【10/12(木)開催】気候変動と貧困の同時解決を図るPOWER TO CHANGE FORUM(後編)
こんにちは、グローカルインターン生の高津です。
2021年秋よりスタートした台湾、タイ、日本との3か国共同で実施しているプログラム、気候変動と貧困問題の同時解決システム構築のため、台湾の“-+モデル”をタイと日本でノウハウ移転を行い各国での展開を図る(トヨタ財団国際助成)の2年間の集大成としてのフォーラムを実施しました。
本記事では、そのフォーラムの後編をご紹介します。前編は以下でご覧いただけます。
Workshop:イントロダクション
ワークショップのはじめに、Coreyが気候変動やCO2濃度などの解説を行い、参加者全員で理解を深めました。
Coreyは、現在48歳で、Coreyが生まれてからこれまでの48年間で世界の人口は40億人から、80億人に増加しました。そして、48年間で生物の種は50%減少したと言われています。
パリ協定等により、世界の平均気温の上昇を1.5℃に抑える必要があるとされており、その目標の数値です。そして、気温上昇を抑えるための重要なパラメーターとなっているのが世界のCO2の濃度であり、これが430ppmに達すると、平均気温の上昇が1.5℃を超えると言われています[注1]。実際、現在の世界平均濃度は、前年から2.5ppm増加して、415ppmであり、このままでは、6~7年ほどで430ppmに達してしまうと予測されます。そのため、世界レベルで、システマチックにCO2の排出を減らす取り組みが求められています。
こうしたCO2排出の削減に向けて、企業においては、顧客や取引先などが発生させるCO2の排出量が非常に多いことに着目し、そこにアプローチするのが-+モデルです。
Workshop:実践!どうすれば協働できるか?
Coreyのイントロの後、トヨタプロジェクトの日本チームの学生メンバーである、やすくん(松本安弘)とみずきくん(吉田瑞希)がワークショップを進行しました。2人とも龍谷大学の大学院政策学研究科の院生で、長くこのプロジェクトに関わっています。
ワークショップでは、-+モデルを自分の所属する組織で実践するために、組織の中での「-」の部分を参加者自らで考えました。例えば、アマゾンなどでモノを購入したときに、翌日には家に届くように作られている物流に業界においては、それを実現するために物流のコストがかかっています。しかし、「もし顧客が明日じゃなくて3日後や4日後でも遅くてもいい」場合であれば、そのような選択を顧客ができるシステムを導入することで、複数の商品をまとめて配送できるようになり、配達効率が上がりコストを減らすことが考えられます。このように、日常的に顧客との行動が伴って生じている「無駄」を考えることで、マイナスの部分を考えました。
各グループで様々な意見が飛び交い、各々の所属する組織のサービス・活動における「-」がたくさん発見されていたと思います。その中で、-+モデルの「-」を考えるにあたって、私は、以下の問いを持ちました。
「無駄」という言葉には、一般的に「役に立たないこと、効果・効用がないこと」を指します。先の例に挙げたような「翌日の配達を目指すことで生じる物流のコスト」は、サービス提供者にとっての「無駄」であり、顧客は必ずしも無駄とは思っていないことと考えられます。むしろサービス提供者も、「顧客が3-4日後でもいいと思っている場合」を除いて、顧客のサービスに対する満足度に繋がるため、無駄とは思っていないことも考えられます。一方で「顧客が3-4日後でもいいと思っている場合」には、双方にとって「無駄」が生じていることになります。以下の図のように、誰にとってかで見え方は大きく違いそうですね。
スコープ3に着目している-+モデルは、この双方の無駄をいかに特定できるのかがカギなのかなと思いました(Aの部分)。また別の見方として、顧客が有益だと感じている部分で、サービスの提供者にとって無駄であること(Bの部分)を顧客の期待値や有益だと感じる心理状態をそぎ落とさずにコストカットする方法を探ることが大事なのでしょうか。
いずれにしても、自らの業種やサービス、消費者の特性を踏まえながら、このあたりを上手く整理できれば、日本中、様々な場面に-+モデルを移転できると思います。
Workshop:フォーラムのふりかえり
ワークショップの最後には、フォーラムのふりかえりグループで行い、全体共有を行いました。
全体の振り返りの時間では、様々な方々がご自身の思いや、実践されていることを共有していただきました。ここでは蓮見さんのお話を少しだけ共有します。蓮見さんは「若者のサスティナビリティに対する主体性や意識は、日本おいては、実は十分に高まっていない」ことを指摘していました。
蓮見さんの所属するファブリックが行った「日本におけるサスティナビリティに関する意識」調査では、日本のサスティナビリティに対する意識は非常に低く、年々に増加傾向にあることがわかっているものの、その増加は若者層ではなく、ベビーブーマー層であることが分かっているそうです。
このようにサスティナビリティに対する意識は、世代により異なる、さらには「若者の意識が高まっている」という直観に反した傾向がみられているそうです。これについて、蓮見さんは「若者には様々な要因で、そうした意識をもつ余裕がないのではないか」と考察しています。今後、サスティナビリティに対する意識などを考えるときに、「国民性」などと日本人で一括りにするのではなく、地域、世代、教育歴、収入など様々な変数との関係を紐解き、「私たちはそれぞれ何を考え、どのように行動しているのか」、実態を把握していくことが大切かもしれませんね。
フォーラムの最後には、2年間の活動を下支えしていただいたトヨタ財団の国際助成のプログラムオフィサーである笹川さんより挨拶をいただきました。
Networking:交流会
フォーラムを終えたあとに、QUESTIONの1階で、交流会が行われました。本記事ではその様子は割愛しますが、ほとんどの本編参加者の方が最後まで残られ、新たな繋がりがあちこちで生まれる場となりました。
記事のおわりに
これで「気候変動と貧困の同時解決を図るPOWER TO CHANGE FORUM」の内容は以上です。台湾、タイ、日本との3か国共同で実施しているプログラムは、一旦幕を閉じますが、この2年間で、-+モデルを日本で普及していくためのたくさんの知見が集まり、実践していくためのつながりを構築できたのではないでしょうか。世界レベルのグローバルな問題をビジネスの領域から、システマチックに解決することを目指す、-+モデルを皆さんの活動の領域、組織でも一緒に実践してみませんか。
[注1] 気温上昇をCO2濃度がどの程度増加させるのかについては、様々な意見と見解があるようです。
全体の執筆者:
グローカル人材開発センター インターン生
大阪大学 大学院人間科学研究科 博士後期課程1年
高津 遥