種苗法改正への個人覚書
以下ただのメモ。今後も推敲、書き足しする。
日本の農産物が国際競争力を持ち得る状況になるのは、私も望ましいと考える。
他方、農業に関わる日本の法体系がガラパゴスである、というよくある論調に関して言うと、国からの補助が「少ない」という点でガラパゴスであるという見方もできる。
確かにOECDが発表する「農業保護率」のランキングにおいて日本は上位だが、農業保護率というのは農業収入に占める関税・補助金の割合を指す。日本の場合、ここに占める関税の割合は8割近いようだ。つまりそれは輸入障壁であり農家への直接支援ではない。
農水省などが範にしようとしている海外事例という点でいうと、EU、米国の農家への補償は日本より高いとされる。また 米国、EUなどでも主食など重要な産品は自家増殖禁止の例外になっている。これは一般品種、登録品種の別ではない。産品の区別、という点が重要。また、EUでは小規模農家への免除規定もあるようだが、今回提出された種苗法改正案にそのような例外規定は見当たらない。
また国際的な趨勢を象徴するものとしては、UPOV条約を第一に挙げることができるが、この条約においてすら育成者の権利強化は示されつつも、自家増殖の許認可は各国の裁量に任せるとされている。中南米やインドにおけるモンサント法に対する農民暴動を踏まえても、また欧米ですら主要穀物は自家増殖されていることを踏まえても、当然のことだろう。
私も、育種知財権の保護が重要であることや、海外持ち出しの防止が必要な点には私も依存はないが、この法案による食料安全保障上の別の波及効果もあるかもしれない、という懸念はぬぐえない。
とりわけ主要国の事例を見れば、育種権者の保護、という視点と農家への直接援助がセットで行われている点を無視できない。また欧州も米国も、種苗産業の売上高のほとんど占める種苗メーカーの「お膝元」である、という事情も見逃せない。
さらに農業競争力強化支援法によって、国や県の農業試験場が開発してきたコメの品種とその関連情報を民間企業に提供することが促される。
今回の法改正に賛成する声の中には、中国、韓国への種苗流出を危惧するものが多数であるが、先に述べた品種情報の提供先の中から中韓資本が除かれるということはない。また先述のように今回の法改正において「産品」の例外措置はないので、中韓資本などの日本子会社が競争力のあるコメの種子を先取登録する、という懸念もある。
但し喫緊の脅威で言えばそれはやはり欧米の巨大GM資本であろう。
私の立場は種苗法改正は「やり方」の問題であると考える。育種者の知財権は守られるべきであろう。今回の改正についていえば中身に不満があるので反対だが、他の政策とセットで、かつ免除・例外規定がより細かく書き込まれているならば賛成もできるだろう。