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何だかわからないけどダメなこと②:「鼻に逃げてはダメ」

「逃げる」という表現について、まず疑問を持たざるを得ません。なぜ「逃げる」という言葉が使われるのでしょうか?また、それが「鼻」なのか「咽頭の上部」なのか、明確に区別して考えられているのかも不明瞭です。
ここでは、該当部分を「鼻咽腔」として話を進めていきます。

女性の優れた歌手の多くは、鼻咽腔が解放されている状態で歌っています。特に高音域ではその傾向が顕著です。しかし、裏声ではなく地声で低音を出す場合、鼻咽腔が閉鎖されることがあります。

一方、男性歌手の場合は、一般的に鼻咽腔は閉鎖されています。ただし、パッサージョ(passaggio)やチェンジの音域において、鼻咽腔が解放されることも見られます。

ここで重要なのは、どちらが「正しい」かではなく、「どのような音を求めているか」を基準に判断することです。口音が理想的な場合もあれば、鼻に響く音が求められることもあります。さらに、地声か裏声かという視点も欠かせません。このような判断を行うためには、「本物の音」を学び、聞き分ける能力が重要になります。

しかしながら、「本物の音」を知っているからといって、その音をどのようにして出すかを正確に理解しているとは限りません。また、さまざまな音の出し方に精通しているからといって、必ずしもその人が本当に望むべき音を知っているわけではありません。

最終的には、学習者自身が情報を取捨選択し、必要な知識と技術を積み重ねていくことが求められます。歌い手としての審美感に成長が委ねられるのです。

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