モクモクギルド第一課題、営業もやるフリーランスデザイナーの回答
Twitterで、こんな話がありましたので面白そう~と思って見ておりました。
ところが課題を見てみると、デザイナーとしてはん????だったのでnoteでまとめてみたいと思います。
前提を考える
現在コンビニや100均があること、ECで楽に買物ができることがあって文具店は瀕死の状態です。
実に4割の文具店が、ここ7年で姿を消している。
うちの地元の文具店も閉店して2駅使えるのですが、ともに文具店はありません。
例えば100均のように、集客力があって「ついで買い」が見込めるならばいいのですが、文具店は必要がないと行きません。子供の夏休みの宿題で絵が出たとしても絵の具が残っていれば、行く必要すらないわけです。
画材コーナーを目立たせる以前に文具店は目立たないから潰れているわけです。
全ての学校がそうであるとは言いませんが、東京都の公立小学校は教材のノートは共同購入して配布しています(費用は請求されます)。色鉛筆等も共同購入です。そもそも論として文具店に行く必要って殆どないんです。ネットでググると地方もそんな所が多いようです。
必要なものがあれば、うちも殆どヨドバシカメラさんで買っています。
ノート一冊から無料で届けてくれて、早い!ので極力色んなものを買って応援しております。ダイソーさんに行けばアクリル絵の具をはじめ、普通の文具店に売ってない画材も売っていますので、ダイソーさんもよく使います。
私が学生の頃、リキテックスなんかのアクリル絵の具は文具店に売ってないので、わざわざ新宿の世界堂まで行っていましたが今は100均で買えてしまうのです。(大型店のみかもしれません)
ターゲットが小中学生と親と書いてありますが
小学生の夏休みの自由課題ですと、プログラムとか電子工作なんかをやってたりするので中学生で絵はどうなんでしょう?とも思います。
当然宿題があれば絵は描くでしょうが積極的に新しい画材を買ってまで、というのは期待できそうにはありません。
文化部系の子供が運動部の道具を買わないのと同じです。
前提を考える~文具店の売上~
販促用POPのデザイン、イラスト代を幾らと考えるか差はあるでしょうが、打ち合わせと納品で二度訪れる、デザイナーとイラストレーターが打ち合わせをオンラインでするって考えても、それだけで3時間程度は時間がかかりそうです。
デザインとイラストにも当然時間がかかりますから、超安くて5万円、普通に安くてで10万円程度の請求が必要ではないでしょうか?
文具店の立場からすると、5万なり10万円というコストをかけて販促をするならば、それ以上の売上儲けがないと話になりません。
平均的な小売の利益率は30%程度ですから、5万の利益を得るならば最低売上は17万円、10万円の利益を得るならば34万の売上が必要になります。
画像はアマゾンより
色鉛筆としてもクレヨンとしても使える比較的高単価なステッドラーの文具でも売価は5000円セット。(アマゾンは割引で4000円程度)
つまり、このセットを34個~68個売らないと販促費用がペイしないのです。利益を考えるならば100個とか売りたいけど、どう考えても無理ゲーでしょう。小中学生の子供に5000円もする文具を買い与えるのは裕福か、子供に絵を学ばせたい親だけです。
では平均単価2000円と考えると、85個~170個というとんでもない数字になります。そのエリアの小中学生のクラスに5~10人に買わせないとなりません。
もうわかったと思いますが販促用のPOP等を作るのはチェーンストアでないと成り立たないのです。売上増を望む個人商店の文具屋さんでは不可能です。企画~デザインまでは固定、POPの単価は安いので数を作れば成り立たせる事ができます。
前提を考える~什器上のPOPで良いのか?
例えば銀座伊東屋さん、LOFTさん、東急ハンズさん、またはオシャレなセレクトショップの文具屋さんならばウィンドウショッピングも見込めるので、来店したお客さんに店内POPで良いでしょう。ダイソーさんなどの100均も同じです。
集客力のない文具屋さんが店内にPOP作っても、来店客しか見ません。売れてないのは主に来店客がいないからなのに、これじゃ何の意味もありません。
なので王道は店外にPOPを作ることです。
文具屋さんは地域住民、小中学生の通学路にあったりしますので、そこを通る子どもたち、親の目に入ります。
下の画像は銀座コージーコーナーさんですが、キャンペーン、販促をやる際は必ず店外に掲出します。これ当たり前な事なのです。
大きな企業になるとテレビCM、ネット広告、固定のお客さんにDMを打ったうえで店外にも店内にも販促用のポスターやPOPを掲出します。それで売上が作られるのです。
今まで興味のなかった顧客まで店外のポスター等の販促物があればアプローチできます。
デザイナーとしては、この前提に疑問をもたずにPOPを作られてる方ばかりで残念に思います。
我々は医者と同じ、売上に困っているクライアントは患者さん
クライアントが売上増に困ってる患者とすれば、POP等のクリエイティブを作る我々は医者と同じなのです。患者が胃が痛いから胃薬ちょうだいとオーダーして、そのまま胃薬を渡すのは医者じゃないでしょう。
きちんと問診して、触診して場合によっては胃カメラの検査も考える、そのうえで薬を処方する、場合によっては手術をする。それがプロです。
目的は可愛いイラストを描くことでも、クールなデザインをすることでもありません。クライアントの売上増を目指すのが仕事です。
私が提案するソリューション
もし今回のような夏の売上増を狙いたい文具屋さんから依頼があった場合小中学生に文具を売る提案はしません。(そもそも10万円程度の依頼の個人商店は大変なのでやりませんが)
小中学生の文具の単価は安く、そもそも既に絵の具や色鉛筆、クレヨンは持っています。買い足し需要しか見込めません。高いものが欲しい少数の子供たちの親は安い通販を使うと思います。
CDの販売増に限界を感じた秋元康さんは体験型のアイドルを作りました。ご存知AKB48と、その派生グループですね。
文具もECに押されて個人商店だと限界が来ています。
なので私の提案するソリューションはワークショップを開催するです。
ベビーメーカーに在籍した時に知育玩具も扱っていたので、玩具屋さんや本屋さんでワークショップをやった事があります。実際に体験させて、商品の魅力を体感してもらうのです。ビックリする位売れたのを覚えています。
条件によってはメーカーが人を出してくれます。出してくれなくても暇ならワークショップにさける人員は家族にいるでしょう。
ワークショップから派生させて講座を有料でやってもいいと思います。
PCの使い方教室、暇なお年寄り相手に絵手紙教室、一時泥団子作りがはやりましたが、そんなことが自分だけじゃなく教室に集まった地域の人とつくりながら遊べるならばECにはない魅力が作れます。
このような提案を依頼されたら茶を飲みながら小一時間で話します。
もっと興味があるというならば企画書に落とし込んで、企画料をいただきます。そのうえで文具店さんがうまくいくようならば、講座ごとにDM作ったり、ポスター作ったりという仕事を受注します。
フリーランスが言われるがままの仕事をしていたら先細ります
イラストにしてもデザインにしても特に直クライアントの場合、言われるがままの仕事をしてると、単なる作業をする人になってしまいます。
今回実際どの素晴らしいイラストを使っても店内POPじゃ零細文具店さんを救う事はできないでしょう。
逆に金だけもらって、クライアントに損をさせてしまいます。
クライアントに寄り添い、クライアントにどうやったら利益を出せるか考える。それが長くフリーランスをやっていくコツだと思います。
追記:書き漏らした大事なこと
プロも数年、ましてや10年もたてば色んな知己を得ます。
それは同業だけではなくデザイナーから見ればイラストレーターさん、カメラマンさん、印刷会社さん。
中には損得抜き仕事抜きで色んなアドバイスを送り合う相手ができます。
私もアドバイスどころか、それまでの仕事への姿勢で100万円以上掛売りで良いよと言ってくれた印刷会社さんがいたりします。
SNSの生ぬるい環境で褒め合うのも時には良いでしょう。
しかし、本気で考えれば分かる事さえ気づけず、アドバイスしてくれる仲間がいないってのは寂しいことですし、これからのキャリアのためにも良くはありません。