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「暗黒面の寓話・#51:予報士」
(Sub:日本の自然災害といえば、、、)
今年は例年にも増して《G》の発生件数が多い。
しかもただ件数が多いだけではなく、例年よりも “大型で勢力が強い“ のだ。
日本列島は初夏から秋にかけて多くの《G》が襲来する。
何故、《G》が日本列島を目ざしてやって来るのかは未だに解っていない。
地球の自転のせいだという者もいれば、海流変化のせいだという者もいる。
理由はともかく、毎年繰り返される《G》の襲来はもはや季節イベントだ。
人々は《G》の襲来を “自然の事“ としてある意味受け入れて生活している。
(《G》が頻繁に上陸する地域は “G銀座” などと呼ばれていたりする)
だが、それでも勢力が強い《G》は大きな被害をもたらすことがある。
その為、《G》の発生を速やかに察知し、その挙動を予測することはとても重要だ。
1959年に甚大な被害をもたらした《伊勢湾・G》の襲来を教訓に、政府は日本に接近する《G》を早期に検知するべく富士山の山頂にレーダー設備を建設した。
このレーダーにより、より早く《G》の接近を察知できるようになり、日本の《G災害》は大幅に減少したと言われている。
そして現在は衛星による監視システムが構築され、《G》の発生は即時に検知されている。
だが、それでも《G災害》はなくならない。
人間の力ではいまだに《G》を排除することはおろか、《G》の上陸を阻止することすらできないからだ。
一旦、《G》が上陸すると、その付近では住宅や工場、農地などが破壊され、避難が遅れれば人的な被害も発生する。
それを防ぐべく、《G》の挙動と進路を予測するのが ”G予報士” の仕事だ。
個々の《G》の特徴(性格)を分析し、それぞれの《G》が上陸後にどのような挙動をとり、進路を如何とるかを予測するのだ。
その予測に基づいて、当該エリアに避難指示を出したり、自衛隊の災害出動(《G》への “牽制” )計画を練ったりするのだ。
ただ、《G》と一言で言っても年度や季節によって様々なタイプがおり、その挙動を予測するのは簡単な事でなない。
まず、《G》はその “規模(サイズ)” によって、“並”、“大型”、“超大型”、とクラス分けされている。
次に “勢力“ という指標があり、《G》の ”狂暴さ(性格)” を表している。
比較的 “大人しい個体” から、とんでもなく狂暴な “暴れん坊” までおり、“並”< “やや強い”< “強い”< “極めて強い”、などと表現されている。
また、“速度” も重要な指標だ。“速度” とは文字通り《G》の移動(歩行)速度のことだ。
やってきたと思えば “アっ” という間に通り過ぎてしまう “駆け足タイプ” もいれば、停滞して被害を増大させる “鈍足タイプ” もいる。
更に “粉砕型” と “焦炎型” という属性を持っている場合もある。
“粉砕型” はやたらと暴れまわって破壊をつくすタイプで、通称:“暴G“。
対して “焦炎型” は頻繁に “放射能火炎” を吐くタイプで、通称:“焔G“。
“粉砕型” は物理的に街を破壊するだけなので、ある意味 ”マシ” なのだが、
“焦炎型” の場合は残留放射能などの影響がある為、被害が深刻になる場合が多い。
大型でも、勢力が並で(それほど暴れない)、速度が速い《G》はあまり被害を出さないし、小型でも勢力が強く(かなり暴れる)、速度が遅い《G》は多くの被害を出す。
更にそいつが “焦炎型” だったりすると被害はとてつもなく甚大になる。
最悪なのは、そいつが “迷走” して被害を拡大させつつ、なかなか日本から離れてくれない場合だ。
だからこそ私達・予報士は、個々の個体の特性を速やかに分析し、そいつの進路をできるだけ正確に予測する必要がある。
そうすることで被害を最小限に抑え、自衛隊の活動を効率化できるのだ。
昔、《G》の挙動を予測する仕組みがなかったころ、自衛隊がやみくもに攻撃をしてしまったせいで《G》が “迷走“ してしまい、大きな被害を出してしまったことがあった。
これに対して、現代の自衛隊は昔と異なるコンセプトで攻撃を行うようになっている。
そもそも自衛隊の火力では《G》を排除することができない。
自衛隊の役目は、その火力を以って《G》を牽制し、その進路を積極的にコントロールすることにある。
人口密集地や重要拠点に被害がでないように誘導し、できるだけ早く立ち去ってもらえるように ”追い立てる” のだ。
その場合、もともと “本人“ が進もうとしていた進路と誘導しようとする方向が合致、あるいは近しい場合は誘導が旨くいく。
逆に “本人の意向“ とは合わない方向へ誘導しようと牽制攻撃しても誘導は成功しない。
それどころか “迷走” や “停滞” を起こしてしまい被害を拡大させてしまう。
だからこそ、《G》の向かおうとする進路を的確に予測することが重要になってくる。
《G》が向かおうとしている進路が予測できれば、それに沿ってもっとも被害を抑えられる誘導計画を立案し、これにそって “追い立て” を実施することができるのだ。
それだけにわたし達・予報師の責任は重大だ。
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わたしは子供の頃、《G災害》で家族を失った。
その頃は今ほど的確に《G》の進路予測ができなくて、自衛隊も効果的な誘導牽制を行えなかったのだ。
その結果、《G》はなかなか自衛隊の誘導に乗らず “迷走” してしまい、大きな被害が出てしまった。
それでも自衛隊は人々と街を守るべく必死に奮戦し、彼らにも被害が及んだという。
わたしはそうした悲劇をなくしたくて《G》予報士となったのだ。
今年の夏もまた《G》はやってくる。
その時、わたしはちゃんと役目を果たすことができるだろうか!?
不安はあるけれど、逃げ出すことはできない。
《G》の、“歩き方“、 ”鳴き声“、 ”炎を吐く間隔“、 ”尻尾の振り方“、
周囲の、“気圧”、 “地形”、 “放射線”、 “地磁気”、 “太陽フレア”、
ありとあらゆる情報を統合して、《G》のゆく先を読み解くのだ。
わたし “大谷マリ“ は、家族とこの国を護る為にG予報士になったのだから!