見出し画像

第6回 「マイノリティ×クリエイティビティ」で社会を良くする

<ケアクリ会議 VOl.4 ゲストトーク・ダイジェスト>
澤田智洋さん
一般社団法人世界ゆるスポーツ協会 代表

澤田智洋さんは大手広告代理店のコピーライター・プロデューサーとして、広告やマーケティングに携わる一方、マイノリティを起点 に社会を良くするイノベーションを起こす事業を多数手がけ、その多様さと柔軟な創造性が注目されています。ケアクリ会議 VOl.4では、ご自身の活動と意思を紹介しながら、クリエイティブワークが社会を良く変える可能性を述べ、スピード感をもって前進することを呼びかけました。

*以下は取材参加した記者の要約です。実際の講話内容と一致してはおりません。

弱者大国日本だからこそ起こせるイノベーションがある

障害のある友人たちが直面する課題を知って気づいたのは、そうした課題にクリエイティブの力を注ぎ、サポートすることは、クリエイティブによるインパクトを出すチャンスになるうえ、社会的にも価値があるということでした。
彼らと話すと「社会を良くするアイデア」のヒントがもらえ、企画の起点を一般的には弱者とされている人に置くことで、すべての人のためになる、という価値です。

超高齢社会を迎えた日本は、人口の約1/3を高齢者と障害のある方が占める弱者大国ですが、だからこそクリエイティブを発揮し、社会を大きく変えるイノベーションを起こすことができると確信しています。
健康格差の問題も、健康弱者を起点に、クリエイティブとの連携でイノベーションを起こし、社会全体をより健康にするという視点で向き合いたいです。

クリエイティビティとは「?(意外性)+!(納得性)」

私は、クリエイティビティとは、はじめ「なにこれ?︎」と意外性を感じるけれど、大義を聞けば「なるほど!」と納得するという、相反する感想を共に抱かせて、人の心に受け入れられるものと定義しています。

ケアの分野で、介護予防や健康づくりの提案など「なるほど!」というものはたくさんあります。これに「?(意外性)」を加えると、より主体的に健康になろうとする人が増えるのではないでしょうか。一方、「?(意外性)」に偏ってしまうと、アートの領域になってしまい、人によっては受け入れづらくなってしまうことがあります。

医療・介護・福祉などいのちに関わるイノベーションは、シリアスに取り扱うだけでは根本的な課題解決になりにくい。健康寿命の延伸や介護予防、介護スタッフ不足、人の心や社会のバリアフリーなど、私は自分が向き合うテーマが重ければ重いほどユーモアのエッジが効いたクリエイティビティに挑んでいます。

苦手分野だからこそ見出せたスポーツの価値と可能性

健康づくりのために運動習慣が大切だということは多くの人に認知されているところですが、私自身もそれを知りつつ、運動が苦手で、やらなければならないと思うことは負担でした。

国の統計で、週に1回、1時間以上の運動している人が42%もいると知って、少し凹むと同時に、58%の人は自分と同じ、運動に対して臆している人たちかもしれないと気づいたのです。見方を変えたら、自分も含めスポーツマイノリティだと思っていたところが、むしろ“弱者”が多勢だったのです。

そこで、これなら苦手な自分もやりたいと思うようなスポーツ、老いも若きも、障害の有無もかかわらず一緒にできる“老若男女健障スポーツ”を生み出し、広めていこうということで、アスリート、医療介護、教育関係者、テクノロジストなどと共に2016年4月、世界ゆるスポーツ協会を立ち上げました。

たとえばラジオ体操は健康づくりに大変有効だけれど、同じ動きができないと取り残されて少し寂しい。そんな気持ちを誰も感じない“ゆるスポーツ”をめざし、この3年間で、3000案のうち300案を試し、淘汰して50種目、趣意にかなうプレイフルなスポーツが生まれ、広がっています。

どんなスポーツか知るだけで、思わず気持ちが能動的になるようなクリエイティブをめざし、名前やゲームデザインは「?+!」を意識して精査しました。

また、人は多面的であるため、画一的になりがちなスポーツの再定義を試みています。スポーツをする動機は「苦手でも運動したい」「友達をつくりたい」「ストレスを解消したい」などさまざまですから、「スポーツ=笑」「スポーツ=障害のある人が輝く機会」「スポーツ=薬」など、いろいろな定義ができ、それらに応じた競技を生み出すと、苦手意識や誤解の解消、心のバリアフリーを実現できます。

「スポーツ=薬」とは、医療者と共に“スポーツはフィジカル、メンタル、ソーシャルに効く”としたこと。「スポーツを処方する」ことも視野に、高齢の方には能動的・結果的にリハビリになり、同時にスタッフも一緒に楽しみ、ストレスの発散やモチベーション改善につながる競技を考えました。嚥下や発語のリハビリになる「とんとんボイス相撲」(2018年7月発売予定)や、上半身や腕の運動になる「こたつホッケー」「うち投げ花火」などを開発しています。

このようなイノベーションを進めるうえで念頭にあるのは「善は超急げ!」ということ。2020年クライシス、2025年クライシスも危惧されます。みなでスピード感をもち、人生100年時代の後半を楽しく暮らすためのインフラを整えていきましょう!

ケアクリ会議 VOl.4では昼食後、最初のゲストスピーカーであった澤田智洋さんは、午後の睡魔も近づけないマシンガントークを放ちました。

善は超急げ! すべての人が暮らしやすい社会へ、マイナーチェンジを繰り返して近づいていく草の根的な活動を否定せず、しかし自分は近未来がそうなるようにメジャーチェンジをめざすプレイヤーでいたい。

言葉ではなく、言葉の根底にある洞察と思考、パッションが弾丸でした。
(まとめ・文 フリー編集者・ライター 下平貴子)

【ケアクリ会議Vol.4 レポート 連載予定】

第1回 ヘルスケアからプレイフルケアへ
第2回 この先へ、プレイフルに進もう
第3回 ぐっとくるアピールで健康格差解消へ!
第4回 赤ふん坊やの町から全国に届ける「健康のまちづくり」
第5回 ケアの専門職が街中でコーヒー屋台をやる、そのワケ
第6回 「マイノリティ×クリエイティビティ」で社会を良くする
第7回 生活者による、生活者のための地域づくりサポート
第8回 暮らしを愉快に、人生を豊かにするケアを広げたい!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?