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Twitterでは言えない、フリーランスで行くな、について

以前からフォロー頂いてる方は分かってるかもしれませんが私は結構辛口です。ガセネタや印象論、感情論は苦手です。というか嫌悪しています。
フォローしてる方、相互フォローしてる方という社会が出来てしまうと、なかなか言えない事も増えて何のために発信してるんだ?とジレンマを抱く事も多々あります。
と前提が長くなりましたが、司会者の島田紳助さんがM-1を作って10年という区切りをつけたのはダラダラと業界に居続けさせないため、と聞いた事がありますが既にフリーランスになった若い人たちを見るとどうなんだろ?って思う事が本当多いのです。

表題のフリーランスで行くな!はTLを見ていて根拠のないポジティブな方が多いな~という印象とフリーランスを勧める実績が乏しい自称ノマドのイラストレーター氏の意見に辟易する事も多々ありました。
私自身も誰もが知ってる巨大なクライアントを得た時、年収が4桁を軽く越えた時等に楽天的になった事もありましたが、根本は「いつまでも続くはずがない」でした。
島田紳助さんが最盛期の頃でも6割の自信と4割の不安と仰っていて、神経性の腹痛に苦しんでいる事を聞いて納得がいきました。
知り合いが何人もフリーランスの道を選びましたが多くが失敗しています。その理由と私なりの対処法を書いていきたいと思います。

愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ

という言葉があります。
フリーランスってのは個の戦いです。会社はいわば軍隊です。
歴史を紐解けば戦国時代にすら「やーやー我こそは!三河の武士~~だ!」なんて個の戦はしていませんでした。一説によると鎌倉時代まではあったようですが、平安末期に源義経は一の谷の戦いで平家に奇襲をかけて勝利をしています。
奇襲というのは相手の意表をつくことで「正々堂々」とした戦いではなかった事を意味します。
個人の武では戦いにならないので軍を作り、軍を動かすには戦略を練る。これが戦争です。
私たちが行ってるビジネスも経済戦争、他との競争です。兵器の代わりに知恵でありスキルであり営業力で戦っています。
本来は軍(会社・チーム)を作り圧倒的な戦力で他を蹴散らすというのが有利な戦いのはずです。
にも関わらず組織を離れ独立してフリーランスという個対軍の戦いに挑む。イラストレーターさんの多くはフリーランスとして活動していますが、デザイナーは大企業から中小零細まで多くの企業デザイナーが存在します。我ながらフリーランスを2回も選択する正気の沙汰とは思えません笑
なぜそもそもが不利な戦いを挑むのか?
これが失敗する理由その①です。

フリーランスの不利な点を上げればキリがありません

・個人の能力に依存する
・成長が鈍化する
・病気をしたら行き詰まる
・経営規模が小さい
・法人でないだけで取引が出来ないケースがある
・税制が不利
・健康保険(税)が高い
・保育園、学童保育で不利
・無限責任
・人を育てないのでマネージメント能力が育たない
・唯我独尊になりやすい
・自己管理が出来ないと成り立たない
・社会的信用度が低くローンや住宅審査が厳しい
・技術へのキャッチアップが遅くなる
・源泉徴収されて資金繰りが大変
・休みがクライアントの電話一本で消える
・飲み会やデートの約束を何度もドタキャン
・気が休まる時間がない
・評価される事は圧倒的に減る
・仕事がうまく行っても蚊帳の外感がある
・結婚で相手のご両親の理解を得にくい

ディレクションをしてると外部デザイナーさん、イラストレーターさん、印刷会社さんへの支払いがあるんで売り上げがでかくなったりします。
100万円を超えると源泉徴収が20%になり資金繰りが本当シビアだったりします。

逆にフリーランスの良い点は

・能力次第で収入アップ、これが8割?
・子育ての時間が作れる
・人間関係で悩む事が減る
・自己投資が大きくできる
・自分で仕事を選ぶことができる
・リモートで仕事ができるなら住む場所を選ばない
・平日の安い時に旅行
↑なんてことは滅多にできません。年間の仕事が決まってる人はあるかも。

私がフリーランスを選んだ理由

30歳でデザイナーから管理職、経営企画的な仕事をやれとなったこともあります。当時の勤務先はグループ総勢2000人の大企業でした。
バックオフィスだったデザイン部門を独り立ちさせるための施策を考えたり、グループ会社内に印刷会社の立ち上げたりでデザイン実務から離れていき、デザイナーを辞めますか?会社を辞めますか?状態です。
さらに、忙しすぎて当時の嫁が精神的に参ってしまったこと、元直属の上司の自殺でサラリーマンが嫌になったことです。
朝7時前に出社、帰宅は23時。当時の嫁さんは毎日毎日残業はあっても概ね8時に家を出て6時に帰ってくる生活です。別の機会に譲りますが時間時間で区切られた仕事をしてる人との価値観等はなかなか相容れないものがあります。
そして私自身で言えば30歳で一通り仕事ができて脂が乗ってくる年齢です。デザインが面白くて面白くて仕方ありませんでした。
今考えると経営企画の仕事は面白く、適正としてはそちらが合っていたような気もしますが、その後倒産し人員は半分になってしまったので居場所があったかどうかは今となっては分からないので、あの時のジャッジは正解という事にしています。

儲かってなさそうな個人商店が続く理由

フリーランスではなく自営業前提で見てみると面白い事が色々と分かります。

どこの町にもある人が入って無さそうなのに続いてるお店って多いですよね。これは続けられる理由があるんです。
そんな店でもかつては、町の必要な店として繁盛していました。時代が変わり他に競合店が出来て寂れてはいても。その時代または、それ以前に店舗兼住宅の不動産を所有できたので固定費が光熱費だけになっていて趣味的にお店を続けられるのです。
例えば光熱費が3万円としましょう。
税金とかはおいといて、光熱費が3万円を稼ぐためには粗利30%ならば10万円の売り上げを立てればいいだけです。
生物だと仕入れを腐らせるので駄目ですが、タバコ屋酒屋等は十分成り立ちます。20万売れれば6万円の利益で留守番がてら3万円の営業利益=お小遣いが手に入るわけです。1000円カットがあちこちに見られる中、3500円とか取る床屋さんが生き残ってる理由もこれだと思います。稼働は低いけど毎日たった一人髪を切れば10万円の売上にはなりますから。


逆に武蔵小杉や吉祥寺のような新興の町では賃貸の個人商店は家賃の高騰で淘汰されてきています。それだけ家賃負担は大きいのです。
自宅を仕事場とするフリーランスも多いですが事務所を持つと固定費が馬鹿になりません。金勘定にシビアでないとフリーランスは続けられないと思うのですが売上や見積もりはシビアにみても支出に目にいかない人は多いように思います。
初期に固定費をかけてしまう、失敗する理由その②です


次に仕事がない=休みだとなってしまうケース。
徹夜で入稿した~ちょっと休んだら遊びに行こう。これ平日にやられる方結構多いのです。失敗する理由その③です。
でもお店を放置して遊びに行ってる間に仕事の連絡が来て連絡つかないとお客さんは違う所にオファーを出します。
メールの転送や携帯電話を教えていても固定電話を使う方も多いですから。
メールにしても数時間反応ないと諦める方も多いです。
私たちがコンビニを必要とするのは何時でも使えて品揃えが良いからでしょう。連絡が取りにくいフリーランスは淘汰されていきます。
同じく頻繁にお酒を飲みに行って夜連絡が取りにくいケースも同じです。発注者は早く次の段取りを取りたい。法人であれば必ず誰かが連絡を受けてくれて一旦は保留されますが、個人だと発注側はずっとモヤモヤしてないといけません。その間一つの仕事は完全にストップしてしまいます。
確かにフリーランスは孤独との戦いという人も多いですし、酒好きな人が飲みに行きたい気持ちも分かります。なので強固な信頼関係を結んでいる顧客が少ない時は家に籠もる位の方がうまくいくのではないかと思うのです。

多くのフリーランスが失敗する最大の理由

芸人ビートたけしさんは多くの人が知っていると思います。
氏がテレビでデビューした時代は今のダウンタウンさん以上に人気があったと言っても多くの人は信じられないかも知れません。笑っていいともの前番組で「笑ってる場合ですよ」というのがありましたが、当時中学生にも大人気で給食を食べて学校から近いやつの家で皆で見る位人気がありました。
その後紆余曲折はあったものの、俳優、映画監督、作家という新たな顔を作って今でも芸人としても露出をしています。
多くの芸能人はデビューした当時とは違うスキルを身に着けて飽きられないようにバージョンアップをしているのです。広げるだけではなく深みも身に着ければ正に無双状態です。
ベビーメーカーに在籍した時に驚いたのが人気商品をそのままにせず、僅かなバージョンアップを繰り返していました。実は長年売ってるものには、より良くするために細かなマイナーチェンジをしてる物はとても多いのです。

フリーランスで失敗する例はマイナーチェンジ出来ていない、レベルアップ出来ていない。これにつきます。つまり、失敗する理由その④です。

組織にいると半期、一年ごとに評価されます。隣にいる同僚=ライバルがいます。競争原理もあって、実は成長しやすい環境は圧倒的に組織なのです。そのスキームも一定規模の会社ならあります。
お客さんは慣れた味を求めても、僅かな変化は欲しがるものです。同じレベルの物を作っていても周囲がレベルアップすれば相対的にレベルダウンしてる事になりますから。
自分にレベルアップを課し続ける、仕事は来てもイコール評価ではないですから誰からも認められる事なく、褒められる事なく自分を管理しなきゃいけないのです。これ相当しんどいと思います。
例えば年収2000万もあれば手元資金は結構残ります。
組織にいると上司がいると乾いた雑巾を絞るように成長を促されますが自分で成長を課すって経済的に安定してると難しいのです。


フリーランスで行くな!の主旨と社会的背景

フリーランスの仕事の本質は社会の人材の調整弁です。
ピンと来ない人もいるかも知れませんが、人材派遣も同じです。
企業は儲かるならば組織内に抱えるでしょう。高度成長期なら良いのですが、安定期、低成長期、衰退期は人を抱えるのは難しく、故にフリーランスや人材派遣を利用します。
去年の吉本興業の騒動で驚いた人もいるでしょうが私も6000人芸人さんがいる事に驚きました。芸人さんはマネージメント委託でフリーランスの立場だから6000人も抱える事ができるってことなんです。

アメリカのように生涯20回近くも転職するのが当たり前の社会では違いますが日本の転職率は低く解雇条件が厳しいと雇用を維持するのが難しいという理由からです。橋本龍太郎政権下の規制緩和でデザイン職も派遣可能な業務になりました。私がフリーランスになったのは1998年と2年後でしたが、次第に一般事業会社にインハウスデザイナーが増えていったように思います。

2040年問題という言葉を聞いた事がある人も多いと思いますが、その頃は今よりも15%以上人口が減ると予測されています。2019年生まれの赤ちゃんが90万人を切ったことで、15%は20%近くになるという意見もあります。
つまり経済規模も20%落ちる、広告・出版をはじめデザインやイラストを必要とする国内市場は確実に萎むということです。
くわえてクラウドサービスならば、団塊ジュニア世代が退職してフリーランス市場に参入する事も考えられます。現在写真ACやイラストACに趣味的にお小遣いを稼ぐ人が多くいますが、引退して悠々自適な生活をしてる人たちが余暇を過ごす目的で入ってこられたら現役世代はたまりません。
さらにくわえると副業解禁の動きは加速していくでしょう。
フリーランスの最低時給と副業として働くサラリーマンでは最低時給が違いすぎます。チキンレースの戦国時代が間もなくやってくると予想をしています。まさに乱世の時代です。

フリーランスで行くな!

私自身がフリーランスでありながら、若い子たちには絶対勧めません。
前述のようにイラストレーターになりたいなら仕方ありませんが、それでも副業として出来る道は現在はありますし、本業としてイラストレーターを選ぶというのは過酷な時代になってきます。もちろん圧倒的なデザイン力、画力、表現力、営業力があれば別です。個で戦えるならば問題ありません。
パートナーの転勤で、子育て介護があるから、という消極的な理由も他に選択肢が少ないのでやむを得ないと思います。
また触れる機会はあると思いますが、保育園に入れたいなら都市部はフリーランスは絶望的に難しいです。

どうしてもフリーランスになりたいならば

どのようなソリューションがあるかを模索した方がいいと思います。私の家庭で言えば
・クライアントワーク収入
・不動産収入
・ストック収入
・嫁の収入
4つの柱で回っています。稼いだ金自身を不動産に変え金に金を稼いで貰う、配偶者にも稼いで貰う
このような事をやっています。
人それぞれ違うでしょうが、例えば親と同居して生活コストを下げる、副業以上の定期的収入を得るパラレルワーカーのような働き方を探す等でしょうか。ストックフォト、ストックイラスト市場もありますのでサラリーマンで実力を試すには良い機会です。例えばストックで毎月10万稼げればサラリーマンの給料を足せば「やりたい事+生活すること」の二つが充足されるのではないでしょうか?

間違ってもインフルエンサーとかを目指してはいけません。
実力があって結果的にインフルエンサーになるのと、インフルエンサーを目指すのではまるで意味が違いますから。
近年かつて岡田斗司夫さんが提唱した評価経済が定着しSNSやこのnoteでも有名ならばマネタイズすることが可能となってきました。
しかし実力が伴ってないと何れ詐欺師がいたよね、とか顔出しして痛い動画流してたイラストレーターがいたよね、という位の存在になってしまいます。
セミナーやら、note課金やらブログをやたらと頑張ってる自称クリエイターも多いですが本業の方が圧倒的に儲かります。

デザイン会社の求人で一定の実力がある人なら500万は普通です。ということは、フリーランスならば1500万取れる勘定になります。
世間に名の知れたイラストレーターさんではなくてもマンション一括払いでポーンと購入した事例が最近ツイートで話題になりました。素晴らしい作家性もありますが、つまり頑張れば本業でも十分いけるんです。
ましてやクリエイティブ職である私達は、仕事で信頼を得て作品を世に生み出せるのです。こんなに気持ちいい事が他にあるんでしょうか?
ろくな実績もないのに、セミナー講師、ノマドイラストレーターを騙って充足を得る事が将来もできますか?
後に一線級の作家さんやイラストレーターさんデザイナーが評価経済に参入してきたら、実績が乏しい人はあっという間に淘汰されます。
ユーチューブで言えばヒカキンさんとかのトップランナーは暫くは安定でしょうが、芸能人の参入も多く安穏としてられない状況なのはわかるでしょう。はっきりした成果をもった著名クリエイターが評価経済に入ってきたら偽物は淘汰されます。

長くなりましたが改めて各論ベースで参考になるnoteを書こうと思います。
長々とお付き合いありがとうございました。
ヘッダー画像出展:パブリックドメインQ


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