ファミコン探偵俱楽部 笑み男 ネタバレ有り 感想 前編
自分は逆転裁判、パラノマサイト、癸生川シリーズなど、多くの事件物のアドベンチャーゲームをやってきましたが、今作は今までやった事件物で強く衝撃を受けました。個人的に、アドベンチャーゲームにハマるきっかけとなった作品、逆転検事2と同じぐらい、響く作品でした。今作の感想を書きたいがためにnoteを開設するほどに。そして、ファミコン探偵俱楽部シリーズは自身は3年前に発売されたリメイク版が初プレイです。それを踏まえて今作は消えた後継者、後ろに立つ少女を超えたと言っても良いほどにメインストーリーが刺さりました。
ディレクターの坂本さんの言う通りファミ探シリーズの一つの完成形というのは嘘偽りではありませんでした。個人的には過去作を上回るシナリオではないかと。今作は過去作と比べると大人向けの考えされられるストーリーです。
そして、ようやく2週目のプレイが終わったのでこうして記事を書くに至ったというわけです。周回プレイすることで新たな視点や発見がありますから。
この記事は初めからネタバレ全開です。自分はこう思った、感じたことをありのままに述べていくのでこれからプレイをする人は今すぐに閉じて、遊んでほしいです。それこそ、自分の手で。
ですが、その前に留意点として、今作はドラマ相棒や、鬼太郎のように人間ドラマに重点を置いているのでその2作品が好きな人はかなり楽しめます。反面、その2作品の共通点として、笑み男も同様に、一部、ホラー、グロテスク、胸糞描写が含まれていますのでプレイする際はお気をつけて下さい。
さて、ここからはネタバレ有りの感想になります。
今作の良い点、悪い点
手始めに、今作の良かった、悪かった点について述べていきたいと思います。
良い点はやはり過去作に比べると快適にシナリオが進められる点ですね。他の任天堂作品同様にここはこの話を聞くべき、調べるべきといった導きが分かりやすく、聞き込みが終わったら、もう十分かなと教えてくれるのでストレスを感じることなく、進めることが出来ます。
章末にここまで話をしっかり聞いていたかを把握するテストを多めにしたのは良いですね。シナリオを十分に理解することが出来ますし、今回のように感想を書きたくなるぐらいですから。
次に、今作で登場する個性豊かな登場人物ですね。主要キャラである鎌田警部、久瀬刑事、神原刑事、福山先輩に限らず、サブキャラクターも魅力的な人物ばかりです。個人的に好きなキャラは出番の多い生徒B&C、情報通のおばちゃん、工事現場のおっちゃんとドライバーの漫才コンビらですね。
また、これは不満点ではありませんが、これだけ多くの魅力的な人物がいるんですから、例として、推理や簡単なパズルをクリアする、調べるで不自然なもの(パラノマサイトでいうなめどり)を調べたらサブシナリオを解禁して欲しかったかなと思ったりしています。
また別作品にはなりますが、バディミッションBONDという作品があります。あの作品は本編以外のサブシナリオが充実しており、登場人物の他愛ない日常が描かれています。本作は改めて話しますがかなり凄惨で重たい話の分、息抜きシナリオをいくつか実装して欲しかったなと思いました。
後はやはり肝心のメインストーリーが良かったことですかね。これについてはまた改めて話します。
次に不満な点を簡潔に述べますと終盤のシナリオが急展開すぎたことですかね。これは多くの人が異議を唱えていますが。初見でやったときはおいおいと思いましたね。若干ネタバレにはなりますが、とある人物から有力な情報を得てすぐに提供者にお礼を言わずに主人公が「行ってみよう」と言ってある場所に向かう中終章と出たときは正直言って、若干唖然としましたね。その後怒涛の伏線回収がしっかりとされていたので許しましたが。
せめてもう一人の主人公である橘あゆみと一緒に例の場所に向かって欲しかったとは思いましたね。
後は一部不快な描写が含まれている点ですね。序盤の神原刑事の女性警察の
ナンパや福山先生の「俺は先輩、君は?」 「後輩です。」の下りですね。こういう上下関係を強調するシーンはあまり好きではないです。特に無駄話をする福山先生が言うと猶更ストレスが溜まりました。
ましてやLGBT(多様性)の考えが広まっている現代なのですからもう少し配慮して欲しかったかなと思います。それでも、過去作と比べると現代の価値観に合わせてだいぶ配慮されているのでかなりマシにはなっていますが。
次回作があればその2点を配慮してほしいですね。
今作の登場人物に対する所感
さて、ここからが本題といってもいいでしょう。主要人物である主人公、あゆみ、空木さんなど上げるときりがないので本作で出てきた人物を中心に取り上げていきます。
・鎌田警部
シリーズ恒例のぢゃが口癖のお助けキャラ。彼が空木探偵事務所に連絡をしたことで物語が始まる。彼が出てくる度に愉快なユーモアを交えつつも事件概要を主人公に教えてくれる。途中、苦しそうな表情をするシーンがあるが、自分はそのシーンを見たときは犯人に大ケガを喰らったのかと冷や汗をかきました。結果、ぎっぐり腰(魔女の一撃)だったことに心配して損したわと思いましたよ。本当に。その後、消えた後継者で出てきた熊田先生と同じ台詞である「てっきりなんじゃ?○○は不死身ぢゃ!」と言ったときはクスッと笑いましたね。
・神原刑事
最初はあまり良い印象を抱かない人物であり、犯人候補かなと考えていました。中盤以降は良い意味で好感度が上がりましたね。携帯番号を交換する辺りからは主人公に対して友好的に接していくからこそ、終盤の車内でお互いの考えをぶつけるシーンは良い意味で重たい空気を感じながら、進めていましたね。特に神原刑事が静かに怒るシーンは鳥肌がたちました。
久瀬刑事のことを心の底から信頼しているのだなと。
後に笑子ママがそれは主人公に対して気を許しているからこそ、感情をさらしたんだよと言われたときは成程なと思いました。
・久瀬よし江
久瀬兄弟の育ての親にして祖母。個人的に自分は行方不明の兄を探す理由は最初、良い印象を抱かなかった久瀬刑事のためでなく、よし江さんのために探そうと考えていました。後に久瀬刑事の人となりがそれなりに分かったことで見方は変わりましたが。よし江さんが久瀬兄弟のことを楽しそうに話す姿を見ると亡くなった祖母を思い出して涙腺が刺激してきました。
声を演じている人の演技が上手いからこそよりそう感じさせます。
南第三中学校の関係者
・佐々木英介
今回の事件の被害者。実際は自殺でしたが久瀬刑事による偽装工作で殺人事件に変えられてしまった人物。
話を聞くうちに佐々木君は自殺じゃないのかと親しい友人である森本さんと滝口くんだけが的を射た発言していたのは何とも皮肉な話だなと本編が終わってそう感じました。彼はほかの生徒からは誰からも分け隔てなく接するいわゆる八方美人な性格なのかなと感じました。だからこそ、自身の悩み(成績不振、森本さんに嫌われたなど。)を心のうちに溜め込んでしまう性格かなと。その結果、佐々木君は生きるのに疲れて自殺してしまったのかなと思いました。終盤、中学生は危うい年ごろだからこそ、支え、守らなければならない。と主人公は問います。自分は今作を通して伝えたかったテーマの一つかなと思いました。
・森本めぐみ&滝口康平
佐々木君の親友の二人。ある意味、今回の事件の被害者と言っても良いでしょう。森本さんは佐々木君の死に深い傷と後悔を抱いており、何か行動しなければと事件現場であるポンプ場に無我夢中で飛び出してしまうほどに。
その後、取り調べのシーンで笑み男が出たというシーンでその余韻が若干吹き飛んでしまったのですが。
そして、滝口くんの登場するシーンで自分は佐々木くんは殺されたのではなく、自殺したのではと考えるようになりました。彼の勇気ある持論を説いてくれたお陰で事件の全貌がやや明白になる重要な場面です。
佐々木君の悩みを他人に話してよいのかと悩みながら発言するシーンは感情移入しましたね。
・笑子ママ
今作の事件の重要人物の一人。
今作の犯人、笑み男こと、都筑実(以降、ミノルと呼ぶ。)が働いていた轟モータースがある亀松町を教えてくれる。笑み男の殺人から笑うことによって逃れることが出来た人物でもあります。実のやった殺人は到底許されることではありませんが、笑子ママのように救われた人物が描かれることで複雑な気持ちになりますね。
終盤のきついシーンが増えていく中、出てくる度に主人公を励ましていたので自身も好感度の高い人物となりました。
さて、まだ主要人物はいますが、ここからは自身が気に入ったサブキャラクターの一部を取り上げていきたいと思います。
・生徒B&C
サブキャラの中では一番出番の多かった二人組。3回以上も出てくるとは思わなかった。二人の掛け合いが漫才のように繰り出すため、登場するたびに緊迫感のあるシナリオの最中、癒されました。余談ですが、生徒Bを演じている人はスマブラSPのメインテーマを歌唱している人でもあります。個人的にかなり驚きました。
ところで、滝口君、三つ編みの子が好きと言っていましたが、もしかして、生徒Cのことですかね?
・工事現場のおっちゃん&送迎ドライバー
事件の調査に積極的に協力してくれるおっちゃん。わざわざ都筑(誠)のことを知っているドライバーを主人公のもとに連れてきてくれる良い人。
事件のカギを握る証言をするシーンは演出も相まって鳥肌が立ちましたね。
・おじいさん
一部では無駄話が多いと言われ、嫌われていますが自分は同じく無駄話の多い福山先生よりは好きです。個人的にはおじいさんのボケは面白く、一部は腹が痛いほど笑わせてくれました。(ある…探偵の…事件… ミノル…ツヅキ…など。)シリアスなシーンが続く中、良い清涼剤になりました。
しかし、たまに18年前に見た光景を述べているので気の抜けない展開であったのは良かったです。おじいさんのいう通り、あの二人の仲睦まじい光景はボケていてもしっかりと覚えていたんだなと考えたりもしました。
・福山先生
正直、本編ではあまり、好きでも嫌いにもなれない人物でした。悪い人ではないんですが話の本題に入るのが遅いので若干イライラさせられました。
ただ、笑み男に関する、重要な情報の提供。森本めぐみの必死の捜索など、いいところは沢山あるので憎めない人物ではあるんですがね。
さて、ここからは事件の核心と考察を交えつつ述べて行きたいと思う。
・久瀬刑事
正直、最初はあまり良い印象は抱かなかったものの、主人公にタクシーを呼んだり、森本めぐみを気遣ったり、よし江さんの面倒をみたりなど不器用ながらも良いところを垣間見せた人物。
神原刑事が久瀬刑事は勘の良いところがあるといったように、終盤の舞台である山姥峠に不意打ちで現れるときはさすがにぞっとしました。同時に久瀬刑事が今回の一連の騒動の発端であることも確信しました。
何故山姥峠に現れたのかは2週目プレイして分かりました。恐らくは久瀬刑事のマンション内で主人公が留守番しているときにネクタイと遺書が入った箱が以前と違う場所に置かれているのを見たことがきっかけで主人公に対して偽装工作がばれることの恐れと警戒心を抱いたことで11章の途中からこっそりと尾行していたのでしょう。
そして、今作の一連の騒動の主犯。兄を連れ去った笑み男こと、都筑実を探すことで行方不明の兄こと、誠さんが見つかると思い、自殺した佐々木英介を18年前の事件を想起させる殺人事件に偽装工作した人物ということが判明する。ただ、個人的に本編が終わってややもやもやしたのは久瀬刑事がきちんと罪を償う描写をもうちょっと丁寧に描いてほしかったなと思わなくもなかったです。佐々木くんは本当は自殺だということが判明したので親しい友人である森本めぐみさんや滝口康平くんに謝罪するシーンを入れてくれたら多少は晴れたのかなと思います。まだ佐々木君を蘇生しようとしたり、通報をしたりと情状酌量の余地はあるとは思いますのでもうちょっと何とかならなかったかなと今でも考えています。
まだ語りたいことはありますが、今作の犯人であるミノルと久瀬刑事の共通点について後半述べていきたいと思いますのでそちらも見ていただけると幸いです。
・轟夫妻
都筑実(以後、ミノルと呼ぶ)と二年間轟モータースで過ごした夫婦。主人公のことをミノルのように良い目、してんだなと評価する。ミノルと暮らした日々はこの夫婦にとってかけがえのないものだったのだなと要所で読み取れました。それだけに後の展開で引き起こされる轟夫妻が逆上するシーンはつらいものがありました。同時に主人公よ、ミノルを容疑者として考えていることを正直に言うなよとは思いましたが…。個人的にこのシーンは探偵の存在意義とは何なのかと問いかける重要な場面のため、つらくも好きな展開です。主人公がありがとうございますと涙ぐみながら言う所は自分も思わず、泣きそうになるぐらい、感情移入して読み進めていました。
しかし、全て終えて自身が思ったことは、結果論ではありますが、今作の犯人は都筑実でした。轟夫妻にこのことを空木探偵事務所、及び警察は真実を告げに行ったのでしょうか。重たい真実を受け入れられるのだろうかと今でも考えを巡らせてしまいます。
さて、長くなりましたが前編終了です。最後に一つだけ、今作は怖くないと言う人がいますがそんなことはないです。坂本さんと宮地さんのインタビューでも仰っていましたが、今作はリアリティーのある身近にある恐怖を生々しく描かれています。久瀬刑事の背後から何者から尾行されている怖さなどがそうです。怖くないと感じる人は自身にそのような経験がないからそう言えるのでしょうね。
引用 ファミ通 笑み男 インタビューは下記リンクより。
後編では今作の犯人である都筑実ことミノルについて深く考え、考察していきたいと思います。ある意味、本編かもしれません。近いうちに公開しますので気長にお待ちいただければ幸いです。
追記 後編を公開しました。