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『Papers, Please』プレイ感想
入国審査官やってきました。
遊んだの少し前だけど、書きかけの記事が残ってたので書き上げてみた。なお、エンドレスモード遊んでません。実績はぜんぶ取った。ていうか実績取得率が異様に低いんだけど、これどういうこと?みんなゲーム積みすぎ?
なんで買った?
有名なインディーゲームなので興味があったから買った。同作者の『Return of the Obra Dinn』が好きなので、これも期待していた。あと、フリーゲームとかで Papers, Please リスペクト作品も何個か遊んでいたので、本家も遊んでみたかった。
初手文句
まずいきなり文句を言いたい。入管省、オレが審査したあとに正誤判定できるんならてめぇらが入国審査やれや!!!……でもこれやらないとゲームが面白くならないので仕方ない。一日終了後にフィードバックが来るなら納得感はあるが、学習に役立てることが難しくなるし、パスポート返したときの緊張感がなくなる。でも通した直後に「おい、いま間違えたぞ」って言われるの腹立ってしゃあない。てめーがやれ。もう一つささやかな不満として、見た目で性別を判断するのが地味に納得感欠ける部分があるところ。分かんねえよ。そもそも見た目で人の性別を判断するのよくない……そういう感覚を生みだそうとしてる気がする。キャラクターデザインが上手いのよ。
最初に文句を言ったので、あとは絶賛します。
遊び
単純に言ってしまえば、間違い探しをして、結果が〇か×か答えるだけ。それだけでこんなに面白いのスゴい。あらゆる手触りがめちゃよいのが好き。書類をガサゴソ漁っててもイラつかない。スタンプは綺麗に押したくなる。情報を比較するときの演出がとても気持ちいい。実績解除コインもらうときのサウンド好き。
二択問題
最終的な出力が二択になっていると、テキトーに決めたら運良く進められちゃう問題がある。これに対して、序盤は拘束手当によるボーナスを作って予防している。手当が欲しければ、ちゃんと不備を突いて拘束する必要があるわけね。この時点ではあくまで努力目標のようなもので、やったら美味しいけど、無理してやらなくていい。終盤は入国拒否する場合に、事由印を押す必要が発生するので、精査することが義務になる。綺麗に整理されてるなぁ。
富める者は現状を維持し、貧しき者はすぐに死ぬ
給料が基本的に薄給かつ維持費が高めなので、のんびりプレイしてたらすぐに死ぬ。お金が足りない、あるいはどうにか節約したい場合、食費と暖房費を削減することができる。が、これをした場合、家族が病気になって薬の費用が必要になり、最終的に苦しくなる。したがって、そもそも食費と暖房費は削減しなくて済むぐらい稼いでいるのがいいわけだ。つまり、この給料と維持費の仕組みは「ちょっと苦しい」が「もっと苦しい」になる性質を持っているシステムといえる。これが面白いなぁと思った。おもに三つの影響を語れるかなと思っている。
一つ目は単純に「たくさん稼がなきゃ!」と普段の仕事を素早くプレイするようになる。のんびり書類を見比べてたら正答率が高まるだろうけど、急がないといけないので焦りから情報を見落としたりする。事実上の時間制限がつくことで、簡単な書類作業が歯応えのある情報正誤判断ゲームになる。
二つ目は、上達の実感がしやすくなる。まず、下手だとあっさりゲームオーバーになる。慣れてくるとギリギリ生き残れる?それでもやっぱり苦しい。とことん下に落とされるゲームなので、上にいるときの「上手くやってるぜ」感が際立つ。ゲームプレイにメリハリが付く。
三つ目は、閉塞感の演出として機能している。余裕がなくて常に苦しい感じ。家族が風邪で苦しんでいるという表現、エグいわ。賄賂に手を出したくなるし、拘束手当欲しさにバンバン拘束していくようになる。
細かい分岐仕込みすぎ
細かい分岐が多い。それに合わせるためか、ゲームの再開箇所を細かく遡れる。このセーブデータと分岐処理、作るの死ぬほどめんどくさそ~~~!!本当に細かいのよ。選択によって展開が大きく変わるとかじゃなくて、細かい。ミスの数で上官のセリフがちょっと変わるとか、壁にモノ掛けてるかどうかとか、殺人犯を通したかどうかとか、家族の人数とか、本当に細かいけど、確実にテキストやらが変化する分岐が多い。
もちろん大きめの分岐もある。テロリストルートはどれも入国審査とはほとんど関係ない遊びになってて、異質さが浮き彫りになる感じがいいよね。正直者なので、M.O.I捜査官にテロリストからもらった紙をすぐ見せて捕まりました。あと、アホなので毒薬ベタベタさわって死にました。審査官やめろ。
周回しても飽きにくい構成
細かい分岐がたくさんあるので、周回プレイを意識した構成になっている。通す人間の条件が変化するから周回しても飽きにくくなっている。うーん、さすが。隙がない。
一部の条件は単に難しくなるわけではなく、むしろ簡単になる箇所もあるのが面白い。指定の国出身者は入国禁止にするヤツとかね。終盤で書類がひとまとめになるヤツも、スッキリして遊びやすくなる。条件が細かく変わると、完全な流れ作業になりにくい。アルタン地区のみIDカードを回収する→全地区で回収とか。
部屋の改造
スペースキーで調査モードに移行します。TABキーでスタンプ出せます。弱い!金払ってできるようになることがそれか?!この辺りは本作で唯一いまいちなところ。ただ、それも見越しているのか最終アップグレードで指摘箇所を直接調査できるようになるのは嬉しい。
舞台設定
もうとにかく世界観作りが上手すぎる。無味乾燥な情報正誤判断ゲームになっていない。いきなり爆弾が投げ込まれるところで、「なんだこれ!!?」ってなるよね。グッと生きた世界になっている。新聞とか良い味出してるよなぁ。次の展開を予告してくるので、「次はなにが起きるんだろう?」とプレイを続ける引力になる。
キャラクター
シンプルなように見えるバストショットの絵とセリフだけでこんだけキャラクターが立ってるのすげえわ。Jorji のおっさん嫌いな人いる?憎めないよなぁ。お手製パスポート可愛すぎるだろ。でも薬の密輸はやっぱダメ。犯罪です。いまさらだけど、日本語訳がホント素晴らしい。それ、イイことだ。しっかり翻訳、イイことだ。
いけ好かない上官と不気味なM.O.I捜査官の対比も好き。車で来てせかせか歩いてくる上官に対して、M.O.I捜査官はなんで先に着いて待っているのか。怖いよ。どうやって来てるんだよ。M.O.I捜査官が不気味すぎて、上官にかわいげを感じる。知り合いを通さなかったら、後日「知り合いに無能扱いされたぞてめえ」ってバチギレてくるの笑う。
ルール破壊
本作でとくにシビれた部分が、ゲームルールを無視するように働きかけてくるところ。ひどい国から逃げてきた夫婦がいて、奥さんだけに書類の不備があった。規則を無視して通すか?と突きつけてくる。うひー!これはすげえよ。マリオでたとえるなら、「わざと穴に落ちてくれないか?」って言われてるようなもんだよ。〇か×か?という遊びの前提をくつがえすような問いかけ。姪を引き取るか?とか、テロに加担するか?とか、こういうのがめちゃくちゃ出てくる。ルールだけがゲームじゃねえんだ……
家族大事に
最初は「あ、オレって所帯持ちだったんだ」てな感じで認識していくんだけど、徐々に存在感を高めてくるのが本当にあざとくてやらしくて上手い!急に息子の誕生日プレゼントが必要になるんだよな。それでクレヨンを買うと絵を描いて送ってくれてな。家族写真が送られてきたり。それを貼ってると、通る人から「家族は大事にしなよ」って言われる。マジで露骨なんだけど、徐々に引きずりこんでくる。序盤に審査した夫婦とか思い出したりしてな。クソッ術中に嵌まっちまう!
最後の審査
さんざん自分が審査してきて、最後は自分が審査される。なんやその構造~!完璧すぎ~~!!しかも家族も連れて行かないといけない。ここまでで「家族大事に」の心を植え付けられてるもんなあ!偽造パスポートの手配は、仕事の過程でなぜか仲良くなってきていた Jorji のおっさんがやってくれる。偽造元となるパスポートは無許可で押収していく。ルールを破ってもいいことも、これまでにさんざん唆されてきている。ぜんぶつながってくる。このゲームシステムでちゃんとクライマックスと言える盛り上がりを作ってくるのスゴすぎ。ゲーム作り上手すぎるって……
終わり
いや~さすが名作インディーゲーム。ちゃんとむちゃくちゃ面白い。ルーカスポープ大先生……今作も当然のようにデザイン,アート,コード,サウンドぜんぶ一人でやってる。超人!
アルストツカに栄光あれ!