Sorenson Impact Summit 2024の振り返り
Sorenson Impact Summit 2024について
トップクラスのカンファレンス
2023年秋にサンフランシスコで開催されたSOCAP2023で出会ったSorenson Impact Instituteの渉外ディレクターに、ユタ州ディアバレーで開催されたSorenson Impact Summit(サミット)に招待されました。年明けに受け取った招待メールには、丁寧に作りこまれたウェブサイトへのリンクが添付されていました。Sorenson Impact Institute の取組にも興味がありましたし、招待制のイベントにせっかくご招待いただきましたので、2024年6月に3日間のサミットに自費で参加することにしました。
SOCAPとSorenson Impact Summitの2つのイベントはSorenson Impact Foundationがスポンサーとなっています。SOCAPは3,200人が参加した大規模なカンファレンスで、幅広いトピックとネットワーキングの機会を提供していました。一方、サミットは、200人の参加者を対象とした招待制のプログラムで、より深い内容の議論とネットワーキングが出来る場でした。
サミットの3日間を振り返ると、このサミットは、これまで参加した中でもトップクラスのカンファレンスでした。内容はよく設計・準備され、素晴らしいスピーカーによって提供されました。場所の設定やプログラムの段取りは参加者が議論に参加し、ネットワーキングを行い、お互いから学ぶことができるように、うまく設計されていました。
インパクトファースト投資家が参加
参加前より、参加者のインパクトに対する考え方について気になっていました。市場にはインパクト投資家のスペクトルが存在していると思います。一方の端には、「インパクトファースト投資家」があり、彼らはインパクトを重視し、また金融的なリターンを提供する組織に投資します。スペクトルの他方には、金融的なリターンを重視し、適切な場合には「インパクト投資」のマーケティングラベルを適用する人々がいます。このサミットの参加者はスペクトルのどこに位置するのだろう、と疑問に思っていました。
そこで、ウェルカムカクテルセッションで、私はある著名なインパクト投資家とこの会議のインパクト投資家の分布について聞いてみました。彼は自信満々に、「あなたはこのサミットで会うインパクトファースト投資家の皆さんに感銘を受けるでしょう」と言いました。続く3日間、他の参加者との交流を通じて、それぞれの人が特定の領域でインパクトを生み出すことに強いコミットメントを持っていることを何度も実感しました。多くの人が市場相場のリターンを求めていましたが、中には経済的リターンを減らしてインパクト追求する人や、フィランソロピーとしてインパクトを追求する人もいました。ただ、皆さん、まずはインパクトありきの「インパクトファースト」な方々でした。
4つの印象的なテーマ
沢山の興味深い会話がありましたが、特に以下のテーマが印象的でした。
Make Capitalism Work!:資本主義を機能させようという呼びかけ。搾取的資本主義(Extractive Capitalism)は社会を分断する。その分断を何十年も何世代も続けられ、強化されてきた。サミットの参加者たちは、そのギャップを埋め、その伝播を止めるために資本主義をどのように活用するか、さまざまな方法を共有していました。
Education and Impact Investment:教育の質を向上させる。次世代の発展・成長を加速させる。すべての人に公平な競争環境を提供する。ただ、これは公平性のためだけではなく、グローバル市場で自国の競争力を保つために全体の教育水準を引き上げる必要性も強く感じているようでした。
Ownership lens investing: 所有権の移動と社会価値の創造。資本主義の手法が社会的変化や富の再分配に意図して使われている話には身震いがしました。
Fighting for Democracy:民主主義のための闘い。自分が民主主義を当然のものとして受け止めていることに改めて気づかされました。現実には、常に民主主義のための闘いがあります。私は、サミットの参加者が民主主義への脅威に真剣に向き合い、それと取り組んでいることを見ました。
登壇者の名前やそれぞれがお話したことを共有することはできないので、私が感じたこと、また、サミットとは別に調べたことを元に、これら4つのテーマについて少しずつコメントしようと思います。
1. Make Capitalism Work!
「Make capitalism work!」これはあるアフリカ系アメリカ人の登壇者が語気を強めて話した言葉でした。日本では「新しい資本主義」というフレーズを聞きますが、その中には資本主義を問題視する声もあります。政府のガイダンスの元で重点投資分野を示したり、それを求める声も聞きます。あるいは、投資対リターンについて指針などを求める声も聞きます。「Make capitalism work!」は私たち一人ひとりに、資本主義を機能させるように、という呼び掛けでした。仕組みや制度、政府へのメッセージではなく、私への呼びかけとして受け止めました。
米国では人種差別をなくし、すべての人種に公平な環境を整えるための絶え間ない努力をしてきた人たちが沢山います。一方で、そのたゆまない努力が長年継続されつつも、差別や格差は強く残っており、解消されていないことも周知の事実です。別のスピーカーは、銀行の一見無害な慣行がアフリカ系アメリカ人と白人の間の大きな格差を維持してきたことを指摘されました。例えば、1960年代に、ビジネス運営の経験がなく、担保や親族の保証がないという理由で、あるアフリカ系アメリカ人がビジネスを立ち上げるための銀行融資を拒否されたかもしれません。その人の子供たちは、同じ理由で1990年代にビジネスを立ち上げるための銀行融資を拒否されたかもしれません。そして、その人の孫も2010年代に同じことが起こったかもしれません。銀行融資の申請を却下するための一見正当な理由が、そのアフリカ系アメリカ人の家族を3世代にわたって銀行融資から締め出す結果となりました。
Extractive Capitalism(搾取的資本主義)
また別のセッションでは、「Extractive Capitalism」(搾取的資本主義)という言葉を初めて聞きました。裕福な人は、不動産を所有して賃貸事業を行うことができます。一方、富を持たず、銀行との信用がなく住宅ローンを得ることができない人は、住まいを賃貸するしか選択肢が無くなります。裕福な所有者は、賃貸ビジネスで利益を上げるが、賃借人は資産基盤を築く代わりに賃貸料を支払い続けます。裕福な所有者は、他者から資産を築く可能性を奪っている。この仕組みを「Extractive Capitalism」と称していると理解しました。
「Make Capitalism Work!」と呼び掛けた人も、他の参加者のインパクト投資家たちとの議論でも、「資本主義が問題だ」という話はありませんでした。むしろ論点は、「私たちが築きたい社会のために、どのようにして資本主義を使うことができるか?」というものでした。「Make capitalism work!」と呼び掛けられたのは、私がどのように資本主義という仕組みを活用して、私が作りたい社会を創るのか、を問われたのだと思いました。
資本主義を活用して、作りたい社会を創る、ということを考えるとすぐに連想するのが、投資家、あるいは起業家として何ができるのか、という事でした。このサミットでは、それら以外に2つの実践に気づかされました。「Stop extractive capitalism(搾取的資本主義をやめる)」と「Bank your values(価値観で銀行を選べ)」との2点です。
Bank your values
「Bank your values」は何名かのスピーカーが繰り返していたフレーズでした。銀行預金をしたりクレジットカードを使ったりするという日常の行為が、社会的不公正を助長している金融機関との取引行為になるかもしれません。すなわち、価値観に沿っていない「banking」をしていることになります。確かに、私が銀行預金を考える時に考慮するのは金利と元本保証、支店の近さ、通勤路にあるATMかもしれません。でも、その預金がどのような貸し付けに使われているのか、確認したことはありません。前述の例のように、過去3世代にわたって事業を起こすための融資を断る銀行に預金をするのか、それとも、その状況を是正し、機会を公平に提供する銀行に預金をするのか。その選択は確かに一人ひとりの預金者にあります。
このような考え方を象徴する事例がまた別のセッションで紹介されました。Amalgamated Bank(アマルガメイテッド・バンク、以下「AB」)は1923年にAmalgamated Clothing Workers of America (アメリカ衣料労働者組合)によって設立されました。縫製工場で働く女性が経済的自立を得るために作られた銀行でした。労働者、組合員、有色人種の事業化のサポートなど、社会変革を推進するための投資や融資を行ってきているようです。2021年にはB Corp認証も得ています。このような銀行に口座を持ち、預金し、取引をすることも「Bank you values」として出来ることかもしれません。日本ではどのような銀行があるのか、調べる必要があります。
資本主義の仕組みを使うのは私たちだと改めて思い直しました。資本主義が経済格差を広げているのではなく、それを使っている人が、無意識か意識してかは別として、経済格差が広がる結果につながる使い方をしている。そして、それは政府や企業の行為のみならず、銀行口座を作る私たち自身が、資本主義の仕組みを使って、経済格差を助長・拡大させていることに気づかされました。
「Make capitalism work!」という呼びかけに答えるのは私なのです。
2. Education and Impact Investment
そもそもこのソレンソン・インパクト・サミットに参加したのは、ソレンソン・インパクト・インスティテュートとユタ大学との共同プログラムであるインパクト投資プログラムについて詳しく知るためでした。ユタ大学のインパクト投資プログラムについていくつか興味深い点がありました。また、ユタ大学以外の教育に関連するインパクト投資について、いくつか興味深い点がありましたので、コメントします。
ユタ大学のビジネススクールのプログラム
ユタ大学のビジネススクールのプログラムには3つの特筆する点があると思いました。
多くの資産家が協働してユタ大学のプログラムを実現し、発展させている
学生主導の投資事業
積極的な他の大学との連携
ユタ州は、1847年に到着したブリギム・ヤングに率いられたモルモン教徒の入植地として始まりました。ユタ大学は1850年に設立され、ビジネススクールは1917年に開始されました。その後、1991年にDavid Eccles School of Business(デイビッド・エクルズ・ビジネススクール)と名付けられました。ビジネススクールでは現在、学士、MBA、修士、および博士のプログラムを提供しています。サミットの前に、私はビジネススクールを訪れ、ビジネススクールを支援しているのはソレンソン家だけでないことに気づきました。学校の壁には多くの支援者が展示されていました。財団による大学への関与の最高レベルはInstitute(インスティテュート)を持つことです。4つのインスティテュートがありました:Kem C Gardner Policy Institute(ケム・C・ガードナー・ポリシー・インスティテュート)、Lassonde Entrepreneur Institute(ラソンド・アントレプレナー・インスティテュート)、Marriner S. Eccles Institute for Economics and Data Analytics(マリナー・S・エクルズ経済・データ分析インスティテュート)、そしてSorenson Impact Institute(ソレンソン・インパクト・インスティテュート)です。これらのインスティテュートは、家族財団によって資金提供されており、それぞれがプログラム作りに関わっているようですが、4つのインスティテュートは、補完的な分野に設立されており、ビジネスのさまざまな領域の発展を推進するために協力的に働いているようです。
学生主導の投資プログラムも興味深いものでした。学生たちは、学業とは別に、実際の投資決定に関与します。最初の学生主導のベンチャーファンドは2001年に1,800万ドルで開始されました。2013年にジム・ソレンソンがファンドに寄付を行い、ソレンソン・インパクト・ファンデーションからのPRIファンド(Program Related Investment Fund)と合わせて、年間約1,000万ドルを投資しています。過去10年間で、学生たちは7,000万ドル以上を投資したそうです。
学生主導の投資プログラムは、学生が週に20時間を投資のための調査や検討活動に費やし、時給18ドルで働く8ヶ月間のインターンシッププログラムです。彼らはベーシック・トレーニングを1週間受けた後、ピッチコンテストなどのさまざまなソースからピッチ文書をレビューして、潜在的なターゲットを探し始めます。高いポテンシャルを持つターゲットを見つけたら、ブログラム参加者と一緒に検討し、起業家と会話するか決定します。起業家との会話の後、彼らはデューデリジェンスを行うかどうかを決定します。1〜2ヶ月のデューデリジェンスの後、学生たちは投資委員会にプレゼンテーションを行います。投資委員会にはジム・ソレンソンと教員メンバーが含まれています。投資委員会は四半期ごとに開催されます。私が話をした1人の学生は、幸運にもこれまでにインターンシップが18ヶ月間にまで延長され、その間に4つの投資の実行経験を得ることが出来たそうです。素晴らしい実践と学びの機会になっていると思います。
Sorenson Impact Instituteが他の大学と協力する機会を積極的に探していることに驚きました。サミット初日のカクテルアワーで、私はBowie State University(ボウイ州立大学)の教員と出会いました。彼がサミットに何を求めて来たのか尋ねると、「Sorenson Impact Instituteが私たちに接触してきて、共同プログラムを開発するよう求めてきたので、その一環として私はここにいます」と答えました。サミットの最終日に、Sorenson Impact InstituteがBowie State UniversityとMiami Dade College(マイアミ・デイド・カレッジ)とのプログラムを開発していることを学びました。
Bowie State Universityはメリーランド州にあり、その6500人の学生の95%はアフリカ系アメリカ人の学生です。学長は、学生たちに起業家精神を育てることに強く注力しているそうです。文学や生物学、その他のプログラムのどれであっても、学生たちは学んだことを基にビジネスを立ち上げる方法をどのように考えるかを挑戦されます。Miami Dade Collegeは、米国最大のCollegeです。その20,000人の学生のうち、75%がヒスパニック系で、15%がアフリカ系アメリカ人です。
Sorenson Impact Instituteは、Bowie State Universityに接触し、学生がユタ州とは大きく異なる環境で学ぶ機会を提供することを目指して、1年間の学生交換プログラムを開発するための取り組みを始めました。前述のインパクト投資インターンシップは、ユタ大学の生徒だけでなく、Bowie State Universityの学生にも、そして、他の大学の学生にも利用可能です。教育における多様性をこれだけ積極的に追求していることは非常に印象的でした。
若者への教育支援は社会の競争力強化への投資
サミットの最中に、ユタ大学のプログラムとは別に、教育関連プログラムについての議論で興味深いお話がいくつかありましたが、その中でも、特にカリフォルニア州のすべての高校3年生に対するCal State University(カリフォルニア州立の大学。州内に23か所のキャンパスがあり、州民への大学教育を提供している)への自動登録制度は非常に印象強いものでした。
ネットワーキング・タイムの会話の中で、カリフォルニア州はすべての高校3年生に手紙を送り、彼らがそう選択すれば、自分の選んだCal State Universityに自動的に登録されることを通知していることを知りました。会話の相手は、この制度により、学生と高校のガイダンスカウンセラーとの間の会話が、「4年制大学に行くべきか、まだ入学できるか」から、「4年制大学にどのように出席するか」に変わり、住宅や経済援助などのトピックを協議するようになると指摘しました。これは本当に、誰もが4年制大学に進学することを考える機会を与えことになります。さら、その会話の中で、「人口全体の基準を引き上げることで、誰もがより高い賃金を得る能力が向上する。これは、人口全体がよりグローバル競争に適応する能力が向上することに繋がります。助けを必要とする人を助けることは慈悲的な思いからではなく、アメリカの国力の強化のためであり、私のためである」と話していました。教育の無償提供は、経済困窮家庭の若者を助けるためではなく、社会の向上、そして、国力強化のためだという考え方は印象的でした。
3. Ownership lens investing
従業員による企業のオーナーシップ(所有権)のパネル・ディスカッションもありました。以前私が勤めていましたプライベート・エクイティーの投資会社では、投資先企業の株式を従業員に分け与えることにより、従業員の会社と仕事への愛着心を向上し、より良い投資結果につながると認識しており、積極的に株式の共有をしていました。そのようなお話かと思っていましたが、内容はだいぶ異なり、かつ、資本主義の手法を使った格差是正の非常に興味深い内容でした。
パネル協議の中で、Essential Owners FundとApis & Heritage Capital Partners (A&H)の例が挙げられていました。サミットの後、それぞれについてネットで調べましたが、A&Hの方が情報を集めやすかったので、A&Hを簡単に紹介し、私の気づきをコメントします。
Apis & Heritage Capital Partners(A&H)は、人種間の富の格差に取り組み、低所得労働者の尊厳、地位、アメリカンドリームを回復するために、プライベートエクイティの専門知識と従業員所有の生産性と富の創造力を引き出そうとしています。A&Hは、Employee Led Buy Out(従業員主導の買収、ELBO)を支援し、Employee Stock Option Plan(従業員株式所有制度、ESOP。企業と従業員両方に税制メリットがある制度)を利用して、民間企業を100%従業員所有の企業に転換します。これにより、公正な価格と富を企業のオーナーに提供し、企業に税制上の利点を確保し、従業員が将来の企業価値創造の受益者になれるようにします。従業員所有は従業員に直接力を与え、企業価値の向上につながるリジリエンスと効率性を生み出します。 A&Hは、100%従業員所有への買収プロセスを案内するだけでなく、従業員のエンゲージメント文化の変革を含む管理サポートも提供します。
この取引は元のオーナー、あるいは、オーナー家族にとっては、事業を売却し、売却益を得ることができ、メリットがあります。従業員にも将来価値創造が従業員の資産構築に繋がります。双方にとってWin-winとなる可能性も大いにあります。
このようなことを実行するために、事業主は何の助けなしに従業員に株式を売却することはできません。そもそも事業主や従業員の頭の中に従業員所有への移行のアイデアがそもそも浮かばないかもしれません。一方、たとえ誰かがそのような取引を漠然と想像しても、成功しスムーズな移行のためには多くの技術的なステップが必要です。Essential Owners FundやA&Hのような企業は、そのような移行をサポートしているようです。
プライベート・エクイティーのような資本主義のど真ん中のような手法を、使い方次第で、生活の基盤となる資産を作ることに役立てることが出来ることに感銘を受けました。サミットで何度も聞いたExtractive Capitalismは貧富の差を広げ、資産を持たない人に不利な状況を作っています。この搾取的な所有はアメリカ資本主義の最大の罪だと声もありました。
一方、Ownership Lens Investingというトピックでカバーされた内容は、資本主義の手法を使って格差を縮小するのです。あるシングルマザーに育てられたあるパネリストは、彼の母親が常に不安に満ちた生活を送っていたと子供時代を振り返りました。彼ら母子は常に絶望の一歩手前にいました。しかし、このようにコミュニティに富が分配されると、人々に経済的な安心感を与え、次世代に成長やチャレンジをする機会を提供します。このような資本主義の活用をしたいと思いました。
4. Fighting for Democracy
米国大統領選挙についての会話は当然のようにありましたが、通常とは違う熱量での会話に少し驚きました。これまでのアメリカ在住の人たちと政治や選挙について話をすることは良くありましたが、政党のポリシーについて意見交換をしたり、候補者の立ち振る舞いについて話したりしていました。ただ、このサミットでは、政策の違いの話よりも「民主主義を守る」ということにも焦点を当てた議論が多くありました。日本で見る報道では政党の対立や特徴のある候補者の話をいつもの選挙の時のように報じられている印象ですが、サミット参加者と接するなか、切迫した民主主義に対する危機感が強く感じられ、外からの見え方と、現地の人たちの感じていることにだいぶ差があることを改めて認識しました。
以上、Sorenson Impact Summitに参加した感想でした。
Sorenson Impact Groupについて
サミットに参加する前に、私はSorenson Impact Groupについて少し調べてみました。背景として少し共有します。
Jim Sorensonは実業家です。彼が築いたビジネスの一つは、聴覚に障害がある人々のためのコミュニケーションの技術的ソリューションを提供するものでした。その事業における成功体験を通して、彼は利益を創出するビジネスで社会的な変化をもたらすことができるという強い確信を得たそうです。
そのようなJim Sorensonさんは過去20年間で、Sorenson Impact Foundation、Sorenson Impact Institute、Sorenson Impact Advisoryを含むSorenson Impact Groupを設立しました。これらの組織は明示的に「インパクトファースト投資」、すなわち「インパクトありき」な投資に取り組んでいます。
Sorenson Impact Foundation(財団)は、社会問題を解決することを目指す企業に対して、市場相場のリターンを伴うインパクトファーストの投資を行っているそうです。また、財団はその資産の100%をミッション関連投資(Mission Related Investment, MRI)に投資しています。さらに、財団はSOCAPやこのサミットのようなプログラムを通じてインパクト投資を促進するエコシステムの開発にも注力しています。Jim Sorensonさんは、ビジネスを築くためには起業家と投資家だけでなく、アドバイザーやアナリストを含む幅広いプレイヤーが必要だと考えているそうです。今回のサミットの参加者はこの考えを体現していました。サミットの参加者には、インパクトビジネスのCEO、インパクト投資会社のCEOとCIO、インパクトビジネスがそのミッションを投資家や市場により良く伝えることを助けるコミュニケーション会社のリーダー、社会起業家の努力を体系化する学者、そしてこれらの努力を伝え、広めるジャーナリストが含まれていました。エコシステム内で起きている進展を共有する一環として、参加者が新たに立ち上げたプログラムを発表する時間も設けられていました。
また、財団はSorenson Impact Fellows(フェロー)とともに次の100年のインパクト投資ビジョンを作り出しているそうです。財団は、インパクト投資に関連するグローバルリーダーをフェローとして招待し、インパクト投資市場のビジョニングを行うためにフェローを集めているそうです。そのようなフェローの一人は、森林の樹冠(forest tree canopy)についての研究を行っている生態学者で、今回のサミットにも参加していました。彼女は研究を行うだけでなく、社会全体につながり、貢献する方法を追求していました。その一つの取組は、彼女の学術的な発見を刑務所で伝えることや、受刑者が自然とつながるプログラムを開発することで、受刑者の生活を改善し、再犯を減らすことでした。これは非常に興味深い取り組みで、一見関連性のないと思われる中南米の森林と、受刑者の再犯という社会問題がつながっていることを示していました。
Sorenson Impact Instituteは、ユタ大学デビッド・エクルズ・ビジネススクール内に設立されています。インパクト投資の最先端の理解を開発するだけでなく、学部、修士、博士課程においてスポンサードプログラムを通じて未来のリーダーを育成しています。その一つとして興味深い学生主導の投資プログラムがありました。それについては、後述します。
Sorenson Impact Advisoryは、財団、ファミリーオフィス、企業などの機関に対して、インパクト投資戦略を形成し、ポートフォリオを構築するための専門サービスを提供しています。この組織はまた、アウトソースされた最高投資責任者(CIO)のサービスを提供しています。
このような取組を通して、Sorensonさんはインパクト投資を行うエコシステムをさらに発展させようとしているそうです。また、Sorensonさんは「外」からエコシステムを変化させるよう働きかけるのではなく、自らもエコシステムの一員として、投資し、アドバイスをし、インパクトを測り、人材を育成し、そして、エコシステムのメンバーとして、エコシステムと一緒に変わろうとしていることが、様々な関係者との会話から感じられました。
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