酔えない私は
12月27日(金)
コーヒーとお菓子が無限に出てくる部屋で、今日はフレンチクルーラーをもらった。
断る言葉を考えるのも、いらいらするのもばかばかしくなって、心を無にして食べた。
「仕事納めだー」と言って浮かれていたら、その場に居合わせたよく食べるおじさんに、「来年度は配置換えの希望出すんでしょ?」と言われてぎくりとする。この部屋に居心地の悪さを感じているのも、ここでの仕事が好きになれなくていやいや働いているのも見抜かれているんだなあ。
退勤して最寄駅の本屋で「3月のライオン」の新刊を買い、カフェドクリエでT氏と落ち合う。「3月のライオン」が気になりすぎて、T氏を放ったらかして一冊丸々読み終えてしまった。
零くんが、子育てがひと段落して急に強くなった年配の対局相手と自分を比べて、僕は自分のことばっかりだ、的なことを考える場面があったけれど、いやいや10代なんて自分のことでいっぱいいっぱいなのが普通でしょ、と思う。というか零くん、三姉妹を助けてるし全然自分のことばっかりじゃない。
30代になっても、子育てや仕事に奔走して誰かのために生きている同世代と自分を比べて、同じように落ち込んでいるよ私は。
ちょうど一冊読み終えたところで時間になったので、T氏と行きつけのお蕎麦やさんに移動する。今日は予約制の「年越し蕎麦と日本酒を楽しむ会」というイベントがあるのだ。
到着すると間もなく、店長の挨拶と今日の日本酒紹介があった。
今日のお酒はこちら。どれも美味しい大好き。特に射美がすき。滅多に飲めない。
「東京一人酒日記2」の表紙素材は揃った!
いつも通りに仕事の話をして。
私は歯が痛いからいつもほどは飲まなくて。
1年間を振り返って。
美味しい年越しのお蕎麦は、最初はつゆではなくお塩でいただいた。
閉会間際、酒が回ったT氏が、「親が死んだら俺はいつ死んでもいい」みたいなことを言い出したので、あーまたか、となった。私が好きになる人はよく死にたいとか死んでもいいとかもう死ぬとか言う。
私がそういう性質の人を好きになるのか私と一緒にいるせいでそういう面が出てくるのかわからない。
「こんなこと話せるのぐりこだけだよ」と言われるけれどべつに全然嬉しくない。私に向かって話しているはずなのに、私のことなんて全然視界に入っていない感じ。二人でいるはずなのにすごく虚しい。距離を置いて病まれるのもこわい。
私もいつものように酔っぱらっていたら、優しくいたわってうちでセックスしたり、あなたが死んだら私も死ぬとか思ってもないことを言ってメンヘラ合戦に持ち込んだりできたのだろうか。
でも、私はもう酔えない。歯と頭がひどく痛むのがわかっていて日本酒で酔えない。深入りしたら痛手を追うのは自分だとわかっていて、この恋と似て非なるものにも酔えない。
T氏と過ごした一年間が終わる。
(裏死神の一升瓶をトプ画にしたら、めちゃめちゃおどろおどろしいかんじになってしまった。他意はないです)