弱き鼓草
自由に舞う蝶に憧れ恋をした一輪の鼓草
蝶の背中を追うように、純白な綿毛に姿を変え、軽やかに羽ばたこうとする
蝶は決して、鼓草に止まらない
太陽に照らされた鼓草は、怪しい雲に隠されて、影を作る
空では死の通知役を託されたカラスが泣く
地では、虫が泣き、知らせる
鼓草の目の前に、淡く愛らしい桃色の小花が咲く
蝶は桃色の小花に止まり、優しく撫でるように蜜と水を与える
鼓草が願っても、願っても、与えられなかった 甘い蜜と水
蝶と桃色の小花の目に、鼓草は写らない
消えかけていく存在
花畑のように華やかな世界を目の前に、扉は閉じる
鼓草は、雲の陰に隠れて涙を流し
渇き、枯れていく
強がりのふりをした弱き一輪の鼓草
蜜と水を自らに与え、強く咲き直る
蝶の羽ばたく姿を脳裏に残しながら
再び綿毛に姿を変え、ふわりと優しく吹く風に、身を委ねて飛んだ