん深まった(また、法律の勉強がどんどん面白くなった。)。
6 独学での体得は難しい
この辺の「法曹」の「考え方」というのは、おそらく予備試験とか司法試験に合格ために最も重要な箇所だと思われるが、独学で習得するのは非常に難しいと思われる。
なぜなら、「条文と事案を何よりも大切にする」と言ったところで、本当に自分の起案がそう言うふうに書けているか、上記を体得できていない段階で自分で判断するのは、まあ無理だからである。
基本的には、予備試験の合格者か、今後合格する思われる優秀な受験仲間と自主ゼミを組んだりして定期的に添削を受けて、少しずつ体得していくしかない。上記で、「まず自己流をやめて人を頼れ」と書かせて頂いたのは、そういう理由からでもある。実際、私もそうやって獲得した。
「合否を分ける情報を体得している人」…つまり、予備試験の合格者か、これから合格者になる人を、ありとあらゆる手段を用いて探さなくてはならない。そして一刻も早く、彼らの思考や勉強法を、徹底的にトレースする必要があるのだ。
7 終わりに
さて、他にもいくらでも言いたいことはあるが、絶望の中で先が見えずに悩み苦しんでいたあの頃の私に、とりあえず今の私から言いたいことは一旦そんなところである。
当時の私と同じように、今の勉強法に伸び悩みを感じている受験生がどれくらいいるのか想像もつかないが、もし、そのような方に今何かアドバイスをさせて頂くということであれば、とにかく、何よりもまず、定期的に自分の勉強法を相談したり、起案を見てもらったりできるような信頼できる人を一刻も早く見つけてほしいということだ。私も結局、その後そういう人と運よく出会えたおかげで絶望の状態から抜け出せたと思っている。その方には、今も心からの感謝しかない。
もし、あなたの周りにそう言う人がいないと言うことであれば、ぜひ、ご遠慮なく、gnothiseauton.1789@gmail.comまでご連絡頂きたい。
現在、無料Zoom個別学習相談を実施している。
予備試験・司法試験の勉強法や起案の方法などで悩んでいること、行き詰まっていることなど、無料でご相談に乗らせて頂く。
私もかつて予備論文オールFに近い成績をとり、先が見えず悩んでいた経験があるので、当時の私と同じように悩んでいる、苦しんでいると言う方であれば、その頃の私の経験をお話しさせて頂くだけでも、大きなプラスになると思う。