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社会の変え方。まずは私から。

最近、いくつかの場面で、社会が変わらないことを憂いている発言に出会いました。ある企業では、「社会貢献の取組を長年行っているが、なかなか社会が変わらない。引き続き寄付や共同プロジェクトを継続するべきか、検討しなくてはならない」と社会貢献担当者がお話をしていました。また、あるインパクト投資家は、「インパクト投資は増えてきているが、社会は変わっている感じがしない。本当にインパクトにつながっているのか?」と懸念を共有してくれました。

そのようなコメントを聞くと、2011年にStanford Social Innovation Reviewにて発表されたJohn Kania とMark Kramerのコレクティブインパクトについての記事を思い起こします。(日本語版:https://ssir-j.org/collective_impact/

多くの個人や法人が、長年に渡り「英雄的な努力」をしてきたが、社会は変わらなかった。しかし、後に「コレクティブ・インパクト」と呼ばれる手法を用いた時、変化が起きた。これは、個人や団体が単独で取り組むことではなく、また、複数の団体が一緒に取り組むことでもなく、また、連携したり、協働することとは異なることだった、と説明されています。

記事の導入文にてコレクティブ・インパクトの要点がまとめられています。「互いの違いを生かしながら 共通の目標に向かって集合的なインパクトを生み出す5つの原則」。 5つの原則が注目されがちですが、私は集合的に取り組む、ということも重要なポイントだと思うようになりました。

日本での事例

未来を変えた島の学校――隠岐島前発 ふるさと再興への挑戦

2011年にSSIRでコレクティブ・インパクトの記事が発表される前の 2008年に、 島根県海士町で取り組まれていた「隠岐島前 高等学校の魅力化と永遠の発展の会」の取組は、海士町の未来を変えた取組でした。「未来を変えた島の学校」の本文で示されている取組の概要にはコレクティブ・インパクトの5つの原則が反映されていました。

島前高校を訪問し、お話を伺っていると、島の人たちが皆島を変えるための取組に参加していたことがわかりました。また、海士町の変革がNHK番組、新プロジェクトXでも取り上げられ、その番組を見ていると、町長から役場の課長、そして、職員、そして、その家族が、皆当事者として関わりはじめたことが説明されていました。

たしかに、島の人たち全員が変われば、島は変わる。また、島の人たちが変わらなければ、島は変わらない。あ、なるほど!「集合体として取組む」ということは、町の住民全員が行動変容を起こし、取組むことだと気づきました。当たり前かもしれませんが、「社会」とはその構成員の集まりです。そして、社会を構成する人たちが変わらなければ、社会は変わらないのは当然です。「社会」という言葉が抽象的で、どこか他人事のように思えていましたが、実は「社会」とは、私と、私の周りの人達だと気づきました。

協働と集合体(コレクティブ)の違い

個別団体の取組、複数の団体の協働的な取り組みなどが社会を変えるに至らず、集合的取組(コレクティブ・インパクト)が社会を変えることを絵にかいて考えてみました。

町の外から、あるいは、問題を抱えるコミュニティーの外から助け、変わることを促しても変わる人は限定的であり、また、外部からの働きかけが終わると、元に戻ってしまう可能性が高いと思います。

これは、複数の団体が共同しても同じような結果になると思われます。

一方、コミュニティーの中に入り、自ら変わり、周りの人に変わるように働きかけ、周りの人がまた、その周りの人に働きかけ、皆が自分事として取組始めると、コミュニティー全体が変わることにつながるように思えます。海士町の町長がまずは自ら変わり、様子見だった職員が変わり、さらに役場に期待していなかった町民が変わって町のための取組をはじめ、結果、全員が変わり、町が変わったような連鎖が社会を変えるためには必要だと思います。

2011年のコレクティブ・インパクトの記事に続き、2012年の記事では、コレクティブ・インパクトを実装するためには、コミュニティーの中の人たちが声をかけ始められるような働きかけが示されています。日本語で出版された「コレクティブ・インパクトの新潮流と社会実装」には、コミュニティーや当事者の関わりの重要性に展開していることも納得性が高いと思います。


https://ssir-j.org/  にて無料で記事にアクセスできます

このよう気づきから、最近、コレクティブ・インパクトや、社会を変えることについてワークショップを依頼されると、「私がどう変わるのか」、そして、「周りの人を変わりやすくするためにどうするのか」を検討するようになりました。

つい先日、知り合いがガンジーの名言をフェイスブックに投稿していて、改めてハッとしました。「Be the change you wish to see in the world」(意訳:社会を変えたければ、まずは私自身がそのように変わらなければいけないのだと)。

最近は、「わたしから」変える社会と、政策提言や仕組みづくりを行う事の関連性をモヤモヤと考えています。政策や仕組みは補助的なもので、主語はやはり「わたし」なのか、と。

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