『水木しげるの遠野物語』
著者 水木しげる・柳田國男 発行 小学館 2010年第5刷
この本が欲しくて近くの書店で探したが見つからない。そこでBOOKOFFに行った。僕のような年配者がコミックを探してるなんて珍しいらしく、店員の青年が懸命に探してくれ、合い良く手に入った。
『遠野物語』発刊から100年の記念でこのコミック刊行もその一環。柳田國男に倣って実際に遠野を訪れたコラムも掲載。(最もこのコラムは水木氏の文ではなさそうだが) 内容も原作の題目に従ってコミックとして忠実に再現しようとしている。それにしてもいつも思うのだが、水木しげる氏の人物以外の画はルネサンスやバロックのエッチングのような緻密な線刻様でとても好きだ。
さらにコラムのなかで縄文文化との関連を思わせることがあった。それは”飢饉の際に生まれてきた子供を、育てていく余裕がなくて残念ながら間引かざるを得ない場合、子供は墓ではなく土間や台所に埋める風習があった”という件だ。この風習からザシキワラシの目撃談が生まれたという。
因みに縄文住居の発掘をしていると、住居内の出入り口に近いところに深鉢型の甕が埋まっていることがある。これは埋め甕と言って亡くなった子どもの遺体などを土器に入れて埋め、その上を住人が出入りすることで亡くなった人の魂とともに生きるという考えがあるようだ。
縄文時代から連綿と引き継がれてきた風習がザシキワラシに繋がっていることを想い起こさせるこのコラムもなかなかいい。