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いくつもの山を越え辿り着く神々しい町、奥出雲町に来て~地域活性化起業人活動報告 #11~

ぐるなびは、食文化振興や観光振興などによる地域活性化に貢献すべく、2021年より総務省による「企業人材派遣制度」を活用し、当社社員を“地域活性化起業人”として全国各地に派遣。地方自治体との連携のもと、ぐるなびの持つ事業インフラやノウハウを活かした地域独自の魅力・価値の向上に取り組んでいます。
今回は、島根県奥出雲町にて業務に従事する山脇聡一郎より、活動報告をいたします。

まず簡単に、地域活性化起業人とは

地方公共団体が三大都市圏に所在する企業等の社員を一定期間受け入れ、地域の魅力や価値向上に繋げることを目的とした制度です。

奥出雲の美しい風景

この制度を利用し、2022年10月より島根県奥出雲町という人口10,000人の町で月の半分を活動しています。
株式会社ぐるなびに入社したのが2012年、ぐるなび生活も早いもので10年目に差し掛かったところで良き転機が訪れました。

奥出雲町へ派遣が決まるまで

ぐるなびに入社後、私はEC(通信販売)グループに所属し、ぐるなびが運営するお取り寄せサイトぐるすぐりに新規加盟店を誘致する営業を担当していました。また、自社サイトだけでなく、掲載商品を百貨店の催事に出店するため、企画を立てたり、店舗と百貨店の橋渡しを行ったりしました。さらに、大口の取引先となる法人向けに贈答品などの食品を販売する業務も担当していました。

ところが、2019年にコロナウイルス感染症が蔓延。生活環境がガラッと変わる中でリモートワークが導入され、さらに自治体に直接派遣され業務に従事する「地域活性化起業人」制度を活用した新たな働き方が選択肢に加わりました。自分がこれまで培ってきた通信販売などでの経験を生かしてみたいと思い、ご縁のあった奥出雲町との2拠点生活が始まりました。

いざ、神話の町「奥出雲」へ

広島から奥出雲へ続く山道、電波のないこの道をひたすら走ります。

居住地である神戸でレンタカーを借り、奥出雲町までは片道5時間かかりますが、今ではもうナビを見なくても行けるようになりました。

はじめて奥出雲を訪れた際、この山道を抜けた先にある看板に書いてあった「ようこそ神話の町 奥出雲」という言葉を見たとき、町のキャッチコピーとして神話を謳えるということに、とても感銘を受けたことを覚えています。奥出雲は特に、古事記日本書紀に登場する神話の舞台として知られており、最も有名な神話は、ヤマタノオロチ退治の話です。

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ヤマタノオロチは八つの頭と八つの尾を持つ巨大な蛇で、毎年一人の少女を生贄として要求していました。スサノオノミコト(須佐之男命)は、このヤマタノオロチを退治し、少女を救うために計画を立てます。スサノオノミコトは酒を使ってヤマタノオロチを酔わせ、眠っている間にその頭を切り落としました。
スサノオノミコトはヤマタノオロチを退治した後、その生贄にされるはずだった、出雲地方の美しい姫として知られていたクシナダヒメ(櫛名田比売)と結婚。この結婚により、スサノオノミコトは出雲の地に留まり、数々の神事を行うようになりました。
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小さな頃に母親からヤマタノオロチ退治の神話を聞かされたことがあったため、「この誰もが知っている神話奥出雲町のお土産開発に活かせないか、更に『仁多米』や『奥出雲舞茸』などを使い、特産品のブランディングに紐付けることができないか」というアイデアが浮かび、「神話」と「特産品」を掛け合わせた奥出雲ならではのお土産開発という、新たな軸が自然と固まりました。

冬には雪深くなり町全体が冬眠状態に。
春になると広島、岡山、鳥取などからの観光客が温泉と蕎麦を目的に訪れます。
山に咲く桜は本当に綺麗。隠れたお花見スポットが色んな場所に点在します。
奥出雲で綺麗なのは桜だけではありません。スサノオノミコトが降り立った山として有名な、船通山の山頂に咲くカタクリの花は一見の価値あり。この花を見るために多くの登山者が集まります。
スサノオノミコトとヤマタノオロチが戦いを繰り広げたとされる船通山。山頂にはオロチを退治した際にオロチの尻尾から剣を作ったとされる伝説を祀った天叢雲剣出剣の記念碑が立っています。
船通山の山頂からの眺め。奥出雲山脈を見下ろせ、感動の一言。登山が好きになりました。

偶然の出会いから始まった商品開発

ある日、何気なくInstagramを見ていると奥出雲町公式アカウントから発信されたひとつの投稿が目にとまりました。

それは奥出雲町にある横田高校の生徒が描いた作品でした。鮮やかなコントラストの色彩で全体に深みがあり、思わず絵に描かれた女性の表情に惹き込まれます。とても高校生が描いたとは思えない完成度の高さに圧倒されました。

この作品を見た瞬間、頭の中に百貨店催事でとても洗練されたデザインのクッキー缶が大人気になっていた記憶が蘇りました。もし、これだけの表現力がある生徒さんに奥出雲の神話を表現するクッキー缶をデザインしてもらえたら……。多くの人を魅了する奥出雲ならではの素晴らしいお土産品が作れるのではないかと閃いたのです。

奥出雲クッキー缶プロジェクト始動!

早速、奥出雲町役場で公式Instagramを担当する安部さんを訪ね、イラストを描いた高校生に会いたいと相談しました。

すぐに横田高校にアポイントを取っていただき、面談の機会が得られました。そこで出会ったのは、あの印象的な絵を描いたとは思えないほど可愛らしい、当時高校三年生の山田さんでした。

山田さんに作品のテーマについて尋ねると、「生まれ変わり」を表現されたそうで、女性の特徴的な腕の動きや少し悲しげに見える表情がオリジナリティあふれる作品の世界観を作りだしています。

奥出雲の「神話」を表現するクッキー缶のデザインコンセプトを伝え、ぜひ、山田さんにイラストを制作してもらいたいとオファーをしたところ、後日、彼女からこのプロジェクトを引き受けたいと連絡をいただくことができました。こうして、いよいよ、奥出雲の新しいお土産開発企画がスタートラインに立ったのです。

昨年お会いした時は、まだ高校三年生だった山田さん。すでに人々の心を惹きつける魅力的な絵を描いていました。

クッキー缶のデザインテーマを「縁結び」と定め、主人公には田園の神様と称される稲田姫(イナダヒメ)を設定しました。クッキーには奥出雲名産の「仁多米」の米粉を使用し、そのデザインと内容に一貫性を持たせました。

デザインを担当頂いたのは島根県立横田高等学校美術部(奥出雲町)の山田奈那子さん。
大学に進学されて少し大人っぽくなっていられました。
稲田姫(イナダヒメ)の初稿案 依頼してからすぐに描いてくれました。

お土産が買われる様々なシーンを考え、何パターンものデザインを描いていただきました。様々なスサノオノミコト、イナダヒメの絵を描いていただき、女性が購入するクッキー缶だからとアニメ要素に偏ったデザインもいくつも提案いただきました。

購入者を想定しながら、様々なデザインを制作していただきました。

いよいよデザインが完成、商品化へ

山田さんには、クッキー缶を購入するターゲットの方を想定し、さまざまなデザインを考えていただきましたが、最終的に山田さんらしいスサノオノミコトイナダヒメを描いて欲しいと依頼させて頂き、完成したデザインがこちらです。

念願のクッキー缶デザインが決定!!

山田さんが完成させたのが、出雲神話に出てくるスサノオノミコトがイナダヒメにプロポーズするシーン。2人の表情からとても特別な瞬間だということが伝わってきて、この絵を見た瞬間、最初に山田さんの絵を見た時と同じように、山田さんにしか描けない唯一無二の素敵な絵だと感じました。このクッキー缶デザインが、近い将来、有名デザイナーになる山田さんのデビュー作として、皆さんの記憶に残る作品になるかもしれません。

「奥出雲縁結びクッキー缶」

山田さんのデザインが施されたクッキー缶の商品名は「奥出雲縁結びクッキー缶」と命名し、販売金額は税込1495円にしました。
支払いの際に、1500円を出すと、お釣りで水引のついた5円(ご縁)が返ってくるように価格も工夫しました。その5円(ご縁)を持って、イナダヒメの祀られる稲田神社にお参りに行っていただき、皆さんの大切な人との縁が、上手く繋がっていきますようにという想いを込めました。

缶のデザインと同様に、クッキーにもこだわりが詰まっています。原材料として、島根県奥出雲町のブランド米『仁多米 』の米粉を使用しています。仁多米の甘みや香ばしさを引き立てるため、北海道産の無塩バターを使用し、低温でじっくり焼き上げ、風味豊かに仕上げました。甘くてほろほろとした口溶けが特徴で、味わいのアクセントにフランス産「ゲランドの塩」を効かせています。

この商品は奥出雲町内では、
・玉峰山荘 お土産コーナー
・姫の蕎麦 ゆかり庵(稲田神社内のお蕎麦屋さん)

奥出雲町外では、
・松江駅前シャミネ 中浦本舗 お土産売り場
・玉造温泉街 八百万マーケット

で販売しています。

そして、ぐるなびのお取り寄せサイト、「ぐるすぐり」でも販売を開始予定です!

「奥出雲縁結びクッキー缶」を見かけた方は是非手に取ってみてください。そして、ご縁をもって神話の里、奥出雲町へ来てみてください。みなさんに素敵なご縁がありますように。