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さぁ立ち止まることなく 気持ち見せろ相模原

Forza Forza 相模原 今こそ闘え
頂点目指し駆け上がれ その力信じて
さぁ行け俺らのGreenboys 負けを恐れるな
さぁ立ち止まることなく 気持ち見せろ相模原

このチャントは、昨日、あの試合の為にこの世に生み出されたのではないかとすら思ってしまうような、見えない何かにスタジアムが突き動かされた、凄まじい試合だった。


チーム、ファン・サポーターが誰しも予期しないタイミングでの監督解任からすぐ訪れた、絶対に負けられない戦い。

6月22日、明治安田生命J3リーグ第18節。
SC相模原に携わる全ての人々、応援する人々が複雑な気持ちを抱えた中で、強豪・松本山雅FCを迎えた一戦。

J3有数のサポーター数を誇る松本山雅、ゴール裏は埋め尽くされ、
アウェイチャント「俺達の街へと勝利を持ち帰ろう」が大合唱される中での試合。

松本山雅とは2021年から対戦を重ねている。成績は、1分5敗。未勝利、また大量失点を喫して負けるゲームも多くあった。
オフには選手の移籍もあった。
絶対に負けたくない、負けられない松本山雅戦。

前半戦は、風下でもあり、まるで心の軋む音が聞こえてくるかのような展開だった。
チャンスを作り作られの一進一退の中でも、風上の松本にやや主導権を握られる状況が続いた。サイドを攻略される局面も何度か見られた。

37分、サイドを食い破られてからの失点、
前半終了間際にもCKを叩き込まれて失点。

まるでこの一週間、もっと言ってしまえば、去年の春から今までの気持ちとリンクするような前半戦だった。
チームは精一杯やっている。良い場面もある。
けれど、処理することができない押し寄せる現実に、下を向くことすらできず、ただただ身体が固まってしまう感覚。


正直に言う。
ハーフタイムの時に、僕はこのゲーム、そしてこのシーズン、去年の春から積み上げたものを諦めかけていた。
リーグ戦3連敗待ったなしの状況。いくら丁寧に築き上げたものでも、崩れる時はあっという間なのが世の常だと思う。
今のSC相模原の状況を考えれば、この試合のあとに今後のクラブ方針まで変わりかねない、それほどの切迫感と停滞感が充満していたハーフタイムだった。

しかし、後半戦、目にしたのは情熱と熱狂のギオンス劇場、ENERGY FOOTBALLを体現するSC相模原だった。


後半開始早々、ロングスローからのこぼれをFW伊藤恵亮がゴール隅にボレーシュートを叩き込んだ。
DAZNの実況・小林さんの「EUROでもコパ・アメリカでも見られない」という表現がピッタリ当てはまる最高のゴラッソだった。

入った時に、本能的に
「あ、これ追いつける」
と感じた。
チームの諦めない姿勢が、スタジアムの熱量を上げた瞬間だった。

そこから試合が終わるまで、相模原ギオンスタジアムの光景はみるみるうちに変容していった。
ゴール裏の声量が大きくなった。それに釣られて、メインスタンドとバックスタンドの手拍子が大きくなった。

熱が高まってすぐ、伊藤のラストパスをMF牧山晃政がゴール右隅に流し込み、0-2のビハインドを一気に2-2に戻した。

熱が熱を呼ぶ。
スタンドとピッチが一体となって溶け合い、互いに高まっていく感覚。

気付けば、ゴール裏の人数が増えていた。
芝生エリアの遠くで応援していた子どもたちが、どんどん輪に加わっていく様子が見てとれた。

バックスタンドも手拍子だけではなく、チームコールを叫び、チャントを歌う人が増えていった。

"同志"は我々ファン・サポーターに「変わらないあなた達でいてください」と呼びかけていた。
この難しい状況の中、若い応援団体メンバーが試合前にバックスタンドでチャントの歌詞カードを汗を流しながら配っている姿を見た。

バス待ちの際には、団体とクラブで話し合いの場が持たれ、今回の監督解任について一定の経緯等の説明があったこと、また今日の試合でも笑顔を忘れずにいつも通り応援しようという呼び掛けがあった。
状況がどうであれ、相手がどこであれ、いつものギオンスを作ろうとする彼等の姿に心を打たれた。

熱量は下がることなく、どんどん上がっていく。スタンドの手拍子・声がどんどん大きくなった。
気付けば、対岸の松本山雅ゴール裏の応援が聞こえなくなっていた。

ゲームもスタンドの様相とシンクロするように、風上の相模原が次々にチャンスを作り出す展開となっていった。
サイドからの侵攻、非保持のハイプレス。松本山雅を恐れずにがっぷり四つに対峙するSC相模原がそこにはいた。

志高く、勇敢に、大胆に。
1年半、今まで目指して取り組み続けてきたフットボールに対する姿勢。
言われていたからやるのではない。この成長し続けるチームの土台は変わらないことは、あのプレーを見れば誰でもわかる。


ピッチに、スタンドに、我々の魂に、
"同志"が植えつけ育てたものが確かに存在し、
SC相模原を突き動かしていた。


同点のまま、しかしボルテージは間違いなく上がり続けていき迎えた終盤。
この溶け合った熱が何を生み出すか、多くの人が分かっていたと思う。

バックスタンドの観客もワンプレーワンプレーに叫び、手を叩き、歌う。
ベンチにいた選手は全員立ち上がり、常にピッチに向かって声をかけ続けていた。

後半アディショナルタイム。コーナーキックからのこぼれ球が再びFW伊藤の足元に転がってきた。

混戦となったゴール前にこの日一番のありったけの大歓声が注がれた。

1分5敗、勝てなかった松本山雅を破るために。
想いを胸に、昇格を掴むために。
この1年半の軌跡が、正しいものであったと証明するために。

全ての思いが乗った伊藤のシュートは、再びゴールネットを揺らした。


皆が立ち上がり、絶叫した。
泣きながらチームを称える叫び声があちこちから聞こえた。

知らない人が見たら、3部リーグのただの逆転ゴールかもしれない。
けれど、あの時のギオンスに巻き起こった熱狂の渦は、それがただの逆転ゴールでは無いことを物語っていたと思う。

溜まっていた不安、ネガティブな気持ちを一掃する、最高のゴール。

その後、松本の猛攻を何とか凌いだと同時に試合は終わった。
笛の音は、チームを鼓舞する歓声にかき消されて全く聞こえなかった。

最高の一体感。
ボールに想いを込めて押し込んだ、あの感覚。
思い描いたENERGY FOOTBALLが生み出す光景が、ギオンスに広がっていた。


逆転をしてから試合が終わるまでの間、Greenboysが歌われていた。

激動の一週間だった。
若いチームゆえ、心にぽっかり穴が開いたような選手もいたことだろう。僕もそうだった。
けれどこの90分を通して、チームと我々ファン・サポーターは、やることも目指すことも何も変わらないということを改めて認識した。

スタジアムでチャントの歌詞の意味を考えて涙を流したのは、初めての経験だった。

気持ちはひとつ。フットボールの旅路は続いていく。
きっと僕らは、どんな時も、ずっと、この曲を歌い続ける。

「さぁ立ち止まることなく、気持ち見せろ相模原」

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