二本の桜（みんなの栄光）

愛情に生きることの大切さを二本の桜が教えてくれている。
今回はその二本の桜（みんなの栄光）のお話をご紹介したいと思う。

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～二本の桜（みんなの栄光）～

桜の花が咲いた。
例年のように大勢の人がきて、花を見ながら飲み食いし、
そしてほめたたえた。
「なんと美しい桜だろう・・・
去年にも勝るとも劣らない・・・。」

それを聴いた花は、
自分に栄光を帰して言い始めた。
「私はきのう咲いたばかりなのに、
もうこんなに多くの人がきて私をほめたたえている。
枝や幹をほめるものは誰もいない。
根などは存在していること自体も忘れ去られている。
私の力は大したものだ。
なんといっても働き始めてからたった一日しかたっていないのだから・・・
幹は一年、いや、何年も何年も休むことなく働いてきながら、
一度も人を呼び寄せたことも、
ほめたたえられたこともないなんて・・・。
こんなみじめなことがあっていいのだろうか？
皆さん、もう少ししっかりしてください。
私を見習ったらどうですか！」

それをきいた枝は、怒りと悲しみをこらえながら叫んだ。
「一体あなたは自分ひとりの力で咲いたと思っているのですか？
根はそのすべての栄養を一言の文句もいわずに、
あなたの子の日のために準備してきたのです。
私だってあなたのためにどれだけ風雪をたえてきたか・・・。
あなたがそういう態度なら、もう栄養は送りません」と。

こうしてその桜は枯れてしまった。

隣にはもう一つの桜があった。
今年もまた豊かな花を咲かせた。
より多くの人々が集まりほめたたえた。
花は、多くの絶賛の中で枝や幹、
そして根にいった。

「私はついきのう咲いたばかりです。
なのに今日はこんなにもたくさんの人々から絶賛されています。
でも、この絶賛は私のものではありません。
まず根に感謝します。
誰にも振り返ることなく、日も当たらない土の中で肥料を求めて、
この私の花咲く瞬間のために耐えてくださいました。
そして幹と枝に対しても、風雪のなかに一年に二年と長い間、
じっと忍耐してくださったおかげで、今日の私があることを感謝します。
この栄光は、ただの一つも私のものではありません。
どうか、皆様の栄光として受け取ってください・・・。」と

それを聴いた根も幹も枝も涙を流しながら言った。
「そんなこと言わないでください。
あなたが受ける栄光はあなたのものです。
私たちは振り向かれなくてもかまいません。
あなたが褒められるのは、そのまま私たちの誇りです。
あなたがいなければ、本当に私たちはその存在自体が忘れ去られ、
むなしく消えていくしかなかったでしょう。
来年にはもっときれいな花を咲かせるように、
もっともっと栄養を豊かに貯えます。
あなたのその言葉をきき、今まで苦労したかいがありました。
来年はもっときれいな花をみんなで咲かせましょう！」

その桜の木は、年々繁栄したのです。