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読切超短編:ツイン・テール:# 1.5
《ツイン・テール》の続編(閑話)
わたしはとある同居人と一緒に棲んでいる。
ネコのミーコさんだ。
ミーコさんは元々は祖母の家にいたのだが、祖母が亡くなりわたしのところにやってきた。
ウチに来てからしばらくは文字通り “猫を被っていた” のだが、先日、ある事件がありその際に正体を現したのだ。
ミーコさんはただのネコではない。
シッポが2本ある “ツイン・テール” だった。
わたしが仕事(不動産関係)で行った “とある場所” で不覚にも “死霊“に憑かれてしまい、あやうく憑り殺されそうになったときにミーコさんが死霊を撃退してくれたのだ。
アレからわたしは好奇心にかられていろいろと問い詰めようとしたのだが、あいかわらずそっけない態度(距離)をとられてしまい悶々としている。
どうしてもシッポが気になってしまいジロジロと見てしまったせいか、ミーコさんは以前にも増してベッドの下、ソファーの後ろ、カーテンの影、といった場所に隠れてしまいなかなか姿を見せてくれない。
今も夜はわたしの布団に入ってくるけれど、最近はわたしが確実に寝入るまでは入ってこなくなったので布団の中で撫でまわすこともできない。
明け方に布団から出てゆくときに、わたしの鼻先を数回舐めから出てゆくので “そこにいた” のがわかるくらいだ。
実に、“怪しい”。
そして、ミーコさんの正体を知ってから思い返せば、いろいろと思い当たるフシがあった。
ミーコさんが来た頃から、外出先で妙にネコに気を使われていた。
友人に連れられて行ったネコ・カフェで、店中のキャスト・ネコがそろってわたしの席に挨拶きたことがあった。
また、別の友人宅にお邪魔したとき、その家のネコがわたしの処に自分のオヤツを献上しにきたこともあった。
それとは逆に、近所のワンコ達からは徹底して避けられるようになった。
元気にお散歩していたドーベルマンが、わたしを見るなり震えながら飼い主さんの後ろに隠れてしまったときはさすがに引いた。
極めつけは女子会(飲み会)の後に行った “占い館“ で、占い師から言われた言葉だ。
《あなたの後ろに、“招き猫のフリ” をした巨大なネコが見える》
「巨大って、、どれくらい大きいんですか?」、 と訊くと、
「3階建てのビルくらい、、、」、 と占い師は引きつった顔で答えた。
「ワぁ~すごーイ!」、 「おっきいね~!」
その時は、“酔っていた” こともあって友人と一緒に大笑いして終わった。
だが、、、今、思い返すと少々笑えない、、、
“3階建てのビルって、、、”、 “怪獣か?!?”
“そして、、《招き猫のフリ》って、、、?!?”
まあ、なんとなく想像はつく。
おおかた、“見える人” から見られてしまったので、
“邪悪な存在に見えないようにポーズをとってみた”、
ということではないかと思う。
彼女は日頃からいろいろとトボケているのだが、その誤魔化し方が少々雑なのだ。
少なくとも、ヤバイ死霊を瞬殺できるくらいの存在でありながら、今もまだ ”普通のネコのフリ” を続けている。
もう”身バレ”しているのだから、意味ないように思うのだが、、、
そうはいってもさすがに ”3階建てのビル” の大きさになられては困るので、わたしもミーコさんの ”普通のフリ” になんとなくつきあっている。
そんなかんじで当人(当ネコ)からは事情がきけないので、しかたなくネットでいろいろと調べてみた。
どうやらネコは年を重ねると幽霊や悪霊にも対抗できる不思議な力を身につけることができるらしい。 というより妖怪になるらしい。
昔からの言い伝えでは、ネコは10年以上生きると妖怪化し、もう10年生きるとより上位の “猫マタ”(←ここでシッポが2本になるらしい)となり、更にそこから10年生きると “猫ショウ” という最終形態に進化するそうだ。
どうやら “10年ごとにバージョン・アップする“ ということのようだけれど、最近は10歳越えのネコなんてめずらしくもない。
言い伝え通りなら、そこらじゅうに ”ネコ妖怪” がいることになってしまう。
だから、10年というのは “とても長い年月を生きられたならば” という意味合いであって、絶対時間ではないのだと思われる。
むかしは10年以上生きるネコなんてほとんどいなかったのだろう。
それでも、やはり長く生きると ”特別な存在” に変化(進化?)するのだろうか!?
そして、わたしが記憶している限りでもミーコさんは20年近く生きているはずだ。
”そのへん” を確かめようと母に電話してそれとなく訊いてみたところ、、
おそろしい返事が返ってきた。
「ミーコさん??」
「そうねえ、うち(祖母の家)はネコ沢山いたから、、よくわからないわ」
「かあさん(母)が子供の頃からいたような気もするけど、、、」←(!)
“いや、イや、、さすがアナタと同世代はないでしょ、、、”
祖母の家は山奥だったこともあり、数匹のネコを放し飼いにしていた。
ネコはみな血縁だったらしく、どの子もよく似ていて区別がつきにくかったのだろう。
だがたしかに子供の頃、祖母の家で一緒に遊んだ時のミーコさんはすでに子猫ではなかった。
どちらかというと、年上のお姉さんが親戚の子供(私)の相手をしてくれていた、といった感じだった。
どうやら、ミーコさんは少なくとも20歳以上で、場合によっては ”アラサー“ もありえるのかもしれない!?(因みにわたしは21歳だ)
“うわぁ~!”、 “ミーコさんって年上なの?!?”
「ねえ!ミーコさん!」、 「ひょっとしてアラサー?!?」
わたしが部屋のどこかにいるはずのミーコさんに問いかけると、
《クすッん》、 とソファーの下からクシャミがした。
“あっ、、”、 “これはマジかもしれない、、、”
まだまだ、“何か隠している“、、わたしの ”カン” がそうささやく。
田舎からわたしのアパートにやってきた2本シッポのミーコさん。
まだまだミーコさんとの同居生活は続いていく。
これからいろいろと見せてもらうのが楽しみだ!