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イベントレポートNo.13「企業変革のための社内起業の考え方・動き方・通し方」

11月26日(火)に株式会社インキュベータ代表取締役の石川明さんにお越しいただき、変革クラブ11月全体会を開催しました。

石川さんは、1,700案件以上の社内起業立案に伴走された経験を持つ、社内起業のエキスパート。起案者支援の立ち位置からボトムアップによる新規事業の創出を支援されています。リクルート時代に7年間、社内起業提案制度「New-RING」の事務局長を務められたほか、オールアバウト社を創業して上場を経験されています。

半数近くが新規事業経験のある濃い参加者を前に、「企業変革のための社内起業の考え方・動き方・通し方」について目から鱗の講演をいただきました!
それでは会の様子をレポートしていきます。

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冒頭、「この3年で企業の中心課題が新規事業の創出になってきた」という石川さん。そのためにM&Aが増えているものの、事業創出経験の無い社員はM&Aをした企業を育てることができません。その観点でも大事なのが自社で新規事業を生み出すことですが、多くの企業が苦戦しています。それはなぜか。

石川さんは、「真面目でちゃんとした会社」ほど新規事業は上手くいかないと言います。なぜなら、既存事業を最大限効率的に運用することに最適化された筋肉質な会社だから。たとえば投資対効果は既存事業に投資した方が高くなります。敢えて余計なことや変えることに取り組まないと新規事業は生まれません。

ここで、石川さんから参加者に配られたのが、「組織の新規事業創出力チェックリスト」。25項目を0~4点で自己採点していきます。採点後は、①新規事業経験あり、②新規事業に取り組む予定あり、③その他、の3つに分かれて、お互いの結果や自社の取り組みを共有したりしました。
印象的だったのは、グローバルで時価総額上位に入る企業の取り組み。新規事業として真新しいものを追いかけるのではなく、ちょっとした変化を推奨しているそう。行動規範にも「決める前は立場に関係なく反対意見を歓迎して全員で議論するが、決まったら全員で全力で取り組む」というものが入っているそうです。自社でも今すぐに取り入れたい考え方ですが、組織全体に浸透していることが競争優位になっているのだろうと思います。

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石川さんの講演に戻って、「リーダー人材たる皆さんには、社内起業を成功させ、企業変革の牽引車になっていただきたい!」という力強いメッセージ。社内起業に向いたリーダー人材のお話の次に、「3つの輪」のお話をいただきました。

「3つの輪」とは、個人のキャリアを考える「Want」「Can」「Need」の3つの輪。この重なりを大きくすることが大事で、特に新規事業では「Want」を最も大事にしてほしいと言います。多くの場合、その事業が行われていないのにはしかるべき理由があります。だからこそ、合理性の壁を打ち破る非合理な糸口が個人の「Want」にあるとのこと。

社内起業の大きなヒントになりそうなのが、検討範囲の責任者(できれば社長)とフェアウェイ、OBゾーン、制約条件をすり合わせることです。
社長すら答えを持っていないこれらの認識を合わせるために、アンゾフのマトリクスを9象限にするTipsをご紹介。顧客、製品について、どこからが既存からの浸み出しか、さらにどこからが跳び出しか、人によってその定義は異なります。そこで試し打ちをしながら相手がどのゾーンを期待しているかを把握し、何が「既存・浸み出し・跳び出し」を分かつ線か、をすり合わせることができれば、議論が噛み合うそうです。今すぐにでも活用したいですね。

そして、石川さんの真骨頂、「不」の4教科のお話へ。事業とは、「不」を解消すること。ここで「不」とは、不平、不満、不便、不利、不都合、不幸といったものの総称です。「不」をしっかり掘り下げるために、4つの手順が大事だそうです。それが、①国語、②算数、③理科、④社会。思わずエッとなりそうですが、順を追ってご説明します。

①国語
誰が、いつ、どこで、どんな「不」を感じているのか、リアルな人の顔が思い浮かぶように文章で書くこと。ここが曖昧だと芯を外した事業提案になってしまいます。石川さんが社内起業に伴走する時にはこの国語に一番時間をかけるとのこと。半年で役員プレゼンする場合、1カ月半は国語に向き合うそうです。

②算数
続いて、国語をした「不」を俯瞰したときにどれくらい大きい「不」かを測ります。「不」の大きさは、対象の多さ×頻度×深刻さで定量化。NTTドコモのAIタクシーの例を使って、大事なポイントを解説いただきました。
AIタクシーは、タクシー会社向けのサービス。タクシーの配車需要をAIが各種データから予測し、タクシードライバーの手元のナビのような端末に表示します。このサービスが解決する「不」はどうやって計算するのが良いでしょうか。
全国のタクシーの台数?それも大事ですが、たとえばタクシードライバーの新人とベテランの稼働率の違いに注目してみる。こうすることで、全国のタクシーの台数よりも、新人のドライバーが運転する台数に意味があると気付きます。なるほど!

③理科
次に、なぜその「不」が生じているか、ロジカルに分析します。グロービスでも学ぶクリティカル・シンキングの出番です。

④社会
最後に、「不」がなぜ解消されていないかを検証します。「不」は他のだれかも気づいているもの。PEST分析や競合製品、代替品などの視点が重要だそうです。

詳細は、石川さんの著書『はじめての社内起業』『新規事業ワークブック』をご参照ください。

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講演の最後は、グロービスでMBAを学ぶ/学んだ学生に向けてのメッセージ。
社内起業はMBAの学びの最高の実践の場だと石川さんは言います。事業全体を俯瞰的に見ることができ、ビジネスのシビアさを知ることができる。まさに経営者感覚を身に付ける機会となります。さらに、社内でその分野のNo.1になれることで、さまざまなチャンスが訪れることをご自身の具体的な経験も交えて教えていただきました。

一方で、MBAを学んでいるからこその留意点も。論理的、合理的といった思考が社内起業ではマイナスに働くこともあります。世の中は理屈どおりにはいきません。それを乗り越えるのは非合理な情熱であり、自分が情熱を傾けられるものに向き合うことが何より大事なんでしょうね。

講演後はたくさんの質問に具体的に回答いただきました。
各参加者の具体的な課題に対するアドバイスを元に、いろんな会社・職場で社内起業が生まれる期待感に包まれるなか、集合写真を撮りました。(変革の炎、通称メラメラポーズ)

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オンラインからも多数参加!

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最後に、私澁谷が石川さんに無理を言ってお越しいただいた背景について少し書きたいと思います。

志の実現手段には起業や転職もあると思いますが、個人的には今まで蓄積したアセット(会社としてのもの、信頼関係など個人としてのもの)を活かした社内起業にそれ以上の可能性を感じています。過去には7年間、大企業の事業立ち上げに携わっていました。
一方で、会社の中で事業創出の経験がある社員は一般的に少なく、「こんな社内起業は失敗する」という落とし穴に次から次へと落ちるシーンも目の当たりにしてきました。落とし穴に落ちないためには、その存在に気付くことが重要です。
社内起業について膨大な経験をお持ちの石川さんから、そのノウハウを少しでも伝授いただくことで、いろんな企業で社内起業への挑戦が増えて、個人の志を実現するきっかけになればと思い、今回の全体会を企画しました。1人でも多くの方にとって、心に火を付ける機会になっていたら嬉しいです!

次回12月全体会は、12月13日(金)19時から、アイティメディア株式会社人事部長の三小田実さん(グロービス2015期)をお招きして、『リクルート流「社員がイキイキ働き成長する仕組」の作り方~組織変革とパワー獲得の定石』についてお話を伺います。皆さまお楽しみに!

レポーター:グロービス変革クラブ幹事 澁谷直幸(2018期)

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