変わりゆく世界への視線
気づけば、京都という街を出てから一年がたってしまった。あの不思議な空間が現実なものだったとは未だに思われず、ふと幽玄の世界へ手繰られるような甘美な錯覚を覚えてしまう。そして、「現世と冥界を往還する資格」など持ちえないと判断した私は、1年前の今日、京都を去ったわけである。
そんな1年前には到底想像もつかない現在の世界の変貌ぶりには、ひたすら高級な振る舞いが躊躇される。何やら秘密めいたからくりで動くチャットボットが毎日のように世界を騒がしている。そして、俗衆で持て囃されてきた企業は首切りに勤しんでいるらしい。肥溜めにいつまでもしがみ付くものはさっさと退場すればよいと思う。今必要なことは、世界と静かに対峙することだろう。この卑屈なまでに不愉快な宣言は、世界への苛烈な視線と同一化していくものである。
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