【11/4開催】創造的に考えるワークショップ クリエイティ部Vol.3
こんにちは、グローカルセンターインターン生の高津です。
本記事では、11月4日(土)に、Students Labで開催した創造的に考えるワークショップ クリエイティ部Vol.3の様子をご紹介します。今回のワークショップの司会進行は、私(高津)が行いました。
創造的に考えるワークショップクリエイティ部は、参加者の皆さんと創造性とは何なのか、創造性を発揮するってどういうことなのかを問題解決の課題や、アクティビティを通して、「手を動かしながら、考え、学ぶ」というコンセプトのワークショップです。これまで、Vol.1, Vol.2を実施しました。その様子は下記からご覧いただけます。
ペアインタビューと他己紹介
まず初めにアイスブレイクとして、ペアインタビューと他己紹介を行いました。何度も参加してくれている人もいたので、ペアインタビューや他己紹介に「人材紹介」という意味を持たせ、いつもとはアレンジして行いました。
例えば、他己紹介をする人は、紹介される人のマネージャー役となり、その人が向いていると思う「仕事」の人材紹介を想定して、プレゼンするという内容です。また、その他己紹介に向けて、ペアインタビューは、ヒアリングを行う時間です。これは、演劇教育のアイスブレイク手法の1つである「1分ジャーマネ」※という方法を簡略化したものです。
※大学院の同期がアイスブレイク手法の研究をしていたので、それを参考にしました。
創造性テストをやってみよう
今回のアクティビティの1つ目は、創造性テストをやってみることです。創造性テストとは、文字通り、何らかの方法で自分の創造的な能力を測るテストです。そのテストを行う前に、まず「目に見えない人の特性や特徴を測る」ということ理解するために大事なキーワードである「構成概念」について説明しました。
人間の内面を理解したいなら構成概念を知ろう
心理学において、性格や気持ち、学力など、私たちの頭の中で構築された概念は、「構成概念」と言われています。構成概念の存在を想定することで、人間の何らかの行動の仕組みについて、あるいは、心理的な状態・メカニズムを説明することが可能になります。そして、これらを測定・評価するために、テストやアンケートなどを用います。当然、創造性も構成概念の1つです。
「測定する」と聞くと、体重や身長を思い浮かべる人も多いと思います。これらは実体があるものであり、専用の測定機器(体重計)を用いることで、物理的に測定が可能です。しかし、人間の内的な特徴・特性は多種多様であり、実体がある訳では無いため、簡単な測定機器はありません。今回は、そのことも踏まえながら、創造性とは何で、どうやったら測ることができるのか、その限界点なども含めて、体験してもらいました。
拡散的思考課題に挑戦
創造性テストとして用いたのは、拡散的思考課題の中でも、特に有名な「親指問題」です。5分間で、この課題について、できるだけ多くアイデアを考えてもらいました。
よく出てくるものとして以下のようなものが挙げられます。
これらのアイデアを流暢性、柔軟性、独自性の3つの指標で評価します。
流暢性は、どれくらいたくさんのアイデアを出せたかを評価する指標です。柔軟性は、類似しているアイデアを同一カテゴリーとして集計し直し、どれくらい色んなアイデアを出せたかを評価する指標です。例えば、「手話が増える」と「手による影絵の種類が増える」は、「手で何らかのメッセージを表現するバリエーションの増加」という同一カテゴリとして扱います。最後に、独自性は、参加者で生み出されたアイデアの中で、出現頻度が下位5%以内のもののみ集計するなどして、どれくらいユニークなアイデアを出せたかを評価する指標です。
実際に参加者の皆さんにアイデアを出してもらい、ペアになって、相互に採点してもらいました。
やってみてのふりかえり
自分のアイデアと他人のアイデアを見比べながら、創造性テストの結果について、以下の振り返りを行いました。
創造性をテストをやってみて、参加者の皆さんの中で、様々な気づきがあったようでした。なかでも「テーマによっては知識が必要になる」ことは、大事な視点だと思います。拡散的思考課題は、比較的日常のことをベースに誰もが考えやすいテーマで設定されていることが多いです。その分、知識量の差は薄れますが、現実社会では知識が必要な場合は多いため、そうした場面で発揮されるような創造性と乖離していないかという疑問が残ります。
AI vs 人間の創造性
創造性テスト(拡散的思考課題)は、今回紹介した「親指問題」だけではありません。そのほか、ハンガーやビニール袋などの日常的なものの普段とは異なった使い方を考える「Altanative Uses Test(代替え用途課題)」や、意味の異なる単語を多く考える「Divergent Association Task (発散関連タスク)」などがあります。
そして、最近、代替え用途課題において、生成系AIと人間のパフォーマンスを比較した研究が報告され、その内容を参加者の皆さんに共有しました。
その研究では、ペンや箱、ロープ、ローソクの異なった使用法を考える課題において、Chat GPT3.5や、Chat GPT4などの生成系AIと人間のパフォーマンスを比較しました。その結果、AIの独創性スコアの平均点が、人間の平均点を有意に上回った一方で、最高点は人間の方が高いことがわかりました。少し、難しい表現で書いていますが、誤解を恐れず簡潔に言うと、「創造性テストにおいて、優秀な人間(最大値)の能力は、依然としてAIには勝っているが、平均的な人間(平均値)の能力はAIに劣っている」ということです。
今後もAIはさらに発展していくと思いますので、今日、明日で結果は異なるかもしれません。こうした比較も踏まえながら、人間の創造性とは何であり、それは人間だけが持つ能力なのかと、創造性について理解を広げ、深めていく必要がありそうです。
創造的に問題を解決してみよう
創造的に問題を解決する「制作課題」に挑戦
アクティビティの2つ目は、創造的に問題を解決することに挑戦することです。創造性テストの振り返りでも少し触れられていたように、創造性を発揮するのは、仕事・研究などで、何らかの問題を解決することに迫られた時です。それを体感するために、ブレストカードで、チームでアイデアを出す練習を行った上で、創造的に問題を解決する「制作課題」に挑戦してもらいました。
「制作課題」では、以下にある創造的な問題のシナリオを提示し、紙や、付箋、ペンなどを使って、解決策のアイデアのプロトタイプを作ってもらいました。
解決策のプレゼンタイム
50分間の制作課題を経た上で、それぞれのチームで考えた解決策のアイデアをプレゼンし合いました。多くのチームは、「盲目の子どもが楽しく遊べるおもちゃ」という課題の特性から、視覚以外の感覚を使って、楽しめる新しいおもちゃを開発していました。また、その中には「盲目の子どもと盲目でない子どもが一緒に楽しく遊べるおもちゃ」を開発しているチームもありました。
プレゼンでは、偶然、Students Labにいらしていた、グローカルセンターのプロボノのみさみささんに、それぞれチームのプレゼンを聞き、評価・フィードバックをもらい、振り返りを行いました。
ワークショップ全体のふりかえり
ワークショップの最後に全体のふりかえりも兼ねて、チェックアウトを行いました。
記事の終わりに
これまでの創造的に考えるワークショップでは、創造性を発揮する何らかの活動に従事しながら、間接的に「創造性とは何か」を考えるスタイルで行ってきました。今回は、その活動を後半に行いましたが、前半では「創造性テスト」を体験してもらうことで、より直接的に「創造性とは何か」を考えました。
創造性という言葉は、現代の必須なスキルとして、近年、生み出された構成概念のような気がしますが、実は意外と長い研究の歴史がある概念です。そのため、様々な創造性テストが開発されています。さらに、2022年度のOECDのPISA調査(様々な国の15歳児を対象にした学力テストのようなもの)では、創造的思考が各国で測定され、これから、その評価結果が公開されていくと思います。したがって、これまでもこれからも注目される「創造性」は、結局、何なのか、これからのワークショップで、様々な創造性テストを体験し、みんなで議論し合うなかで、探究していけたらと思います。
執筆者:
グローカル人材開発センター インターン生
大阪大学 大学院人間科学研究科 博士後期課程1年
高津 遥
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