デザインのつくり手に報いる事業モデル:Galapagos Supporters Book②(後編)
シリーズAで累計13億円の資金を調達したAIR Designのガラパゴス。
そこには株主や顧問、社外取締役という形でガラパゴスを支える、たくさんの支援者の存在があります。
ガラパゴス・サポーターズブックでは、そのような外部の支援者と、ガラパゴス代表・中平の対談を通して、ガラパゴスとAIR Designの魅力をお伝えしていきます。
本記事は、シリーズ第二弾・シニフィアンの小林さんとの対談記事の後編です。前編については、以下よりご笑覧ください。
ネガティブファーストな透明性と経営チームの魅力
ーー小林さんはガラパゴスの経営チーム全員にインタビューをされていましたが、印象を聞かせてもらえますか?
小林:お話しさせていただいたのは、7名ほどでしょうか。皆さんとても面白かったです。まず第一に、透明性が高いと感じました。これ答えていいのかな?という迷いが無くて、それぞれがオープンに答えている。これは僕が一番大事にしていることなんです。
シニフィアンのインタビュースタイルでは、村上と朝倉と僕がそれぞれの視点で見ていますので、どこか渋々答えているとか、ちょっと取り繕いながら答えている場合、誰かがそれを感じ取るんですよね。でもそういうのが全くなかったので、非常に信頼できると思いました。
そしてまさにこの透明性を感じさせることが、投資のデューディリジェンスの直後にありましたよね。投資が決まる契約書にサインする直前のタイミングで、事業上ネガティブな問題が起こってしまった。正直、あのタイミングだと、黙っておきたいと思いますよね。投資前の想定と異なる事象が発生していたため、「話が違うのでやはり投資しません」ということも起こり得るタイミングでしたから。
でも僕は逆にポジティブでした。問題を即座に報告してくれたので、ベースが信頼できると思ったんです。ネガティブファーストって、悪い情報を早く出すだけなので簡単に見えますが、実際にそれができている会社は多くありません。しかも契約の直前ですからね、バツが悪すぎるタイミングです。
中平:さすがに10秒くらいは悩みました(笑)。でも僕らは不確実性にチャレンジするスタートアップで、こんなことは1年に5回くらい起きるものです。投資後に判明してギクシャクするくらいなら、きちんと伝えた上で判断してもらいたいと。でも自信はありました。問題も解決策も可視化できているので安心してください、という気持ちでしたね。
小林:その誠実さにはとても共感しましたし、僕がDeNAを経営していた時に大事にしていたポリシーが、「迷ったら絶対誠実な方を取る」ことだったんです。記者会見での説明も、取締役会での議論も、全てオープンに話す。そういう誠実さで、会社がきちんと続いてきたという面があると思うのです。会社がコケるときって、資金繰りもあったりはしますが、根幹は不誠実さにある気がしていて。誠実か不誠実かは、トップに大きく左右されるので、あの一件でガラパゴスが誠実に振る舞う会社だと確信できました。
中平:他にメンバーについて感じたことはありますか?
小林:とても粒が揃っていると感じましたね、このフェーズのスタートアップには珍しいと思います。創業の3名だけではなくて、CFOやCHRO、マーケセールス、カスタマーサクセスなどのキーとなるファンクションの人材を、きちんと採用して拡張できている。かなり進んだ経営チームという印象を受けました。
中平:運が良かっただけですけどね。いつの間にか揃ってきた感じなのですが、その人をどうやったら強く巻き込めるかは、いつも考えていますね。これは経営チームに限らず、株主や顧問の皆さんに対しても同じです。
小林:その巻き込み力、中平さんは類稀なる才能を持っていらっしゃると思います。みんなが応援しよう、一緒に頑張ろうという気にさせる力がありますよね。
「面白がり力」と人材の多様性
小林:その根幹に僕が明確に感じたことがひとつあって、中平さんは「面白がり力」が高いんです。だから話している方もどんどんアイディアを出そうという気になるんですよ。「そうなんですね、へえー」っていう反応だと話はそこで終わるかもしれないんですが、「その球もっかい投げてもらえますか?」「いい球きたー」みたいな反応があるからキャッチボールが面白くなる。
さきほどの経営チームのインタビューに戻ると、これはメンバーにすごく伝播していると感じました。僕らが質問する側だったんですけど、彼らもどんどん質問してきて、キャッチボールの中でなるほど、みたいなやりとりがみんな入っていました。だから面白かったんだと思いますね。
僕はこれがイノベーティブな企業の原動力だと思っています。楽しくないと仕事は頑張れませんが、それが与えられた楽しさなのか、その人が自ら動いて面白くしていくタイプの人なのか。0から100まで面白いことなんて世の中にそんなにないわけで、実際には60くらいは苦しいけど、残りの面白い部分をきちんと探し当て、ちゃんと面白がれることが大事。ガラパゴスは、まさにその残りの部分を面白がれる会社だなと。以前僕らが「10年以上も新規事業に挑戦し続けて、よく心が折れませんでしたね」とコメントした際に、耐えてきた感覚がないとおっしゃってましたが、それも面白かったんでしょうね。
中平:なるほど、今わかった気がします。ガラパゴスのメンバーは面白がること、面白いことを探す力に長けているんですね。これは、採用面接にも表れているかもしれません。面接の後半は質問をいただく時間にしてるんですが、そこでの質問が事前に調べていることとかではなくて、会話の中で創発されたものが来ると、面白い人だなと。結果としてそういう人間が集まってきているのかもしれないですね。
小林:その軸はガラパゴスの重要なバリューだと思いますね。面白がり力って人によって感度がバラバラで、多様性がある。
僕は大学時代、美学芸術学という感性や芸術の学問を研究していたんですが、みんな面白いと思うことを勝手に研究対象に選んでいました。僕は音楽の演奏について、別の人はヒッチコックの映画について、はたまた芸術における美について研究している人もいて。みんなバラバラなんですが、他の人の「これ、面白いんです!研究したいんです!」という話を聞いているうちに、人生で一度も感じていなかった面白さに気付いていくという。
ガラパゴスもいろんな面白さがあっていいんです。プロセスを詰める人、クリエイティブにこだわる人、マネジメントを楽しむ人。何を面白がるか自由なのが良くて、一軸でしか面白がれないと、成長が止まってしまう気がします。
最近の僕のテーマなんですが、多様性はなぜ必要なのか。なんとなくは分かるんですが、その真理を理解せずに単純に女性経営者増やします、とかは良くないと思うんです。経済合理性なのか、進化論的な話なのか。多様であるからこそ分散していくので、求心力が大事なんじゃないかとか。このへんをもうちょっと噛み砕いて紐解いていきたいんですよね。
中平:とても本質的な問いだと思います。単純に属性だけ多様にしても意味がないし、逆にある時期までは同質性が駆動力になることもある。インクス出身とか高校が同じとか、それは当然結束感あるし、強みになるシーンもあるんですよね。これを保ったまま、どう多様化していくか。
小林:そういう意味でガラパゴスは、社会の公器になり得ると思っています。お仲間だけが良くなりましたではなく、デザイン業界・クリエイティブ産業を本気で良くするために、いろんな人を掬い取ってほしい。そのためにも、いろんな人が入ってきて面白いと思える土壌を大事にしてもらいたいです。
中平:DeNAってそういう印象があります。色がないというか、カラフルな印象。なんとなくですが。
小林:そうですね。だから野球もゲームもできる。節操ない広がり方かもしれないんですが、一方でいろんなことをやってる人は楽しかったんですよ。みんな面白がる力が高かった。面白がれたことで、DeNAって本当に人材のるつぼで、そういう人がハッピーに働けたんじゃないかと思います。その根元には多様性があったと思うし、ガラパゴスも絶対にガラパゴス流のやり方で面白い器をつくれると感じています。
▲経営のプロである一方でオーケストラ演奏者の顔を持ち、山にも登る小林さん。まさに文字通りの多様性を体現されています。
世の中へのインパクトを最大化するための「アジリティ」
ーー最後に、ガラパゴスにいま必要な人材について、お聞かせください。
小林:いまAIR Designが一番芯を食っている、特定のセクターのMid/SMBへの展開だけでは、世の中に与えるインパクトがまだまだ限定的だと思っています。もっと多業界のいろんな規模の会社に刺さるはずなんですが、戦い方とかプロダクトの方向性とか、整えなきゃいけない要件がとても多い。でもそこを全部取るつもりで欲張ってチャレンジしてほしいんです。
全部取れるわけないと業界関係者は思うかもしれませんが、そもそもこの産業って分散的で、誰か特定のプレイヤーがシェア90%です、みたいな世界ではないはずでして。シェアではなく、存在感のあるプレイヤー。いまDXやるならSHIFT(丹下社長は元インクスで中平の先輩)を考えるように、クリエイティブでサイエンスするならガラパゴス、と頭に浮かぶような存在です。もちろん大手のサービスがあることは前提にしつつ、ガラパゴスもウォッチした方が良いと感じるプレイヤーとして、影響範囲を広げていってほしい。武器として磨くのはプロダクトのテクノロジーなのか、ソリューション営業力なのかなど、優先順位付けには試行錯誤が待っているので、これをいかにタフかつクイックにやるか。
中平:おっしゃる通りです。だから多様な人材が必要なんですよ。小林さんから見て、要件をひとつに絞るとしたら何ですか?
小林:トライすることがふんだんにあるので、ある種の朝令暮改が必要だと思っています。ここを掘っても岩盤固いなというときに、横を掘っていこうぐらいの節操のなさというか、トライ&エラーを高速にやった方が勝つ。大戦略は維持しつつ、細かい道の進め方をいかに各自で探すことができるか。そのためには、言われたところをずっと掘るんじゃなくて、ちょっと横を掘ってみるフットワークの軽さがある人が、どんどん活躍するんじゃないかという気がしていますね。
中平:ありがとうございます!いわゆるアジリティのある人ということで、まとまりましたね。最後まで読んでくださった方、少しでもご興味あれば、お気軽にご連絡ください!
(文責:ガラパゴス髙橋・豊田)