VC法務の魅力は「多様なスタートアップの成長を見続けられること」【GB社員インタビュー】
ベンチャーキャピタルのグローバル・ブレイン(GB)にて、自社のPRおよび投資先企業のPR支援を担当している桜川です。
2024年9月現在、GBは140名を超えるメンバーを抱えており、投資を担当するキャピタリストや、投資先企業の成長を支援するチーム、ファンド運営に必要な各種業務を担当するバックオフィスのチームなど、それぞれがさまざまな業務に従事しています。
今回は絶賛採用強化中という法務チームに所属する西野さん、山岸さん、近野さんにお仕事の内容について詳しく話を聞きました。
一般的な法務とはまったく違う…?
──まず最初に、GBの法務業務ではどのようなことを行っているのかについて教えてください。
西野:大きく分けると3つで、投資案件での法務に関するデューデリジェンス(DD:投資先企業の価値やリスクの調査)、投資契約のドラフト作成やレビュー、既存投資先の株主総会に関する書類を始めとする重要書類のレビューを行っています。
フェーズや内容によって担当が切り替わるのではなく、1つの企業に1人の担当がついて、投資前から上場やM&AなどのExitに至るまで関わり続けるところは特色かもしれません。関わるウェイトはさまざまですが、1年で1人あたり60社くらいを見ています。
──なるほど。企業の成長を最後まで間近で見られるというのは面白みがありそうですね。そもそも皆さんは、それぞれどういった経緯で入社されたんですか?
西野:私はもともと弁護士として法律事務所に勤めたあと、ゲーム会社の企業法務にしばらく従事していました。2つの場所で働いて、ひと通りのことは経験したと感じたタイミングで、転職エージェントを通じてGBの法務業務を知ったのがきっかけです。
事業会社の企業法務だとゲームならゲームという、基本的には1つの領域に絞って見ることになります。多少広がってもエンタメという枠自体は変わりません。正直もう少し違う領域も見てみたい気持ちが芽生えてきてたんですよね。いろんなスタートアップが新しい事業に挑戦して成長しているのも見てましたし。
実際GBと話をしてみると本当に多様なスタートアップに投資をしているので、これまでにはなかった新しい経験ができそうだと感じました。当時マネジメントとしての役割も求められていたんですが、自分としてはプレイヤーでいたい思いが強く、ここなら面白く仕事ができそうと思って入社を決めた感じです。
山岸:私は前職が石油元売会社で、コーポレートガバナンスなどに関わっていたんですが、あるとき設立したばかりのCVCの法務担当になったことが転機となりました。
エネルギーにあふれる起業家の皆さんとコミュニケーションするうちに、スタートアップ投資の世界に興味が湧いてきたんですよね。これまでそういった世界があることを全く知らなかったのですごく新鮮で。
そういったタイミングで縁あってお声がけいただいたんですが、面接の過程で法務を内製化しているVCってGBくらいしかないってこともわかりました。法務のプレゼンスが他のVCと比べて高いんだろうなと感じたのは大きかったです。それによって重要な仕事を任せてもらえる機会もあるでしょうし。そういった環境がありそうなので、素直に働きたいと思えましたね。
あと、法務チーム責任者の島津さんが「仕事ってやりたいことやったほうが面白いですよね」と言っていたのが印象的で、その考え方に心底共感したんですよね。楽しんで仕事ができる環境がありそうだと感じたのもあって、最終的に入社を決めました。
近野:私の前職はドローン事業を展開するスタートアップで、1人目の法務として資金調達やIPOの準備などを始め、法務業務全般を行っていました。資金調達などの重要な業務に携わるのはやはり大変でしたが、同時にやりがいも感じていたので、転職は正直考えていなかったんですよね。
ただ、ちょうど資金調達やIPOに向けた準備も一段落したタイミングでGBから連絡がありまして。VCからの求人ってあまりないので、始めは半分興味本位で話を聞いてみたという感じです。
法務としてのキャリアの差別化というとおおげさですけど、VCという投資側の立場でさまざまな企業と接する機会があるという点は魅力に映りました。
10年単位で関わりを持てる仕事
──実際に働いてみて、ずばりGBの法務の魅力ってどういったところにあると思いますか?
近野:間近で経営者の話を聞けるところは大きな魅力です。普通に生きていたら出会えないような優秀な人たちとお話ができるのは非常に刺激的で、日々ありがたいなと感じています。
山岸:そうですね。さまざまな企業のアイデアや優秀な経営者の考えに触れられる機会は、法務職としてそうあることじゃありません。加えて、担当案件中心のキャピタリストや支援チームと違い、法務は全案件に関わるので、自社の中でも圧倒的にそういう機会が多いと思います。そういったところが楽しさを感じる部分ですね。
西野:さきほども話しましたが、DDからExitまで見ることになるので、裁量も関与度も大きいんですよね。Exitまでを考えると短くて4〜5年、長いと10年かかります。法律事務所でも企業法務でも、事業がどう成長していくかをこれほどのロングスパンで見る機会はほとんどなかったので、その点はこの仕事の面白さの1つですね。
また、法務担当として投資委員会(投資を決定するかどうかを決める場)にも長年出席していますが、次第にキャピタリストの判断軸もうっすら見えてくるようになってきました。それが自分たちのDDにフィードバックされ、徐々に洗練されていくところも面白い部分です。
正直、新規の案件って始めは何もわからないんですよね。そのため資料やヒアリングをヒントにしつつ、自分でもプロダクトやサービスを使って理解をしていくことが重要になります。その中で浮かんだ仮説を確認しながら、解像度を高めていくわけです。それが案件ごとに毎回違うので、毎回新鮮な気持ちで仕事ができるのも魅力だと思います。
近野:GBは領域特化型のVCではないので、SaaSやエンタメの企業から、バイオやロボティクス、宇宙など、扱う領域が本当に幅広いです。そういった意味で多様な観点を持つことができますし、知識の広がりも出ますよね。
西野:確かに今週だけでも、農業、データビジネス、音声解析、医療って感じで、本当にバラバラでしたね(笑)
──そういったバラエティに富んだ企業や起業家の皆さんと仕事できるというのは確かに魅力ですよね。
西野:そういった意味だと、社内の人たちもスペシャリストばかりですごいと感じています。一般的な会社だと、ある程度は似た経歴の人が多く集まると思うんですが、うちの会社は真逆。いまいない人を積極的に探しているんじゃないかってくらい多様性に富んでいます。
法務チームも同じように全員バックグラウンドが違いますし、お互いの知見を補完しながら業務に臨めるところは強みだと思います。
身につくのは馬力と想像力?
──得られるスキルや経験などについてはどうでしょうか。
山岸:さきほどから話が出ているように、本当に多様なビジネスモデルと向き合うことになるので、毎回ゼロから始めるための馬力はつくかもしれません(笑)わからないことでも馬力を発揮すれば何となると思えたのは、この会社に入っての学びです。
あとスタートアップファイナンスに関する知見は、多くの案件を担当するにつれてかなり深まると思います。
近野:スタートアップファイナンスって独特ですよね。シード、シリーズA、シリーズBと進むごとに株主も増えていくので、関係者も非常に多い。過去のラウンドで契約がどうなっているかを踏まえていまを考える必要があるので、他ではなかなか身につかない知見だと思います。こうした知見は実務でしか得られないものなので、そこは今後も磨いていきたいです。
また、何が論点になるかを見極める力も非常に重要です。時間のないスタートアップのスピード感に合わせながら、見識のない領域であっても論点を抽出し、確認していく力は鍛えられるんじゃないかなと思います
西野:近野さんの言うように、一般的な法務業務だと契約は1対1ですが、スタートアップの投資契約では関係者が非常に多くなります。スタートアップと株主含めて20〜30人規模になることもあるので、その規模の人数で合意を取りつける力はこの業界だから身につく部分かもしれません。
大事なのは想像力だと思います。株主構成から発言力を推し測ったり、利害対立するケースを想定したりと、関係者全員の立場や考えに想像をめぐらせ、最終的な着地を探る仕事ですので。
──一般的な企業法務などと比べて違いを感じる部分はあるんでしょうか。
近野:一般的な契約業務だと1ショットの仕事なので、やり取りは数回で終わることが多いですが、スタートアップ投資だとそうはいかないですね。キックオフ、DD、投資委員会、投資実行とスパンがかなり長いです。こういったプロジェクト型の仕事は、一般的な法務業務だとあまり多くないと思います。プロジェクトごとにタスクやスケジュールを管理する力がないと、推進していくのが難しいかもしれません。
スタートアップっぽい雰囲気も
──業務内容についてはひと通り理解できたので、会社やチームのカルチャーや雰囲気についても聞ければと思いますが、法務チームでは普段どういうコミュニケーションを取ってますか?
西野:そうですね。1日1回以上は顔を合わせようと、定例とは別で顔合わせの機会を作って情報をキャッチアップしてます。業務の進捗確認もしますが、どちらかというと近況なども含めてコミュニケーションを取る場です。
各プロジェクトに参加する業務の構造上、どうしても孤立しがちになっちゃうんですよね。そういう状況を避けるためにも、1日1回は話す機会を作ることが重要かなと思って続けています。
山岸:わからないことはすぐに相談できますし、担当外のものから参考になる情報のキャッチアップもできるので、なくてはならない場になってますよね。
近野:最近入った立場からすると、単純にチームの接点になりますし、相談できるポイントがあるのはすごくありがたいです。本当にわからないことが多く、わかってないことすらわかってないという状況もある中で、皆さんとのコミュニケーションを通じて解決できている場面も多いと感じます。
あと山岸さんからもありましたが、他の案件から学ぶことも多いです。改めてちゃんと理解できる場があるのは非常に助かります。
──会社全体の雰囲気についてはどうでしょう。
西野:オープンな人が多いですよね。裏表がないということもそうだし、多様性のある環境を受け入れている人が多いなと思います。これまでになかったスタートアップに接する仕事柄かもしれませんが、あまり始めからバイアスを持っていないというか。そういうオープンなところが特徴的だと思います。
山岸:さまざまな領域の専門性をもったプロフェッショナルな人たちばかりなので、互いにリスペクトがありますよね。立場や年齢の上下に関係なく、フラットにコミュニケーションされていると感じます。
近野:話しやすい人が多いというのは感じます。仕事柄かもしれないですが、雰囲気としてはスタートアップに似てますね。自由闊達というか、変に堅苦しい雰囲気はないですし、役職関係なくフラットなところなども共通してると思います。
──ありがとうございます。では最後に今後チャレンジしたいことなどあれば教えてください。
西野:チームとしては引き続き多様性を重視していきたいです。いまある知見だけで新しい技術やビジネスモデルと向き合っていくのは難しいと思うので。同じものを見ても違った視点で考えられるような、多様性のある組織にしていきたいですね。
山岸:個人としてはファンド組成にも関わってみたいと思っています。LP(Limited Partner:ファンドの出資者)さんからどういう条件でお金をお預かりしているのかなど、その業務に携わらないと完全に理解できないこともあるので。
また、日本のスタートアップ投資に関する法務のプラクティスはまだ発展途上にあると思っているので、チームとしてはその発展に貢献できたらいいなと思ってます。常にこれでいいのかと考え続けたいというか。
西野:これまでの歴史を踏まえながら洗練されてきた一方で、良くも悪くも凝り固まっているところはあるかもしれませんね。エコシステムが進化していく中で、まだまだ変えていく余地はあるんだろうなと思います。
GBは独立系VCとして急速に成長しているし、政府がスタートアップ育成に力を入れていく中で、そういった変化の中心部にいられることは面白いですよね。
雰囲気だけじゃなく、ビジネス面においてもGBはスタートアップっぽいところがあって、常に新しい挑戦を続けている会社です。一緒に新しい世界をつくれる仲間をこれからもっともっと増やしていきたいですね。
近野:そういう意味でこの仕事に向いてるって、やはり好奇心が強い人だと思います。新しいことに触れ続けてないと死んでしまうくらいの人がいいんじゃないかなと。
山岸:GBは日本でも投資件数が飛び抜けて多いVCですし、日本のスタートアップ業界のことはだいたい分かる環境にあります。スタートアップ投資やスタートアップに関わりたい法務経験者がいらっしゃいましたら、ぜひご連絡お待ちしております。