アメリカ大統領選と地理学・地図学
大学生の時、地理学とGISのゼミに所属していました。
「大学では地理学を勉強してました」っていうと、「あー、なんか熱帯とか亜熱帯とかそういうの?」みたいな反応をされる。
確かに、高校生までの地理ってそれだよね……うん…暗記したよね、いろんな国の首都とか……
でも違うんだ〜!地理学ってー!もっと面白いのー!
という話を世界中が一番注目していたアメリカ大統領選を題材にお伝えしたいと思います。笑
"もとは土の名前であった「ブラックベルト」は、現在では違う意味を持つ。"ってどゆこと?
というのもこんな面白いまとめを見つけたのです。
▼米南部にある民主党支持層の青い帯は、恐竜がいた一億年前の海岸に堆積した藻類の死骸の痕跡だという話
上のリンクのサムネイルにも表示されていますが、アメリカ南部はほとんどが共和党支持の真っ赤な地域。
しかし、その真っ赤な地域に帯状に青の民主党支持の地域があります。
この青い帯は、実は1億年前の海岸線と重なるというのです。
詳しくは上記のリンクを参照してほしいのですが、簡単にまとめると、
一億年前の海岸に藻類の死骸が堆積
↓
綿花栽培の良い土壌になる(多孔質の黒土地帯という意味の「ブラックベルト」)
↓
この土地での綿花収穫のためにアフリカから奴隷が連れてこられる
↓
全体に保守的で共和党な南部の中で、黒人差別に苦しんだ人の多い地域は民主党支持の地域として帯状に現れた
これ分かります?最初は自然地理学の話だったのに、最後には社会地理学の話になってるの。
地質学的年代と大統領選が結びついて壮大でしょ〜。面白いでしょ〜。
地理学って社会科科目として習うのですが、本当は文系も理系もない、融合領域なのです。
土地の上に歴史が積み重なってその地域のいろんな特徴が出てくるの。面白いよねー。
アメリカの歴史を少しさかのぼりますと、南北戦争は、アメリカ南部で黒人奴隷を使い綿花栽培でプランテーション経済を発展させ、奴隷制継続を望む南部の州と、それと相いれなかったアメリカ北部との戦争でした。
南北戦争、リンカーン大統領の奴隷解放宣言、その後の奴隷解放運動があり、今では人種差別はあってはならないこと、とされていますが、現実ではアメリカで黒人差別は根強く、2020年もBlack Lives Matter運動などが起こっていることは皆さんもご存じだと思います。
アメリカ南部にありながら、奴隷として連れてこられた黒人が多く住み、常に差別と闘ってきた人たちが多く住む地域、それが現在の「ブラックベルト」として今回の大統領選で現れた、と言えそうです。
というわけで、ブラックベルトの地理学とでもいえるようなお話がこの大統領選で見事に可視化されていたことが興味深かったので、ご紹介しました。
選挙報道と地図表現
もうひとつ、選挙報道とビジュアル表現としての地図表現の話。
4枚、アメリカ大統領選の選挙報道に使われた地図です。
各社が選挙の情勢を伝えるために、いろんな工夫をしてます。
下に上記ツイートと同じ画像を貼ります。(順序は入れ替えてあります)
ちなみに1枚目はダメな例です。
ちなみに、なぜ1枚目がダメかというと、面積の大きさと選挙人の数は比例しないから。
一番面積の大きなアラスカ州の選挙人は3人ですが、1/10のNY州は29人。
でもこの表現だとアラスカの方が影響が大きいように見えてしまいます。
よく見る一般的な地図というのは、面積と方角を正しく表記している(方角も丸い地球を2次元に落としてるという意味では違ったりするけど)、
というものなので、そこに対応しない情報をそのまま色塗りするだけじゃ、誤解を生んでしまいます。
このツイートで紹介されているアニメーションも非常にわかりやすくデータの視覚化についての影響を表現しています。
東部の青い地域などは面積の見た目は小さいですが、人口で見るとブワッと大きく膨らみますね。
土地が投票するのではない。投票するのは人間だ。
等高線とか、降雨量を示すアメダスのような気象データも馴染みのある地図表現だと思います。
その地図表現をいろいろ工夫したり、分析したりできるようにするよー
っていうのが、私がもう一つ勉強していたGIS(地理情報システム)の分野でありました。
普通のグラフ表現も同じですが、可視化すると分かりやすくなることもあれば、表現方法を間違うと誤解も生むので気を付けなければならないんですね。
というわけで、卒業以来しばらくこのへんの勉強からは遠ざかってしまっているのですが、それぞれの分野の面白さがアメリカ大統領選で分かりやすく出てたのでご紹介してみました〜!
地理学って面白いかも?と思う方はまずはブラタモリからどうぞ
地理学って面白いかも?と思ってもらえたら嬉しいな~と思ってこのnoteを書いておりますが、ぜひおすすめの番組が、NHKで放送されている「ブラタモリ」!
この番組が好きな人は地理学好きな素質があると思います。
なんせブラタモリは、2010年に日本地理学会から表彰されてるほどの番組なのですから!笑
「まちあるき」が地理学の第一歩、なのですねー。
まちあるきとかよりも、地図上でデータを可視化することに興味がある!というGIS派の方は、Google mapのマイマップ機能を使ってみるのも面白いかもしれません。
今はGISみたいなものも手軽にアクセスできて本当にいい時代ですねー。
マイナー学問のようで奥が深い地理学・地図学のお話でした。