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【10/12(木)開催】気候変動と貧困の同時解決を図るPOWER TO CHANGE FORUM(前編)

 こんにちは、グローカルエンドレスインターン生の高津です。
 2021年秋よりスタートした台湾、タイ、日本との3カ国共同で実施しているプロジェクト、気候変動と貧困問題の同時解決システム構築のため、台湾の“-+モデル”をタイと日本でノウハウ移転を行い各国での展開を図る(トヨタ財団国際助成)の2年間の集大成としてのフォーラムを実施しました。

本記事では、そのフォーラムの前半の様子をご紹介します。


Opening(開会スピーチ)

 まずはじめに、本プロジェクトの代表者の行元沙弥さん(グローカルセンター代表)からの開会の挨拶と、コミュニティ・バンク京信の理事の廣瀬朱実さんからのWelcome speech が行われました。

行元 沙弥(プロジェクト代表)さんの開会の挨拶
 皆さんこんにちは。今日は、はるばる来てくださり、ありがとうございます。グローカルセンター代表の行元です。私たちは、これまでのJourneyに皆さんを招待できるこの日を楽しみにしていました。
 ここに台湾からコーレイと、タイからサクが来ていますが、なぜこのプロジェクトが始まったのかお話させてください。2019年、私はブラジルでのinternational conferenceに参加しました。そこではじめてB-corpについて知り「ASIAのリーダーは誰か?」と尋ねました。そこでコーレイの名前を聞き、翌月、台湾に行きました。連続起業家でありながら社会的ムーブメントを起こしている背景や原点を初対面の私に話してくれました。そして、コーレイが、タイで同じように政府や企業を巻き込み社会を良くするエコシステムを創っているサクを仲間として紹介してくれました。こうした出会いから始まり、意気投合するのに時間はかからず「行き来ができないコロナ禍だからこそ、今協働しよう」と2020年各国の学生と共に挑戦が始まりました。ここで伝えたいことは “Make change by making friends” (変化は、友だちをつくって起こそう!)ということです。変化はいつも、身近な人との会話や影響から。今日、初めてお会いする人もいるかと思いますが、ぜひ、新たな冒険が一緒にできれば思います。
 トヨタ財団には、プロジェクトを通じて機会をいただき、本当に感謝しています。気候変動と貧困問題を同時に解決することを目指す-+モデルは、世界で類を見ないシステミックチェンジを睨むアプローチです。コーレイの生粋の起業家精神はもちろん、このモデルの美しさに心を動かされました。そして、私は気候変動と貧困問題にやっと真正面から勇気を持って向き合えることとなりました。
 気候変動と貧困問題はとても大きな問題です、だからこそ、1人ではなくチームが必要です。そして、大きな問題に向き合うと自分の力が非力に思えることもあります。人間なのでこうした感情は自然です。その時、「やめるべき?」「いや、どうやったらできるだろう?」と、自分自身に"何を問いかけるか"が重要です。
 今日の前半のセッションでは、-+モデルについて理解、3カ国の学び合いの共有、後半のセッションは、辿り着いたモデルをみなさんに体験いただき考えを深められたらと思います。1人1人のアクションが希望となり未来に繋がると信じて。これこそがHow of Hopeのタイトルに込めた想いです。今日のセッションやワークショップを楽しんでもらえたらと思います。本当にありがとうございます。

コミュニティ・バンク京信 理事 廣瀬朱実さんのWelcome speech
 皆さん、こんにちは。私はコミュニティバンク京信の廣瀬朱実です。
今日はここQUESTIONへようこそお越しくださいました。京都信用金庫、コミュニティバンク京信は、先日100周年を迎えました。この新しい時代、次の100年に向けて何をやっていくべきかというところで、コミュニティ・バンク京信という理念を名前に込めて、新しく出発いたしました。
 信用金庫は短期的な利益を追求するのではなく、中長期的、長い期間で見て、地域の方々が豊かに、そして幸せに暮らしていけるようにという思いをもって活動しています。また、様々な地域の課題を解決していくために活動しています。そういった課題、QUESTION=問いを少しでも解決するために、このQUESTIONという場所でたくさんの意見を聞きながら解決していく場所を作りたいという事で、約3年前にグローカルセンターはじめ、地域の方々と一緒にこの場所を運営することになりました。
 今日、本当にたくさんの人に来ていただいて、地域、京都を超えて、アジアの課題を解決していくという事ができるのは、このQUESTIONにとって素晴らしい事だと思っています。皆さんが2年間をかけて出てきた、たくさんの問いが、このフォーラムで未来に向けて発信されてそれがつながっていく場にいられて嬉しく思っています。今日はお越しいただきありがとうございます。

Introduction of Power to Change & Minus Plus(マイナス・プラスモデルとは?)

 このプロジェクトは、コロナ禍であった2021年11月からトヨタ財団の国際助成で採択され、始まりました。その主軸は、-+モデルを日本やタイにどのようにしたら広められるのかを探ることでした。こうしたモデルを考えたのが、DOMI & Co-Chairman of the Asia-Pacific B Corp Association CEOであるCorey Lien(以下、Corey)です。そして、彼がこのモデルを考えた背景について説明が行われました。

Coreyより
 
心が響きあう仲間と共に、学校、企業、行政全員が協働できるエコシステムをASIAを超えて創りたいという強い想いでこの活動をスタートさせました。約10年前から、Bcorp ASIAの立ち上げにも邁進しています。
 私自身、25歳に最初の企業を立ち上げ、その後複数の会社のIPOを行いビジネスパーソンとして活躍していた頃、環境や社会のことは、政府や学校の仕事だと思っていました。2人目の子どもが生まれた時、はじめて気候変動の問題と真剣に向き合い始めました。
 44%の炭素排出量はアジアが占めています。41%の超貧困もアジアで起こっています。こうした現実に「彼女たちに未来住むべき場所があるだろうか、自分は何もできない」と、危機感を覚え、愕然としました。ビジネスをしているときの自分はパワフルに感じていたのに、社会や環境と直面したとたんに自分を非力で、ちっぽけに感じたのです。
 では、得意なビジネスの領域で、環境や社会のことをやればいいじゃないかと。「ビジネスの力を使って、社会をよりよくできたら?」という問いを真剣に考え抜き、このモデル(マイナスプラスモデル)に辿り着きました。
 台湾の事例では、企業が、ペーパレスなどに取り組みCO2/環境負荷を下げ、コストカットも行います。これがマイナスパートです。(-)その余剰利益を、収入の1/6が電気代を占める家庭へLEDライトを供給し循環させていくプラスパートにつなげていく(+)という取り組みです。これを単なるコピーではなく、タイ・日本2か国に適応させた形で展開していくという試みがこのプロジェクトの全貌です。

 このモデルを実装する絶好の機会であることの1つ目は、世界最大の投資機関であるブラックロックの号令で、世界中の株主は、ESG/Sustainabilityに対して企業にアクション・変化を起こしてほしいと要求しています。皆さんのボスのボスのボスは、社会に良い変化を起こせと言われているのです。

 2つ目は、スコープ3(とりわけ、企業と顧客の間のコミュニケーションや行動変容のトラッキング)は最も難しい問題と言われています。そのアプローチシステムは、これまで存在しませんでした。まさに、マイナスプラスモデルは、この問題への解の1つのアプローチなのです。単なるエミッションだけではなく気候変動以外の問題も解決しながら、企業が顧客と共に社会課題へのアプローチをダイナミックに図ることを可能にします。これまでのCSRの概念をトランスフォームさせる世界で初めてのモデルなのです。CSRは企業単体の取り組みですが、スコープ3に着目するには、顧客をパートナーとして見据えて、共に歩むことが必須なのです。すべての企業がスコープ3に取り組むことを課されている今、顧客とは、単に製品の売買ではなく、環境、社会、家庭を共に救っていくという命題を持つ関係です。

 3つ目は、限られた予算の中でこうしたことを実現する時にこのモデルを活用すると、顧客や従業員が自分で考えながらコストカットした余剰金をコミュニティの支援に使うことができるという点です。そうしてコレクティブアクションが起こせます。これがpower to Changeムーブメントです。みんなで一緒にできることを考えて、それをコミュニティの支援に使う循環のデザインを可能にします。
 世界中で同じ目的を掲げる企業が手を取り合い、マイナスプラスモデルを通じて共に顧客との協働を実現できるのです。

Learning from Cross Country corporation engagment(パネルディスカッション)

フォーラムの前半のメインは、台湾、タイ、日本の3カ国のプロジェクトリーダー、Corey Lienさん(以下、Corey)、Sakulthip Kiratiphantawongさん(以下、Saku)、そして、行元沙弥さん(以下、サヤ)によるパネルディスカッションです。

プロジェクトリーダー

パネルセッション:3カ国での学びと企業へのアプローチ

Corey:世界を見据えてまずはASIAこの3カ国で学びの旅をはじめましたね。各国での視察では、行政、企業、学校、地域への訪問など調査を通じ、様々な関係者の協力を得て、新たなモデルを創り出しました。まずは、サヤ、日本チームにおける活動でこれまでのことを振り返ってくれますか。

サヤ:台湾で6年かけて構築されたモデル。私はこのモデルのコンセプトに感銘を受けました。この機会を通じ勇敢な学生たちと共にやっと実装の機会の入り口に立ちました。日本での第一歩目は「日本における貧困とは?」という問いを掲げ学生とのリサーチから始まりました。相対的貧困、ホームレス支援・孤立の問題、移民問題に関わられる方へのインタビュー、引きこもり、日本の学生の実態を目の当たりにしました。私たちの想像をはるかに超え、様々な要因を包含する複雑な問題だということに気が付きました。そして、貧困は目に見えません。はじめ、-+モデルのプラスは、若者の貧困にしようとシンプルに考えていましたが、そう簡単ではありませんでした。そのため、1年目は本当に苦闘しながらも、現実は複雑だという当たり前のことをマイナスパートの調査でも突き付けられました。
 台湾、タイへのリサーチを通じ、自社の環境負荷を下げる取り組みを社会課題に結び付けて行う数々の企業のアクションを目の当たりにし、これは「日本も可能性がある!」と、ポテンシャルを感じました。特に、日本の強みとしては、システミックに整理するというスキルセットを持っているので、その意味で「より良い-+モデルをデザインできるのでは?」と感じました。今日の日本は、この強みを生かして、整理しすぎてしまい分断やセクショナリズムが生じています。強みと弱みは表裏一体で、これが3か国での学び合いを通じての気づき、盲点(Blind Spot)でした。

Saku:今日は招待いただきありがとうございます。これまで不可能だったことが、トヨタ財団のお陰で可能になりました。大きな感謝を申し上げます。サヤが最初に言いましたが、自分が何もできないと感じてしまった時、私自身の問いは、“It got to be the way that can be made happen in Thailand”(「それがタイで実現する方法でなければならない」)ということでした。正しい問いを持ち、正しい人々と歩み、一緒に考え始める。それが正しい解に辿り着くと信じています。私も最初は、この分野にまずは心を寄せ関心を持つことからはじめ、今は手探りで企業と共に実装し前進しています。これが2年間の経験で学んだ1つ目の大事なことです。
 活動を通じて沢山の会社にあってきました。若い人を集め、チームを集め。高い目標を掲げて、KPIや数値をあげて素晴らしい活動をしています。けれどみんな心の奥底では「これで本当に十分だろうか?」と想いを巡らせています。アクションすると、まだまだソリューションまでに到達するまでの道のりや次の山が見えてくるためです。カスタマーと話したり、業界と話したりしても問題がある。そうした中で、日本でサヤが話した盲点(ブラインドスポット)が見つかったみたいに、私たちもたくさんのブラインドスポットを見つけました。

Corey:このジャーニーの中での学びは、ゼロから何かを生み出すのではないということです。ゼロイチの取り組みは実現できると信じていないから、顧客は「No」と言います。新しい企業と話し合いを始める時には、「信じられない」といわれます。だからこそモデルを説明するには、彼らが持っているリソースで取り組みを始めることができるということを伝える必要があるのです。また、何かを生み出す時にパッションなどだけではなく、ロジカルに頭でもコンセプトを理解してもらうことが重要であることを学びました。

Sakuが話したように、トップクラスでサスティナビリティに取り組む企業は「私たちの取り組みは十分か?」と問いかけている。(ティムクックが"Are we doing enough?"とナーバスになっているAppleの動画にも言及)社会環境の問題は、1つの企業が立ち向かうにはあまりに大きい。だからこそ、コラボレーションの必要性を心から感じています。日本からの学びは、細部まで観察しシステムに繋ぎ落とし込んでいく能力、それは本当に自分の国に必要なものだと思います。

ここでビデオを見てもらいましょう。

パネルセッション:これからを担う若者の希望

Corey:皆さんにここで紹介したいのは、若者です。ミステリアスな生き物、若者。この2年の活動で17カ国の若者が参画してきました。異なる背景・文化を持っている人々が集合しました。社会の課題は、彼らの日常にとって身近な問題なのです。彼ら彼女たちとの協働のためのスペースを創る意義と重要性についてまずはサヤにパスします。

サヤ:グローカルとしても、10年間若者と歩んできました。社会の問題に、国境はありません。そして若者の感性も社会に対して限りなくボーダー(境目)はありません。彼ら彼女たちの態度にはいつも驚き、感動させられます。次の世界を作っていく人が、若い世代なのです。ここまでの議論で言及されてきた「取り組みが十分かどうか」のインディケーターになるのは若者自身ではないでしょうか。後半のワークショップは学生が主導します。未来の社会を議論する時に、主役である学生と共に歩むことが新たなスタンダードになります。

Saku:サヤの強味は、若者を巻き込むこと。会社と若者の関わりの観点では、社会問題と社会的価値の向上に取り組みながらビジネスをしていくことが大切です。その条件が満たされていないと、若い才能を失うことにもなります。会社は利益や売り上げは必要ですが、若い世代は自分の会社に価値がある、意味がある、自分のやっていることに価値があると思えば、エネルギーを割くことはいとわないです。では会社はどのようにして、どんなプロセスを挙げればいいのか。ここQUESTIONでは、Businessとソーシャル、若者と一緒に解を見つけていくことが日常になっています。台湾のObankも、若者に機会を提供しています。この他にも、企業と若者が協働している事例を数多く見てきました。社会的な貢献を示していくために、このようなモデルを組み込んでみることもできる。ソーシャルイントレプレナー(社会的な社内起業家)をつくっていくことが大切なのではないでしょうか。

Corey:私は以前から、インターン生を募集するプログラムなどをしてきました。今回のプロジェクトで、若者との関り方が大きく変わりました。学生を一緒に問題を解決する仲間として見るようになったのです。この対等性が重要で、景色が変わりました。今はパートナーシップのような関係性のもと、同じ悩みを共有し、新しいアイデアによって変革が生まれています。彼らを未来と捉えると、未来に、顔があって形がある。声を聴くことで必要なアイデアがもっと早く実装されます。箱を用意してインターン生に指示を与えて、これこれをやりなさいというだけでなく、1人の人間として、対等に見ていくということが大切です。

パネルディスカッションのまとめ

Corey:1つ目は、「マイナスプラス」の概念を覚えていて欲しいよいうことです。お金を生み出しながら、ソーシャルインパクトを共に起こせる。これら2つは過去には、別々のものとすべきとされていたけれどそうではありません。誰も昔は教えてくれませんでしたが、今多くの企業や顧客が、若者と共に行動を起こしています。

2つ目に、自分自身のモデルを考えてください。自分の会社ならよく知っているはず。なにがトリガーになりうるでしょうか?マイナスをデザインし顧客と共に、何に取り組むとインパクトを最大化できますか?

3つ目に、互いに共鳴し合える人を見つけ、学びをシェアして、新しいアイデアを築き上げてください。トヨタ財団のお陰で、そうした繋がりのチャンスをもらうことができました。そして現在ではカナダ、パラグアイの計5ヵ国に広がっています。

 ここからは若者がどうやってそれを可能にするのかのモデルを体感いただくワークショップに招待します。

オンラインからもご参加いただきありがとうございます♪
Yumi Tonosaki✍

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前編記事はここまでとさせていただきます。続いて、やすくんとみずきくんのワークショップです。後編もぜひご覧ください!

執筆者:
グローカル人材開発センター エンドレスインターン生
大阪大学 大学院人間科学研究科 博士後期課程1年
高津 遥

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