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Day1:ぼうけんのしょ

ことの発端は2020年6月6日20時頃。

僕は嫉妬した。

自分よりも確実にそして深く我が子を夢中にさせている Nintendo Switch に。いや、正しくは Nintendo Switch の 「あつまれどうぶつの森」(以下、あつ森)にだ。

その日はジャコウのひとり息子であるタイガの誕生日で、ちょうど家族だけの小さな誕生日パーティが終わったばかり。

イチゴのショートケーキを食べて大満足だったのか、タイガはソファーにもたれかかりながら Nintendo Switch を抱きかかえるような姿勢で爆睡していたのだ。ゲームはまだ起動したままだった。

遊びながら寝てしまうとは可愛いヤツめと思いながら、一体どんなゲームで遊んでいるのだろうと画面を覗き込むと「あつ森」だった。どうやら釣りの途中で睡魔に負けてしまったらしい。そして、僕は即座に悟る。

これは完全に寝落ちだ。

寝落ちは、どれだけ自分がそのゲームに夢中になったかをマウントするために発信されることもしばしばあるが、本来は純粋に夢中になっているからこそ起きる生理現象だ。自分もPC版のMMOで何度も経験した(マウント)。

だからこそわかる、いま彼は「あつ森」に夢中になのだ。自分の離島を取り囲む大自然に心ときめかせているのだ。

齢6歳になったばかりの子どもを寝落ちさせるという邪神的所業をたやすく行ってみせる「あつ森」は、なんとも名状しがたき冒涜的な箱庭のようなものである。

だが僕は「あつ森」のことが全くわからなかった。

得体の知れない相手が、自分よりもうまく息子を熱狂の渦に巻き込んでいる。自分以外の誰かが愛する我が子の心を掴み、彼の目をキラキラと輝かせている。

そう思うととても悔しかった。ひとりの親として負けた気持ちになった。そして羨ましかった。心の底から沸々と負の感情が湧き上がってくる。

なぜ、このゲームを買ってしまったのか?

なぜ、Nintendo Switch を買ってしまったのか?

なぜ、タイガと「あつ森」は出会ってしまったのか?

いくつもの問と答えが生まれたがなんの慰めにもならなかった。

正直、時間の無駄だった。

そうこうしているうちに少し冷静さを取り戻した僕は大人なりの向き合い方で物事を解決すべきだと考えた。

いますぐ僕がすべきことは Nintendo Switch を投げ捨てたり、転売したりとかそういったことではないし、まして「あつ森」を削除することでもない。

選ばれたのは「共存」でした。

相手を理解し、逆に仲間として迎え入れることで魅了する技を盗み、我が子をより愛するためにタッグを組むべきだと考えた。そしてどうせなら「あつ森」の時間を学びの時間にも昇華してみようと思った。

こうして僕は「あつ森」を息子と一緒に遊ぶことを決意したのである。

いずれタイガが「あつ森」を卒業したとき、僕がより一層彼を熱中させることができるように。

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