労働環境の国際化とリ・スキル
「日本企業におけるグローバル人材育成システムの構築に向けて」
労働政策研究・研修機構(独立行政法人)がWEB上で公開しているレポートだ。
http://www.jil.go.jp/institute/zassi/backnumber/2012/06/pdf/017-028.pdf
日系企業がグローバル人材育成状況と抱える課題について調査したもので、
同問題の全体像と対策の傾向を掴む資料として参考となる。特に、グローバルマネージャーについてフォーカスしている。
求められる能力として挙げられるのは、多言語運用、異文化コミュニケーション、情報伝達能力(プレゼなど)、異文化適応能力、交渉力、メンタルタフネス。つまり、いかに「異」とコラボし、共生し、競争し、マネジメントできるかが問われている。
日本企業の対策としては、社内日本人人材育成、現地人社員育成、社外グローバル人材の登用が考えうるが、日本国内の若年層人口減少や、海外勤務希望者の減少といった内向き傾向の増加を考えると、社内外の非日本人人材を登用することの重要性と実現性が強まっている。
同レポートは2012年のものだが、日本企業や社員が置かされている環境はさらに不確定性を強めていると思われる。例えば、ここ数年、M&Aが右肩上がりだが、クロスボーダーM&A件数も全体の20%程度まで伸びてきているようだ。
これは、会社員として自らグローバル人材としての能力を身に着ける圧力が高まるだけでなく、この路線に乗らなかったとしても、上司が外国人になる可能性を示唆している。
このコラムには、リ・スキルというワードが出てくるが、的を得た表現だと思う。これは、グローバル人材としての能力をも含む、もっと広範なコンセプトだ。パラダイム転換期とも言われる現状では、「異質」との関わり方が変わりつつある。もはや、会社という組織の「ワン・クッション」を介した接触ではなく、草の根レベルの個々の能力に直結した部分、つまり個人の基礎体力的な部分が重要視されつつある。