統一地方選挙2023前半戦 ~勝者は無いが敗者は多数~
全体の所感
特段急がず、選挙後の支持者等の反応も含め記事として纏めました。一言で総括するなら、面白みに欠ける選挙、ですかね。
投票率の低下について
全国各地で過去最低の投票率を記録した今回の統一地方選挙。全国的に天気にも恵まれていたため、その中でのこの低下は非常に由々しき問題のように思えます。
若者の選挙離れ、というのも無論、「出来試合」が多いことも関係するでしょう。直近の宮崎県知事選挙などでもそうでしたが、接戦であればあるほど、1票に対する注目度が上がり、投票率が上がる傾向にあります。対して、今回は15の知事・市長選の全てがゼロ打ちとなりました。そんな圧倒的な情勢の中、投票所に足を運ぶ人はやはり減りますよね。実際にはマジョリティの方が有権者が寝ているというのが妥当な考え方なので、みんなが投票に行けばもっとボロ負けしていたかもしれません。
ただ、やはり投票に行くに越したことは無いです。予想外に負ける、ということも選挙では稀でありません。最近の例を挙げれば、大阪都構想の是非を問う住民投票では、否決直後に「可決されると思っていた。投票に行けばよかった。」旨を多く見かけたと記憶しています。なので良い子のみんなはとりあえず投票に行きましょう。
無投票選挙区について
今回、逆に上昇したのが無投票選挙区の割合です。選挙なのに。選挙しなかった選挙区が。これは、定員に対して立候補者が同数であった場合に起こります。よくある例は、自民現職の候補者が居り、負けることが確実視される状況で国政野党が候補者を擁立出来ない、というもの。実際、野党側の候補者数を併せても、自民・公明の候補者に及ばない、といった例も散見されます。
候補者が居なければ支持者は増えない、支持者が増えなければ候補者は立たない。このような悪循環の中で、野党各党は着実に力を落としているように感じます。「大きな塊」論が噴出する一つの理由でもありましょう。選挙において一番大事なのは「出ること」だと思います。どぶ板をしないことには、継続的な票は集まりません。ただし、選挙に出る理由根本を見失わぬように。
何もこれは今回の地方統一選に限った話ではありません。次の衆院選、特に大阪では維新以外の政党の衰退が激しく、各党の小選挙区支部長(立候補予定者)を見ると、大阪がすっぽり空いています。(これが小選挙区制のデメリットと言えばそうなんですが、この話はまた今度。)
如何に「人を育てる」か、そして「擁立する」か。どの政党にも言える共通の課題です。もっとたくさん候補者が出た方が、自分に近い考えの人も見つかりやすいし、楽しいと思いません?今回、自分の選挙区でボートマッチ使ってみましたが、一番近い候補でも一致率47%しか無かった…。
落選候補者・陣営の反省について
だめですね、これ。まるっきり分かってないです。毎回選挙の度に思うんですが。票数だけじゃなく、出口調査で他にも色々聞いてる訳ですから、細かい結果気にして次に繋げて行きましょうよ。数字はおともだちです。
恐らく、多くの有権者が気にしていないことがあります。しかし、この候補者がどういう気持ちで選挙に臨んでいたかが一番よく見えると、個人的に思っています。それが落選候補者に対するインタビューです。落選した人が、次の選挙に再び出ることも少なくないので、次の選挙の時に人を選ぶ手助けになります。
政党別の所感
自由民主党
道府県議会選挙における自由民主党の勝利ラインは、総議席数の50%の確保でした。結果として確かに50%は確保できましたが、決して勝利したとは言えない内容でした。特に、後述しますが大阪は散々です。
一つ断っておくと、勝利ラインを低く設定することで、ある程度の選挙結果でも党内の結束力を保つのは自民党の伝統的な方針です。この点、流石としか言いようがない。
一応は勝利ラインを超えたものの、一つ一つに目を向けると杜撰も杜撰で、どちらかというと不戦勝の色が強いです。今後維新が人を増やし台頭してきたり、野党再編により野党が地盤を増したりしたら、ひとたまりもないでしょう。
立憲民主党
対して不戦敗の色の濃いのが国政第一野党立憲民主党です。落ちた鳥も飛ぶ勢いで地盤が緩く、また党内も小西問題などで緩い。立てた公認候補者も少なければ当選者も少ない。散々です。「野党系無所属」が常套化していて、党勢がまるで無い。
しかしながら、決して惨敗などではなく、しっかり勝てるところでは勝っています。この程度なら代表を降ろす必要もないでしょう。というより、降ろす体力もないというのが正直なところでしょうか。
野党の地盤が弱くなっているのは極めて由々しき問題で、昔ならば与野党で分かち合ったであろう定数2の選挙区に「自自」や「自公」が並ぶ。更に先に出したそもそも擁立させない、という問題。立憲には(少なくとも今のところ)野党第一党としての責務というものがあります。無闇に色々な選挙で人材を浪費するのではなく、じっくり4年間地盤固めをしてみてはどうでしょうか。
余談ですが、自民党とは対照的に、日本社会党→民主党→(割愛)→立憲民主党と続く系譜は、逆に選挙のハードルを高くして、すぐに党指導部の責任を追及する傾向にあります。数字のお勘定が出来ていない無茶なハードルを設けてはいけない。(戒め)
今回の結果を受け泉代表の辞任を求める声がありますが、個人的には彼が党を見捨てた時が立憲の終焉だと思います。
日本維新の会
近畿地方とそれ以外で大きく差が出ました。これまでの「大阪の外では勝てない政党」は克服したのではないでしょうか。
依然近畿と都市部の一部で勝ったのみで、支持層的には自民党と対になりそうなものです。むしろなんで大阪であそこまで継続して圧勝しているのかが府外の民としては理解できないんですよね。この力が今後奈良・兵庫でも発揮されれば大きなアドバンテージであり、「大阪だけではない維新」像を作れるでしょう。
後半戦・非改選と併せ、地方議会での議席数を600まで増やすことを目標としていますが、全く現実的な数字として表れています。
余談ですが、あまり注目を浴びない馬場代表、結構な毒舌です。なんで燃えないのか疑問に思うくらいには毒を吐いているので、興味があったら調べてみてください。
公明党
一番眠れなかった政党ではないでしょうか。一部に、「維新に一番似た政党」という声があり、詳細は省くものの地盤が関西という点などで、確かに強い競合関係にあります。そんな公明党は、維新・馬場代表の発言に怯えざるを得なかったでしょう。衆院選での議席激減の恐れすらあります。
選挙結果自体は、「流石公明党」とも言える高度な票割りによって、高い当選率を誇りました。しかしながら母体の着実な衰退が見られており、「与党のブレーキ」の立場をどれだけ生かせるか、「国民の政党化」をどれだけ進められるかが今後の焦点となりそうです。
国民民主党
基本的に苦しい戦いを強いられました。多くの議席を失っています。しかしながら「たまき党」のある香川県では自民に次ぐ議会第2党に躍り出ており、維新同様、浸透力の問題とも言えるかもしれません。前香川県に行った時、「玉木雄一郎」ポスターの多さには驚きました。
無党派層の投票先になりやすい点で、維新とは競合します。知名度の上昇は急務であり、さもなくば浮動票を瞬く間に奪われてしまいます。国政選でも苦しい戦いを強いられており、反転攻勢の材料を虎視眈々と狙って、いるわけでもなく地道にこつこつ頑張るのがこの党らしいなと私は思います。実際その方が伸びるし。
日本共産党
「一人負け」とも言われる日本共産党、5つの県議会で議席を喪失、他多くの議会で議席を減らしました。
この傾向は近年一貫して見られるもので、昨今の頭痛の種はあまり関係ないでしょう。このまま行けば衰退の一歩ですが、大本営発表をしている場合ではないでしょう。
れいわ新選組
真の敗者。公認候補者9名(県議会2名、市議会7名)の全員が最下位で落選するという素晴らしい手腕を見せて頂きました。
国政にあれだけの議席を持っていながら地方で議席が取れないのは、「薄く広い」支持層を持つれいわらしいです。地方から国を揺らすことを目標に選挙に出ましたが、れいわ関係者が動揺して終わりました。
社会民主党
あれ、居た?(居た)
政治家女子48党
あれ、居た?(居ない)
参政党
参政党の地力というものをまじまじと見させて貰いました。得た議席はわずかですが、カリスマ的指導者も支持母体も地盤地域もない中で、よく戦えたと感心します。
あまり国民には浸透していないのが実情ですし、党名からしても党派色が分かりにくいです。今後力を付けていく中で、有権者からどのような判断を下されるのか楽しみです。
地域別の所感
大阪府
あり得ないレベルで維新が圧勝しました。府市長W選挙は両方ゼロ打ち。府議会は56人立候補で55人当選、市議会は50人立候補で46人当選。106人擁立しながらも落選を5人に抑えるのは前代未聞としか言いようがないでしょう。
一方惨敗したのが大阪自民。府議会では改選前から議席が半分以下となりました。安倍政権時には、自民党本部と維新の近さ故、「捨てられた」と称された大阪自民は、「腐ってたから捨てられたんじゃないの?」と思うレベル。府市議会で幹事長が落選するのは名物にする気ですか。
市長選に関しては、自由共産党の奮闘虚しく、知名度のアドバンテージを正気で押し返された形です。落選後のインタビューからして敗因を分かっていないと評価せざるを得ません。自民を離党し、アップデート大阪から出たことで自民支持層が割れたとの声もありましたが、自民支持層からも支持されないのが大阪自民なので机上の空論でしょう。というより仮にそうだとしても負けています。
奈良県
自民が分裂し、それを維新が漁夫の利で得た、と言われています。私はそうは思いません。
一番よく聞くのは、自民・茂木幹事長に責任を追及する声。曰く、「無闇に票を分散させた」と。考えてみてください。高市県連会長とその支持者が推すだけあって、もう一方の新人候補は保守的です。そんな中、現職候補が出馬を取りやめて、全ての票が集約できるでしょうか。
ゼロ打ちではなかったにしても、どのみち維新・山下知事が誕生していたと思います。この選挙の敗因は別にある、と。
愛知県
名古屋市議会を取り上げたいと思います。ここで何か特徴的な大きな動きがあった訳ではありません。ただ、今後の地方政治を見るときに重要となる象徴的な事象があります。「維新が負けた」のです。
敗因として一番大きいと言われるのが地域政党「減税日本」の存在です。今回5議席を積み14議席で議会第2党です。何を隠そう、少し前までこの政党は維新と共闘関係にありました。政策面にあっても近い箇所が多くあります。国政においても何度か共同公認をしています。
ここにおいて象徴的なのは、「維新は要らない」ということでしょう。求められている維新像とは何か、国民からどう見られているのかを再確認すべきでしょう。例えば、これは私の意見ではないと断っておきますが、「減税勢力」は十分と判断された、という説に私は関心を覚えました。
千葉県
目下の問題の影響力を不安視していましたが、杞憂に終わったようです。全国でも珍しい左派躍進の様相です。理由は知りません。尚、本県においては最終的に無所属で自民会派に所属する意思を示す人も多いため、党派別の数字を見るのみで安易には語れません。
しかし、市議会に目を向ければ維新が議席を得ており、立憲・共産も気が抜けません。
京都府
全国的にも珍しい、「自民vs筆頭共産」の構図が成立してきた共産党の支持基盤の一つですが、今回はそうもいっていられなくなりました。隣から維新が遂に勢力を得てきました。前回の参院選においては辛勝したものの、今回は一気に勢力を伸ばされる形になりました。
選挙区によっては、まさしく三つ巴で維新にトップ当選を許した区もあり、次回の国政選においても京都で勢力を伸ばすことが予想されます。
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