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教員の働き方改革のために、国や地方が予算付けをしてほしい

教員の働き方改革について、ここでは、行政の役割という視点から、考えてみました。


教員の勤務実態

教育の問題を語る際に、教員の勤務過多がよく話題となります。
多くの先生方が始業時間前から、夜遅くまで働いている現実があります。
文科省の2022年度の調査では、教員の平均残業時間は小学校で月41時間、中学校では月58時間と推計されています。


教員の業務の比較(オーストラリアと日本を例に)

よく日本の学校は多くの内容を抱えすぎだと言われます。

例えば、オーストラリアの教育を紹介した書籍では、次のように書かれています。少し長くなりますが、引用します。

日本の教師は教えること以外にも様々な業務を担っている。一般に「校務分掌」と称されている。諸外国と比較した調査でも、業務量は圧倒的に多い。外国では教師に課せられていない仕事も、日本の教師は担っている。給食指導、清掃指導、家庭訪問、クラブ・部活動の指導、国や自治体が実施する調査への回答、学納金の徴収、文書の受付と保管、地域の会合への出席など、数えきれないほどだ。施設や備品の管理も教師が担う。生徒がスーパーで万引きしたら引き取りに行き、家出をしたら捜索し、夜の町のパトロールも行う。校舎の壁塗りまで行うことがある。まさに「何でも屋」だ。
オーストラリアの教師はこうした業務は行わない。清掃や家庭訪問など、活動そのものがない場合もあるが、教師の仕事は基本的に生徒に直接関わることであり、学習指導と生活指導に限定される。学習指導の中心は授業だ。授業の一環として行われる校外学習や遠足は含まれるが、校外のことは基本的に責任の範囲外だ。

(本柳とみ子『コアラの国の教育レシピ』幻冬舎,2021,p.205-p.206)

著者の本柳さんは中学校で26年間教鞭をとっていた方で、自らの経験で書かれています。
ここに出てくる日本の教師が担っている業務は、改めて見直してみると、すべて私も体験してきた内容でした。
万引き対応や夜間パトロール、壁塗りはもちろん、家出というほどではなくてもいなくなったという生徒を探しに行ったこともあります。

それらの業務すべてを、オーストラリアの先生は行わないというのです。もちろん、歴史も文化も国民性も違う国のことなのですべて日本の学校で同じようにすることはできませんが、日本の先生方の業務過多を考えると、このような海外の事例を、参考にしていくべきではないかと思うのです。


教員の業務改善に必要なこと1 人を増やす

教員の業務改善には、国や地方公共団体が、これまで以上に予算付けをすることが必要だと思います。

現在(2025年2月)、教職調整額を4%から10%に引き上げようという動きがありますが、小学校で月41時間、中学校では月58時間という平均残業時間に十分対応するものではありません。

仕事が多いのですから、予算付けをして、人を増やしてもらうのが、一番いいのではないかと思います。

一人の先生が背負う業務量が多いのです。その業務量に見合う人数を揃えていただければ、一人の先生の業務量は少なくなります。私見ですが、今の二倍の教員に増やしてもいいのではないかと思うくらいです。

もちろん、現実的に二倍とまではいかないでしょう。
これまでも、取り組まれていることではありますが、今後もさらに、少しずつでも、学校で働く人の数を増やす方向ですすめてほしいです。


教員の業務改善に必要なこと2 学校外の機関に仕事を移す

また、学校から仕事を他に分担することで、学校の業務量を減らしていくということも考えていくべきです。

部活動の地域移行がすすめられていますが、十分な予算がつけられていないのが現状だと思います。
教員にわずかな手当で部活動を見させていた延長で、わずかな予算で移行しようとして、うまく行っていない地域もあるのではないでしょうか。
部活動を指導する方には、しっかりとした対価が支払われるべきです。そうしなければ、人は集まらないのではないでしょうか。

同様に、学校が担っている一部の業務を、きちんと予算付けをして、学校外の機関に移していくと学校の業務が減らせます。

そのためには、ここでも、国や地方公共団体が予算付けをすることが重要になってくるのです。

現状 教員の働き方改革が学校に求められている

今、教員の働き方改革が、学校に対して求められているのではないでしょうか。

文部科学省は、「全国の学校における働き方改革事例集」などを発行していますが、先生方に対して、自ら、働き方改革をするよう求めているように見えてしまいます。

それぞれの学校では、教育委員会から働き方を改革するように言われた校長先生が、職員に早く帰るよう声をかけているのではないでしょうか。
校内の分掌会議等では、どうすれば業務がより効率化するかなど先生方が話し合ったりしているのではないでしょうか。
もちろん、それ自体を否定するつもりはありません。
先生方の努力には、頭が下がります。

ただ、以前、私が参加したある研究会で、自分たちの学校ではこうして働き方改革を行っているという実践報告が、ある学校の若い先生方からなされていました。
何か違和感を感じました。

先生方の業務自体はそのままで、職員の人数も十分増やさず、予算も増やさない中で、学校に対して、勤務時間の削減や校務の削減が一方的に指示されている現状、これでは、学校はたまったものではありません。

まとめ 政治への期待

ここは、学校を設置する地方自治体や文部科学省が、きちんと、責任を持って、お金を出し、学校を変えていかなくてはならないでしょう。

ぜひ、予算をつけて学校の人を増やし、予算をつけて学校の業務を他機関に委託していくような政策をお願いします。

すぐにすべてが実行できないとは思いますが、少しずつでも、そういう方向にすすめていく政治が望まれます。

現代の肥大化した国家予算の中で、どの財源をこれらの予算に当てるのかという行政の細かい点については、それほど行財政を理解しているわけではないので、言及できません。
学校という視点から考えると、これまで述べてきたような必要があるのだと、考えていただければと思います。
どの財源をどれだけ当てるかという点は、行政に関わる方々で検討いただきたいと思います。

各政党の関係者のみなさま、政治家のみなさま、行政に携わるみなさまは、
学校の人を増やし、学校外の機関に仕事を移すための予算増額を、
これまで以上にご検討くださればと思います。

私たち国民のできることは、
学校の人を増やし、学校外の機関に仕事を移すために予算増額の必要があるという世論を高め、
そのような政治を実現するために、投票など、できることに取り組んでいくことかと思います。

現在の教育において、行政の役割、政治の役割は、大きいものだと思います。

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