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100人の村

大好きな祖国を思う保守たちの力が結集され
大東亜戦争敗戦で破壊された日本の良き古き時代を再現しました。 そのモデル都市建設の挑戦を「物語風」に綴ってみました。

のどかなある田舎に100人ほどの村人たちが平穏な暮らしを送っていました。
寒い冬がようやく終わりを告げふきのとうが芽を出し始めた頃、
佐藤家の娘の早苗さんが、晴れて結婚をすることになりました。
お母さんは喜びをかみしめ、笑みをうかべて語りかけました。
「孫は沢山欲しいねぇ…」
早苗さんは応えました。
「お母さん、不況で生活が苦しいから私も働くことにしたのよ。
彼も漸く仕事が見つかり、不安定だけれど何とか結婚に辿りつけたわ。
子供を育てるにはお金がかかるので、沢山は無理だと思う。
それに、これからの時代、将来の見通しが立たなくて…。」
お母さんは哀しそうに言いました。
「早苗、そんな弱気でどうするの、希望を持つのよ。
収入が安定しなければ、結婚もできず、お金が少ないから、
子供も沢山生めないということ? 今の日本は少子化こそが最大の問題なのよ…」
悪循環を繰り返す日本を憂えたお母さんは、
今の若い世代が抱える苦しい事情を酌みながらも 静かに語り始めました。
「早苗ちゃん、お母さんの話を聞いてくれる?
妻として、母として、貴女自身がどんな哲学を持って生きてゆくかが何よりも大切よ。
お金で安心や幸せをつかもうなどと考えている限り、
本当の幸せをつかむことはできないわ
貴女が築く家庭は、お金で不幸になることは間違いないわ。
多くの人たちはお金で安心を買おうとしているわね、
でもお母さんはそういった考えを、一度捨て去るべきだと思うのよ。」
「捨て去る?」早苗さんは聞きました。
「そうよ。 仮にね、今突然大飢饉が世界中を襲ったとしましょう。
その時お金だけを持っている100人の村と、
お金は無いけれども、各分野の技術が揃った100人の村があれば
最後迄生き残れるのは どちらだと思う?」
「それは…技術の揃った100人の村だと思う」早苗さんは答えました。
「そうでしょう。 蟻の社会を見てごらんなさい。
蟻たちはそれぞれが役割を持って一つの社会を形成しているの。
何かで巣が壊されたとしても、蟻は何事もなかったかのように直ぐ修復に取り掛かるでしょう。
その時どの蟻も『お金が無いからできない』などとは言わないわ。
ゼロから造り上げる技術があるのだから、
その技術を駆使すればいつでも再建できるということなのね」

早苗さんは腑に落ちない様子でした。
「蟻はそうかもしれないけど…。人間社会ではそうもいかないと思うわ。」
お母さんは言いました。
「自然界を通して教えられる生き方もあるのよ。
ミツバチの巣が壊れても同じよ。
ミツバチはまるで、事前に打ち合わせができていたように直ぐさま修復にかかるわ。
僅かの後には何事もなかったかのように正常に戻るのよ。
それはミツバチ自体に需要を満たす技術が内在しているからなの。
技術そのものがミツバチ自体に内在していればこそのことよ。」
まだ納得がいかない早苗さんは言いました。
「現実問題、それが人間社会にどう適用されると言うの?」

お母さんの眼差しは次第に真剣になり、力を込めて語り続けます。
「早苗ちゃん。 拝金主義社会は、お金が王様のように振る舞っているけどね、それは間違っているわ。
お金を持っている者が絶対権限を持ち、
お金の無い者はただ従うだけしかないという世界の構図…
この考え方自体を、一度壊さなければならないと思うのね。
仮にこの小さな村に住む一人一人に、 建築技術、医療技術、食糧生産技術…
その他色んな技術が集約されていれば、
村人の総体としての生産能力は圧倒的でしょ。
どんな災害が起きようと生き残った人たちで再建は可能よ。
象徴的な価値しか持たないお金(紙切れ)は何もしてくれないのよ。
お金は価値の実体を動かしてこそ意味があるの。
お金はあれば便利かもしれないけれど お金が無ければ何もできないと考えるのは良くないわ。
みんなで助け合えば、できないことはないわ。

緊急事態に、お金を払ったり貰ったりする必要があるかしら?
村人がお互い様の助け合いで
家族のように強く結ばれていれば災害に襲われても強いのよ。
豊かな技術力と相互の助け合い精神があれば、
部外者の助けなしで生き残れるのよ。
お金よりも大事なのは村全体の総合力信頼関係ね。
実体の価値を軽んじて
象徴的価値のお金だけで贅沢な習慣を身に付けた人たちに、未来はないわ。
そのような人たちは、
自分以外にいつも依存しなければならないの。
それが自由に何でも整う平常な時ならば、問題はないでしょう。
でもね、緊急事態にはとても脆いの。
昔ながらの古き良き日本にあった、
信頼し合える家族のような繋がりの中で
それぞれの価値の実体を発揮し合うことが、とっても大切なの。
小さな村が、どんな大きな都会より、
サバイバルできる形態になるのよ!

都会には、バラバラの個人が浜辺の砂のように沢山いるけれど、
砂粒は小石にも勝てず、脆いものよ。
お金を得るより、
もっと大事なことは生きるための必要性に対応できる技術力を身に付けることよ。
逆境、困難、緊急事態にいつでも対応できるだけの
精神力と技術力!

問題は何を根幹としてゆくか。
教育の中身が最も重要なテーマとなるのだけれどね…。
才能があっても中心の哲学がズレていれば甘い罠に掛かるわ。
日本は今や全方向で追い詰められているでしょう。
戦後、日本国民は哲学を失い、大義を失い、愛国心を失い、
特攻精神を失ったわ。」
そう一気に話すお母さんの熱意に、
早苗さんは大きく頷き、引き込まれていきました。

311の東日本大震災の時のことを思い出しました。
どんな建築物もどんな貯金もどんな繁栄も巨大な津波はひと飲みで破壊しつくしました。
残ったのは、愛情主義国家・日本ならではの「絆」でした。
その時に必要だったのは 不屈の精神と、智恵技術でした。

この小さな村を一人の人間の体とすれば…
手の役割、足の役割、頭の役割、、、
とそれぞれ個性を発揮できたらお金(紙切れ)は要らない。
早苗さんは、次第にそう思えるようになりました。
「そこにはお互いが共に助け合う連帯があるの」
お母さんの目も輝いていました。

早苗さんはそれを実現するための構想を描きました。
人は誰にでも自分の得意な分野があります。
でもそれは、それができない人に向かって勝ち誇るためではありません。
100を完成体とすれば、20できる人は、10しかできない人に尽くすことができるし
50できる人は、30しかできない人のために役に立つことができます。
「そうだ! ひらめいたわ。
村のご高齢の方にできないことを、
若い私たちがお手伝いし 私たち若い世代に不足しているところを、
ご高齢の方たちのお知恵を頂く。
そんなのって、どうかしら?」

それまで庭いじりをしていたお爺さんが突然乗り出してきました。
「それは良い案だ!」
「わしたち高齢の者は、経験と蓄積はあるが、
体力が衰えていくばかりだ。
その一方で若い早苗たちの世代は、経験と経済力は無いが、
若さがある! この二つの人生はお互いに必要とし合っている。
これを一つのサイクルの中で相互に補い合うことができたら、
村は活性化するに違いない!

懐かしいな、昔の日本に戻っていくみたいだ…。」
お爺さんは遠くを見つめるように語り始めました。
「わしたちの世代から早苗ちゃんの世代へバトンタッチの時がきたな。

もう少し温かくなればツバメがやって来るな。
ツバメは必死に材料を運んで巣を作る。
ヒナに懸命にエサを運ぶ。
親ツバメは疲れることを知らないんだ。
ツバメが巣を作る目的はただ一つだ。
子供を独り立ちさせることなんだ。
老後の準備に巣を作るツバメはいない。
老後を期待して面倒を見てもらおうとヒナを育てるツバメもいない。
ただ、子供が立派に育つことだけを楽しみにし、苦労を苦労とも思わない。

鮭も同じだ。
生まれ故郷を後にして川を下り、数年の間海を回遊しながら成長して、
やがて子孫を残そうと故郷の川を目指す。
そして遡上を開始する。
何も食べず、ただ、取りつかれたように川を上るんだ。
熊が襲い、鳥が襲い、人間が待ち構えていても予定を変更することはない。
ただ、ひたすらに突き進む。
その目的はただ一つ、立派な子孫を残すことだ。
鮭の人生において、最優先事項は立派な子孫を残すこと以外にない。
産卵を無事に終えた鮭は力尽きて死んでゆく。

だからね、お爺ちゃんたちは皆、
これからの日本を任せられる若者に
今迄培ったすべてを惜しみなく継がせたい。

それが今迄苦労して培った智恵や技術や財産を最高の形で活かせる道だ。

それには、受ける側にもすべてを受け継ぐ気迫がなければならんがね。
経験豊富なわしたちが知恵と資金を投入してプロジェクトを立ち上げ、
早苗たちの若い世代に活躍のチャンスを提供することもできる。
なんと刺激的な挑戦だろう!」
早苗さんはお爺さんの丸くなった背中を見て心の中で思いました。
「お爺さんたちは経験と資金があっても、体力は日々衰えていっている。
なんと言っても人生の残り時間が多くはないわ。
この二つの人生は必要とし合っているのよ。」
「お爺さん、時間がないわ、見事な世代継承を完成させましょう!」
「そうか! では、わしも同世代の仲間に呼びかけよう。
家族同士が与え合うんだから
〈助け合い制度〉または〈人格投資制度〉と名付けよう」
国家を形成する国民一人一人の人格の豊かさ想像力、創造力の豊かさが、
国の総合力を決定します。
そのすべてを、家族の絆を軸に世代継承するのです。

戦後何もなかった時代から日本人は身を粉にして働き、​
その国民の総力が戦後の日本を築きました。
貧しくても、そこには子供達の笑顔がありました。
今の日本はあの頃より、
本当の意味でもっと貧しくなっているのではないでしょうか。

たとえお金が次世代に受け継がれたとしても、
愛情主義の日本精神と、
その手に培われた実体の価値が次の世代に受け継がれないまま消滅すれば、
日本の価値は消滅します。
戦後、利益至上主義となり、人件費の安い海外に工場を移転させ、
日本の次世代育成には無責任でした。

切符が残されても、
新幹線が消滅すればその切符は紙くずとなります。
お金ではなく、技術そのものが真の価値です。
真の価値が世代継承することなしにどんどん失われてゆく、
これこそが日本の危機だと言えます。

一説には今、団塊世代の貯蓄は数百兆円とのことです。
しかし、それがそんなに凄いことでしょうか?
お金があっても信頼できる医者のいない世界で
そのお金は何の意味を持つのでしょうか?

未来の日本を力強く担うはずの若い世代が貧困化し引きこもり、
ニートとなっています。
デフレ不況の中、将来の見通しがつかずハングリー精神を忘れ、
逃げ腰となっています。

早苗さんの構想は固まりました。
この小さな村を、一つの大家族として連帯し合う村にしよう!
世代継承愛情主義中心の助け合いが鍵だわ!
そして 衣食住の自立を目指す村づくりよ」

でも構想はいいけれど何か足りない、、、
早苗さんは、お母さんの言葉が心の端に引っかかっていました…

「問題は何を根幹としてゆくか。
教育の中身が最も重要なテーマとなる。」

この根幹がまずしっかりしなければ、、、!
お父さんに相談しよう。

その夜早苗さんはお父さんに昼間の話しをして、智恵を求めました。
学校の教師をしているお父さんは言いました。
「突き詰めれば教育に帰結する。
立派な人間を生み出すことなく、立派な家庭も社会もありえない。
日本は民度の高さ、
人格の崇高さでは世界を驚かせるだけの内容を持っている。
311で失われた数えきれない金庫がきちんと警察に届けられ
持ち主に戻ったという話に世界は驚愕した。
この美しい日本人の心は
2000年以上の歴史が積み上げてきたものであり 一朝一夕でできるものではない。

若者をして、逆境に負けず、真実を貫き、
思いやりを貫ける人材を生み出すために、
この村が総力を挙げて取り組むのだ。
すべての財産、すべての知識、すべての経験は
そういった立派な人材を生み出すために投入されるべきなんだ。

教育が大事だと言ったがその前に子供がいなければならない。
少子化を解決するには議論することではなく、
とにかく結婚して子供を産まなければならない。
結婚して子供を生むということが
どれほど重要な意味を持つかを 誰もが理解しなければならない。
ただ周りが結婚するから自分もする、何となく子供を産む。
というのでは駄目なんだよ。

女性が女性として生まれた最大の責任は
立派な子供を産んで立派に育てることにある。
もちろん、そのための重要な責任を男性が担うことは当然だけどね。
男性は快適な生活環境を整備するために
全力を投入しなければならない。
この世界は私が背負うという気迫を持って、
どこまで続くかわからない荒野の道をも渡り切らなければならないのが男の責任だ!

『次世代の若者の育成が最優先という哲学』のない国に、
未来はない。」

お父さんは、村の若い者たちを教育する研修合宿の構想を描き始めました。
「研修への参加資格をまず審査する。
『自分のことを考える』から
『みんなのことを考える』への意識変革が可能な若者
を対象とする。
自分以外の人を幸せにするために一生懸命になる時、
自然とその人は最高の位置に立たされていくものだ。
それが自然界の基本の中の基本だ。

研修で行う具体的内容は…
①教育伝統の柱となる愛情主義を徹底させる。
政府に頼らない民間レベルでの活動を通し、
助け合い愛情を軸とした国家・世界の金型を目指す。

愛国心を育て日本人としての誇りを取り戻す。
(武士道精神、和の精神、匠の精神)
正しい歴史教育など

日本を愛する若者同士の結婚(愛日結婚)を推進し、
大家族連帯制度を拡大する。
大家族連帯制度により、 若い世代は安心して子供を産むことができ、
高齢世代は豊かな老後を過ごせる連帯社会を作る。

日本の農業、漁業等を復興させ、
後継者不足を解消(若者たちへ世代継承)

道徳心公徳心を育み、
幸福な家庭、平和な社会、豊かな世界を建設する。
以上が父さんの考えだ。」

早苗さんは、お父さんの村づくりにかけた熱い情熱に圧倒されました。
早速、先ずは研修会に集まってくれそうな若い人たちに声をかける計画を練りました。
お父さんの話しは続きます。
「この村が一つの大きな家族となる。
人生の目的は愛情主義の人格を完成させることだが、その最小単位は家庭だ。
家庭からすべてが生まれる。
家庭の伝統が教育のすべてだ。
これに真剣に取り組まないものは早かれ遅かれ崩れ去る。
家庭の日常生活が、そのまま国家戦略、世界戦略、歴史戦略に直結している!

この100人の村の大家族の連帯が金型として確立すれば
その村が集まった千人の町、
そして、それが拡大され1万人の都、百万人の国へと拡がる。

家庭の究極の目的は、
次世代に立派な家庭を継承させることに意味がある。
そのためには、三世代の総力を結集させねばならない。

人生の卒業式を前にしたご高齢世代は、
過去培ったすべてを有効活用できるように全力を尽くす。
次世代の教育環境づくり、
またお金の要らない社会を築くにもそこに至るために莫大な資金が必要だ。
高齢者の苦労の蓄積が最高に活かされる道だ!

現役世代、さらに次世代たちには世界を担ってゆく責任感を自覚してもらわなければならない。

だが現実の社会は、
若い適齢期の女性が浮浪者になる時代、
政府批判をしている間にも若者達は追い詰められてゆく。。。
お金に依らなくとも 結婚が可能であり、
出産が可能であり、教育が可能であり、
希望あふれる未来が約束される制度を確立するのだ。
お金があっても信頼できる医者がいなければ意味がない。
家族の一員に立派な医者がいればそれだけで大きな安心だ。

お金の価値は、突然暴落することがある。
歴史は痛い経験を積んでいる。
預金封鎖も事実として行われた歴史がある。
どんな時でも変わらない価値とは、
あくまでも実体として人間に受け継がれたものだけだ。
家族の絆を機軸として
価値の実体そのものの備えが何よりも重要だ。


日本一国の存亡を考えれば緊急なる措置が必要だが、
その金型をこの村で造る。
食料は農業に従事する人だけが必要とするのではない。
どんな人も食料なしに生きて行けない。
サバイバルの絶対条件として
すべての人が農業知識を備えていなければならないと断言できる。
後継者の居ない農家を支えながら、若者が農業技術を身に付ける方策は可能だ。

手に持っている技術や頭の中に得た知恵知識
本人と一体でありいつでもどこでも発揮できる。
それが豊かであればあるほどサバイバルに向いている。
サバイバルとは、他に依存する部分を少しでも減らすことを意味する。

若者は、連帯の素晴らしさより、
勝手気ままな生活が良いと思うかもしれない。
戦後の日本は個人主義が蔓延し、
自由というお題目でバラバラの砂粒になってしまった。
個人の気ままな生き方がそんなに自由だろうか?
今の日本を見れば、
それはまやかしの自由であり 自由を求めて気がつけば不自由な社会を作ってしまった。
自由とは何かを見なおさなければならない。
重たい机の移動を一人でやれと言われればやりにくいが、
二人でやればはるかに自由に動かせる。
車の運転席に座れば狭い空間で不自由になるが、
遠いところまで思いのままに移動できるようになる。
それだけ自由になったと言える。
車との一体化は個人の自由を束縛するように見えるが、
大いなる自由を約束する。
これまで言われた自由は、実は不自由だった。
大きな助け合いで団結すれば何事もスムーズに達成できるようになり、
全員の自由度がはるかに増すという事実を知らなければならない。」

早苗さんは、お母さんに向かって言いました。
「お母さん、ごめんなさい。今日言った言葉を取り消します。
愛情主義中心の助け合いの仕組みさえ築けたら お金が無くても、
結婚できるし、 お金が無くても、子供を沢山生める。
そう確信できるようになりました。
そんな村を築いてみせます。」

お母さんは満面の笑顔で答えました。
「早苗ちゃん、そうね。
三世代の総力を結集すればきっと実現できるわね。」 

おわり。


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