聖地「サウナしきじ」巡礼、そして大阪一人酒日記(スナックぐりこ)
8月2日(金)
起きてから荷造りの最終チェック。昨日帰宅後に飲み直したせいで発生した生ゴミを冷凍庫に突っ込み、朝九時に出発した。
地下鉄で東京駅まで出て、有人改札で青春18きっぷを取り出し今日の日付のスタンプを一つだけ押してもらって私の一人旅が始まる。東海道線に乗って、座れたところですぐに昨日の日記書き。
東海道線を乗り継いで昼過ぎに静岡駅に着く。駅前からバスに乗り換えて、目指すはサウナーの聖地「サウナしきじ」。静岡も東京と同じくらい日差しが強くて、サウナに着く前からすでに汗だく。
車の運転ができたら駅から遠い地方のサウナももっと気軽に行けるのになあと思う。車を出してくれるサウナ仲間がほしい。今回Tが一緒に行きたいと行ったのだが、「サウナしきじは食事スペースまで完全に男女別だけどそれでも来る?」と言ったらすごすごと引き下がった。
十三時過ぎに念願のサウナしきじに到着!ついに聖地巡礼!
十四時で食堂がしまってしまうというので、先に昼食をとることにした。サウナしきじは水風呂から何からすべて天然地下水を使っていて、その天然水で炊いたごはんや味噌汁がとにかく美味しいと聞いていたので、生姜焼き定食を頼む。
米が、米がつやつやしている!
おかずも味噌汁も美味しいのだけれど、ご飯はふっくらとして甘みがあって本当に本当に美味しかった。美味しすぎて、ご飯茶碗が左手に吸いついて離れないという経験を初めてした。ひっきりなしに米を口に運んでいるからご飯茶碗を置くという選択肢がまったくなくて、「あれ味噌汁って片手でどうやって食べたらいいんだっけ」って一瞬真剣に考えた。
おつまみメニューも充実していたので、大勢であれこれ頼んでわいわい飲んだら楽しそうだなと思った。
腹ごしらえが済んで、いよいよ浴室へ。薬草っぽいにおいがふんわりと漂う浴室で、まず驚いたのは水風呂の浴槽から絶え間なくざばざばと天然水が溢れて足下に流れてくること。貴重な天然水をこんな垂れ流していいんですか! 脳内映像は完全に「マッドマックス 怒りのデスロード」でイモータン・ジョーが民衆に恵みの水をばらまくシーンだった。この水が入館料たった900円で飲み放題浸かり放題。あ、ありがてえ。贅沢すぎる。
フィンランドサウナでじっくり汗をかいたら、水風呂にざばん。水がやわらかくて本当に気持ちいい。給水口から水をがぶ飲みし顔にも水をかける。どんないい美容液よりこのサウナ&水風呂の方が肌のコンディションを整えてくれる気がする。実際この日、この後もたくさん汗をかいたけれど毛穴が引き締まったからかほとんど化粧崩れをしなかった。
これを三回繰り返した後、薬草サウナへ。薬草のにおいに癒される。床から蒸気がむわむわと立ち上ってきて、拭っても拭っても細かい汗の粒が皮膚の表面に浮かび上がる。最後に入った同じ成分の薬草風呂も全身の疲れをほどいてくれるようでめちゃめちゃ気持ちよかった。
もっともっと長居したい、というより「ここに住みたい」くらいの気持ちだったのだが、なんとしても今日中に大阪にたどり着かなければならない予定があったので心を鬼にして退館。またバスで静岡駅に戻り鈍行列車の旅を再開する。
サウナの心地よい疲労で行程の三分の一は爆睡していたので、それほど長さは感じなかった。
起きている間は吉川トリコの『少女病』を読んだ。現代版「若草物語」とのうたい文句だったが、予想以上に若草物語だった。
特にアクシデントに見舞われることもなく、心斎橋駅に到着。心斎橋駅から徒歩7分の、三ツ寺会館という建物を目指すが、Googleマップがバグって完全に道に迷った。怖いお兄さんに「5000円で気持ちよくなれるよ」などと後ろから声をかけられ、エロかシャブかちょっと興味がわいたけれど、「サウナしきじだったらその五分の一以下の値段で気持ちよくなれるんだぜ!!」という気持ちでダッシュし闇落ちを回避したのだった。
なんとか三ツ寺会館にたどり着く。私の同人誌『東京一人酒日記』を読んでくれたフォロワーさんが、この建物一階の「Bar千鶴」でファーストサマーぐりこ∞さんという方が「スナックぐりこ」をやっていると教えてくれて、それはぜひお会いしてみたいと思っていたのだった。スナックぐりこの興行日が金曜のみとのことだったので、それに合わせて今回の無謀な旅程を実行した。
「東京のぐりこです」と挨拶すると、ぐりこさんも常連客のみなさんもとても温かく迎えてくれた。大阪の人は酒を飲みながらもずっと早口で突っ込みを入れ合っているのではないかという勝手なイメージがあったのだが、やや緊張している私を話の輪(主に風俗ドッキリ)に入れてくれて、ゆっくり穏やかに会話してくれてみなさんめちゃくちゃ優しかった。今日二度目の「ここに住みたい」が生まれた。
サウナ好きのぐりこさんとサウナトークができたのも嬉しかった。東京に住みながらまだ草加健康センターに行けていない自分が、人生の半分損しているような気がしたので、帰京したらすぐに行こうと思う。
『東京一人酒日記』をぐりこさんに渡したら、お酒がたくさん並んだ棚に本を一緒に飾ってくれて泣きそうになった。この本のおかげでご縁ができて、同じ名前のぐりこさんと出会えて、また行きたいバーができた。それはすごいことだ。だって、ここは「東京」でもなければ、私は今「一人」でもない。文章を書くことで、私のちっぽけだった世界が広がっていく。
深夜一時過ぎ、名残を惜しみながら「スナックぐりこ」を後にした。ぐりこさんに勧めてもらったレディス・スパ大東洋にタクシーで移動する。これまた良いサウナ体験をしたのだけれど、詳しくは明日。