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羊の木 | 感情のピクセルが溢れ出す (ネタバレなし感想)
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錦戸亮。どうも、こんにちは。McFlyです。
本日は2018年2月3日に劇場公開された、吉田大八監督最新作「羊の木」鑑賞後レビューです。邦画の良さ詰まりし。
あっさり感想
・作品テーマと抜群の役者選定!
・邦画界の「煽り屋作品」圧迫感が恐怖に繋がる邦画サスペンス!
・岡崎体育の「感情のピクセル」が脳内リフレイン。
ガッツリ批評
笑いには「緊張と緩和」要するに緩急が重要だという話をよく聞くが、恐怖を掻き立てるにも重要な要素である。それらを巧みに操ることで、観客の心を翻弄する。時に執拗なまでに「鋭い危うさ」をほのめかしながら、その一方で「穏やかな優しさ」を寄り添わせる事で本来安らげるものでさえ恐ろしさが滲み出す。
相反する二つの要素が交錯することで、生まれるのは“疑い”という感情だ。
「あの人すぐ人を殴りそうだよね。」
「いつもポケットに手を入れていて何か握っているんじゃ…」
「あの人はいつか人を殺すよ。関わらない方がいい。」
"仮釈放された元殺人犯たち" と "彼らを受け入れる穏やかな町" 。
この緩急に板挟みとなる彼らと向き合う役場職員・月末(錦戸亮)のキャラクターも秀逸だ。恋心さえ満足に伝えられない不器用な男が、仕事では元殺人犯たちと向き合うのである。そんな彼が持つ "二面性" を錦戸亮が繊細に演じ分ける。
「はじめから悪い人間なんていないんです。」
「壁を作って彼らを孤立させてしまっているのは私たちなんです。」
「過去は過去。受け入れる気持ちを持ちましょうよ。同じ人間なんですから。」
ざわざわざわ。。。
本物の“悪”はそんな「綻び」を巧妙に突いてくる。まるで金魚鉢に少しずつ墨汁を垂らすかのように、平和で美しい環境に不安をじわりじわりとにじませ、やがてその全体を黒く覆い尽くすのである。
地方の小さな集落を舞台にサスペンスの種を蒔き、それを静かに、しかし確実に発芽させる。吉田大八監督の手腕は見事で、穏やかに物語を運ぶようで、しかし決してこちらを安心させてはくれない。この演出こそが、邦画の持つ作家性の真髄。
2時間にわたり幾重にも問いを投げかける本作。
「もし自分がこの町の住人だったら?」
「彼らを受け入れられるのか?」
ふと投げかけられる難題に自分ならどう返答するだろうか。
ここで岡崎体育の『感情のピクセル』が脳内再生。
どうぶつさんたちの輪の中にワニさんを仲間に入れてあげられるかどうか——まさに、それがこの映画の本質なのかもしれない。
真面目に問いかける一方で、導入の設定部分が学生映画じみていたり、見てはいけない架空の奇祭「のろろ祭り」はニッチな田舎祭りフェチ層の心をくすぐったりと、むむむ、この映画、常に感じる二面性が非常に魅力である。
こんな人にオススメ
・田舎の噂話伝染速度の速さを身をもって体感されている方
・とにかく面白い邦画を見たい
・岡崎体育ファン
作品詳細
映画「羊の木」公式ホームページ
Filmarks映画「羊の木」リンク
2018年2月3日公開 / 製作国:日本 / 上映時間:126分 / ジャンル:サスペンス