向日葵の頃
とある田舎町。
座敷の戸を開けて網戸にしてみる。
薄茶けた畳の上で大の字になって、
夏を謳歌する蝉の声と共に、
心地よい一時を過ごした。
時折入ってくるそよ風を感じながら・・・。
あれは一昨日の事だったろうか・・・
全ての ”悪夢” はあの一枚の紙から始まった・・・。
ヨンデン(四国電力)から届いた実家の電気料金請求書である。
請求額はほぼ9000円とある。
嫌な予感とともに苛立ちさえ覚えた。
両親は早くに他界し、
一人っ子の私であるが故に実家には誰かが居る筈も無い。
にも関わらずこの金額である。
早速異議を申し立てようとヨンデンに電話をしてみた。
担当者 『いえー調べろというので行ってみたんですが・・・』『さっきもエアコンの室外機回ってましたよ』
あり得ない答えが返って来た・・・。
嫌な予感がする。
疑心暗鬼な妄想が頭を過る。
振り切るために、意を決して実家近くの派出所に電話をしてみることに・・・。
巡査 『はい』
小生 『すいませんが実家を調べて欲しいのです』『誰も住んでない筈なのに電気料金が9000円も・・・』
巡査 『それは酷いですね。判りました ご住所をどうぞ・・・』
程なくして巡査から電話が掛かって来た。
巡査 『今現場に居るんですが先程まで回っていた室外機が・・』『私が雨戸を開けようとしたら停まりました・・・』『だれかが居る気配がします・・・』『電力メーターも回ってます!』
もう巡査が何を言ってるかさえ理解出来ない。動悸が止まらない。
何とか落ち着きを取り戻し、実際に帰省し、確認するしかないとの結論に至る。
次の日、車を飛ばし実家へと。
向日葵が焦る心をさらに突き動かせる。
交番に立寄り、昨日現場を見てくれた巡査に出会う。
年の頃は30代であろうか。屈強な体躯の持ち主である。
立ち会いをお願いした。
実家の鍵は右に回すと解錠するちょっと変わった鍵である。
震える手で静かに鍵を開けた。
ゆっくりと引き戸を開けて。
巡査 『じゃ僕が先に行きますよ』
と小声で、かすかに拳銃のホルスターに手をかけたかに見えた。
あれ?
人の出入りした形跡はない。
部屋の中のブレーカーも落としてあった。
なのにエアコンがついている。
巡査 『これは別にブレーカーがあるのでは?』『外を調べてみましょう!』
なんとエアコンの室外機の近くにブレーカーがもう一つあった。
巡査 『古い家には良くあるんですが・・・』『ブレーカーの容量が小さいのでエアコンは外から・・・』『直接電源を取る場合があるんです』
ほっとしたやら情けないやら恥ずかしいやら。お巡りさん 本当に有り難うございました。やっぱり格好良かったですよ。
要は冬に行った時にエアコンを入れっぱにして、暑くなるとともにエアコンが動き出したと。
幽霊の正体見たり枯れ尾花