こんにちは。グローカルセンターインターン生のべるです🔔
2024年10月5日に、ラーニングイノベーションイノベーションプログラムの参加型ワークショップ③を実施しました。
このプログラムでは、高校生、大学生、社会人の垣根を超えた多様な背景を持つ参加者が、月1回程度×6ヵ月間のプログラムで相互に学び合い、共創・実践する機会を通して、「学ぶ力」、「学びをデザインする力」を身につけます。公益財団法人トヨタ財団2023年度イニシアティブプログラムから助成を受けて実施しています。
▼【参加型ワークショップ①】の様子はこちら▼
本プログラムでは、キックオフの後、ゲスト講師を交えた参加型ワークショップが3回続きます。今回は、その第3回目で、龍谷大学政策学部教授、政策学部長の村田和代先生をお招きしました。
村田先生のご専門は社会言語学(コミュニケーション研究)。ニュージーランド国立ヴィクトリア大学大学院の経験を経てコミュニケーションにおいて、「話す」ことに軸足が置かれることが多い中で、なんと「きく」ことに軸足を置いて様々なフィールドでのリサーチを重ね対話のご研究をされています。
〇チェックイン
今回は「コミュニケーション」がテーマという事もあり、チェックインで「自称、コミュニケーション能力100点中何点だと思っているか?」を共有しました。
〇「きく」を意識したワーク
▼ワーク
このワークでは参加者同士がペアになって10分間インタビューをしました。今回のインタビューのテーマは「ダイバーシティ(多様性)について」。聞き手が質問をし、話し手がテーマについて自由に話すという形でワークがスタート。そして、インタビューが終わった後、インタビュアー(聞き手)の「きき方」をペアで振り返りました。
グループ②の話し合いの中では、聞き手の人が質問をする前に話し手の情報を整理し、お互いの認識(前提)を確認しながらインタビューを進めていく「きき方」をしていました。参加者はこのワークを通して普段のコミュニケーションにおいて「自身はどのようなきき方をしているのだろう?」と振り返ることができる機会になっていました。
▼村田先生のお話
【コミュニケーションにおいて「きく」という事】
コミュニケーションはスピーチのような一方通行ではなく、キャッチボールのような感覚です。
ボールを投げた時に、うまく受け取ってもらえるのかも大切ですが、同様に、うまく受け取れるのかも重要です。
このように、コミュニケーションにおいて伝えると同じぐらい大事なのが「きく」という事です。
コミュニケーションをする際には3種類の「きく」という漢字で表すことができます。
コミュニケーションにおいて必要なのは「聴く」事も重要なのですが、「訊く」という事にも意識しておく必要があります。
【より良いコミュニケーションのために】
コミュニケーションが活性化されるために必要な要素として、相手へ「話に関心を持っていることを伝える」必要があります。その方法はさまざまあります。
人間には、他者に理解されたい、他者と距離を縮めたいという欲求に対して、他者に立ち入られたくない、他者と距離をおきたいという欲求の相反する欲求が存在しています。
この時、コミュニケーションにおいてより良い関係を構築するためには、聞き手が他者と距離を縮めたいという欲求を刺激できるような「相手を認める」「相手を近づけられる」ような言語行動が効果的です。
【コミュニケーションの機能】
コミュニケーションの機能には、「情報伝達に関わる機能」と「対人関係に関わる機能」があります。
コミュニケーションをしている際には「情報伝達に関わる機能」と「対人関係に関わる機能」を行き来します。
この二つの機能を行き来すること調整し、話し合いを円滑に進める存在がファシリテーターがしている事の一つです。
〇「話し合い」に注目したワーク
▼ワーク
このワークでは、話し合いをするグループと話し合いを観察するグループに分かれます。話し合いをするグループは提示されたテーマに対して全力で「話し合い」をし、一方の話し合いを観察する側は、その「話し合い」の内容を分析をしました。
参加者のうち、6人が話し合いをするグループとなり「話し合いに大切なことを3つ挙げる」をテーマに「話し合い」がスタート。
今回の話し合いは、話し合いに大切な事3つの内2つを挙げていた状態でタイムアップ。
その後、話し合いをした側と観察した側が混じったグループを構成し、今回の「話し合い」についての内容や分析についての振り返りを行いました。
インタビューでは「訊く」という事に意識を向けていましたが、今回の話し合いでは、訊くに加えて聴くという事についても深く考えることができるワークショップになっていました。また、振り返りのグループ②の話し合いにあったように、訊かれる側の存在も「より良い話し合い」のためには意識する必要があるのかもしれませんね。
▼村田先生のお話
【討論と対話】
コミュニケーションにおいて理想なのは、「対話」の形です。
話し合い・対話を通して、自分が変わっていけるそんな学習のことをワークショップ型学習や変容型学習といいます。
【話し合いの評価指標】
良い話し合いができていたのかを以下の6つの評価指標で判断することができます。
良い話し合いには、会議の結果だけではなく、プロセスも重要です。上記の評価指標以外にも、話し合いの後に、主観的な感情として満足・納得ができていたかなど話し合いのプロセスの中で得られる肯定的な感情が生まれていたのかも評価指標になります。
それぞれの会議などの話し合いが終わった後に、この6つの指標(加えて、それ以外にも必要だと考えられる指標)について振り返ることによって、良い話し合いができていたのかを確認することができます。
【話し合いの人数とファシリテーターのパワー】
話し合いの人数によって話し合いの内容(プロセス)が大きく変化します。
ファシリテーターのパワーは会議の中でとても大きく、基本的に参加者はファシリテーターの意見に集中してしまいます。
「6人以上での話し合い」では参加者の一人がそのファシリテーター(進行役)となりますが、この時、ファシリテーターの意見が強くなりすぎず、参加者全員が平等に話し合いに参加できるような環境づくりが必要になってきます。
本来、ファシリテーターという存在は、議論に対して中立的な立場で議論を進行しながら参加者から意見を引き出し、合意形成に向けて提案をまとめる調整役です。そのため、議論の中では第三者がファシリテーターをすることの方が多いです。
【話し合いの意義】
話し合いとは意見を述べる・人を説得することが目的ではなく、話し合いは「きき合い(聴く・訊く)」という目的・認識が一番近いと思います。そして、「きき合い」をするためには、安心して参加できるルール(セーフティ)が必要です。
このような話し合いの意義としては、情報の授受・合意形成だけではありません。コミュニケーションと同様に対人関係の構築も含まれます。話し合いを通して価値観の交換やメンバーシップの醸成なども含めた様々な学びを得ることができると考えています。
【話し合いにおける多様性の存在価値】
ある会社の話し合いにおいて、会社内の同じ立場(関係はすごく良好)の人たちだけで話た場合とその場に外部から大学生を招いた場を比較観察した実験があります。(どちらの話し合いでもファシリテーターは存在せず、同じアンケートを基にして話し合いがスタートする形です。)
このような変容が生まれたのは、自分とは異なる立場(多様な立場)の人が話し合いに加わることによって、「会社内の人たちだけの話し合い」では、主語が「私」だったのが、「会社の人+大学生の話し合い」では、主語が「○○会社の私」という意識に変化しました。
同質なメンバーよりも、異質な他者がいることによって、自身が求められる社会的な役割・立場を再認識することができます。異質な他者によって話し合いの変化やそこから得られる学びがあります。
このようなことからも、目的に応じて面白い結果・学びを引き出すには「多様性」という要素が必要なのではないでしょうか。
〇チェックアウト(振り返り)
今回のチェックアウトでは、今回の2つのワークと村田先生のお話を通して、普段の会議、家族との会話、自身が所属するコミュニティにおけるコミュニケーションを見つめ直し、気づいたこと・感じたことを共有しました。
▼参加者の感想 (高槻高校 松岡 宥李さん)
私はお話の初め、「コミュニケーションは相手がいてこそ」という言葉にハッとさせられました。当たり前のことですが、日常生活では話し手に意識が向きがちですし自分自身そう考えていました。
ですが、会話を続けるコツやポイントのほとんどが聞き手の行動だという部分にも、コミュニケーションにおいて聞き手が重要というのが表れており、改めて自分の会話のクセを見直し「きく」ことに重点を置くように意識しようと思いました。
また、多人数で話し合う際は話し合いの場の構築が肝心だということをお話として聞きつつ身を持って実感しました。普段の話し合いで建設的な議論をできた経験はなく、改めて話し合いの人数による違いやメンバーの違いによって変わる話し合いの形について知識をつけることができたので、ぜひ実践してみようと思います。
このお話の最後、「話し合いは聞き合い」という言葉がまさにここで学んだ全てを詰め合わせたワードだなと感じました。
〇終わりに
今回はコミュニケーションにおける「きく(聴く・訊く)」に特に重きを置いたワークショップでした。普段の生活の中におけるコミュニケーションの「きく」態度・習慣が、実際に自身が「学ぶ場」を作る際のコミュニケーションの質に直接影響するのではないでしょうか。
また、多様性・多様な価値観に触れておく、考えておくことによって、実際に自身と異なる立場の人と出会ったとき、対人関係が良くなるようなコミュニケーションを実現できるようになるのではないでしょうか。
このラーニングイノベーションイノベーションプログラムは「学び」そして「学ぶ場」について学ぶプログラムです。
今回まで3回続いたゲスト講師を交えた参加型ワークショップ。1回目は「プレイフルな場」を学び、2回目は「答えのない問い」について学びました。そして今回は、コミュニケーションにおける「きく・多様性」を学びました。
これから、このワークショップを受けた参加者はどのような思いを持ち、「学びの場」を作り上げていくのでしょうか。
次回のラーニングイノベーションイノベーションプログラムは、「学びの場」を作るための「チーム形成」をします。
参加者同士で、どのような化学反応が起こるのかが楽しみです!
執筆者
グローカルセンターインターン生
鈴木優太