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知っておきたい世界のサービスデザインエージェンシー4選


サービスデザイン周辺の世界的な傾向、潮流などに興味は持ちつつ、英語に苦手意識がある人、苦手ではないし、多少は分かるけど、きちんと文章を読むのは、結構、億劫で避けがちという人も多いのではないでしょうか?

本日のnoteは、そんなあなたにお届けする「世界のサービスデザインエージェンシーをサラッと紹介」です。

読んでくださっている方々のバックグラウンド、活躍されているフィールド、立場、興味や関心も多岐に渡るのではないかと思い、特徴や強みの異なるエージェンシーを4つセレクトしました。

• UX界での雄からネクストステージへと羽ばたいた Adaptive Path.org
• とにかく大事なのは「人」なんだ!と叫ぶ livework 
• リサーチなら任せて!のスペシャリスト集団  STBY
• 実利追求!数字重視!大きめのプロジェクトをガンガンやるよ!な Engine

日本以外の国々で『どのようなエージェンシーが、どのようなプロジェクトを、どのような考え方に基づいて実践しているのか?』を概要的にでも知っておくことで、日々の仕事や学びの中でのちょっとしたスパイス&インスピレーションになるのではないかと思います。

それでは、各々を詳しく見ていくことにしましょう。

Adaptive Path .org(アダプティブパスドットオルグ)

2001年にアメリカで設立され、長きに渡り、デザイン系コンサルの草分け的存在だったAdaptive Path。2014年10月に金融大手のCapital Oneの傘下に入りました。残念ながら、それ以降、外部のコンサルティング業務は受注していませんが、2015年のUX design weekにて、dot-orgを立ち上げ、その名をしっかりと残しています。

Capital Oneの傘下に入る前の代表的なプロジェクト(対外的にオープンになっているもので)として、ペンシルベニア州ピッツバーグにある病院の神経クリニック部門 (UPMC = University of Pittsburgh Medical Centre)のサービスデザインがあります。

『目に入るもの、触れるものは全て顧客とのタッチポイント』と捉え、様々な工夫がなされています。詳しくは、slideshareでご覧ください。p.40から具体的にどのようなことを行ったのかが書かれています。

人々の喜怒哀楽が交錯し、様々な事象が複雑に絡み合う病院という「現場」。医師、患者、患者家族、働くスタッフを中心に関わる全ての人の視点から丁寧に現状を見つめ、誰にとっても心地良い場所となるよう真摯に改革に取り組んだことが垣間見えます。

dot-orgの位置付けやミッションに関しては、下記のように述べています。

Our mission is to transform communities by design. We’ll use this site as a space to share ideas (both our own and those we want to highlight from the design community), continue to host our annual events, and seek out pro bono engagements with socially-conscious groups in order to apply service experience design to meaningful challenges.
The launch of AdaptivePath.org clarifies our intent to keep an active conversation going with the design and experience community through events, idea sharing, and projects.

livework(ライブワーク)

欧州を拠点にしていますが、ブラジルのサンパウロやレバノンのベイルートにも支社を構えています。とにかく「人」に軸を置いているのが印象的かつ特徴的なエージェンシーです。

[引用元:https://www.liveworkstudio.com/]

このエージェンシーのウェブサイトは、他のサービスデザイン系のエージェンシーに比べ情報量がとても多いのが特徴です。サービスデザインに対する自分たちの向き合い方や考え方を、かなりしっかりと文章で伝えており、歯ごたえのあるウェブサイトになっています。そんな溢れる情報の中でもこのエージェンシーのスタンスを端的に表現していると私が感じた一文がこちら。

"We know that digitalisation and transformation are seen as do or die for many organisations. And to a certain extent, we agree. However, we are here to remind you that at the end of the day your customers are first and foremost humans."

ラフに、そして、ちょっとエモーショナルに意訳してみます。

「デジタル化とそれに伴う変容は、多くの組織で見られるし、それが大事であることも、私たちは、一定程度賛成する。しかーし!Liveworkは、リマインドするぞ!最終的に「カスタマー」は兎にも角にも人間なんだ!!(それを忘れんなよ!)」

ファウンダーであるLavrans LøvlieとBen Reasonは、2013年に出版され、比較的早い段階でサービスデザインを包括的にまとめたものとして定評のある「Service Design: From Insight to Implementation」の著者でもあります。この本は、翌2014年に日本語訳版も出版されたので、お読みになられた方も多いかもしれませんね。

註:社名は「ライブワーク」ではなく、「リブワーク」と呼ぶ人もいます。

STBY(スタンバイ)

ロンドンとアムステルダムに拠点を置く、少数先鋭のスペシャリスト集団という印象のあるエージェンシーです。

[引用元:https://www.stby.eu/category/services/] 

自分たちのことを Design Research for Service Innovationとし、デザインのプロセスの中でも特にリサーチに強いということを明確に打ち出しています。それもそのはず。ファウンダーの2人(Bas Raijmakers & Geke van Dijk)は、両者ともPhDホルダー。リサーチを強みとするのも納得です。

ウェブサイトでは、プロジェクトの中でSTBYが使用するメソッドが Bespoke Methodologies という括りで6つ紹介されていますが、Deep Dive Ethnography, Strategic Pilots など、どれも他ではあまり聞かないネーミングが並び、オリジナリティが感じられます。

少し古いもの(2014年)ですが、自社紹介のvimeoもありますので、興味のある方は、どうぞ↓

https://vimeo.com/100992188

Engine(エンジン)

ロンドンとドバイに拠点置く事業色の強いエージェンシーです。空港(航空会社含め)や自動車会社などトランスポート関連のクライアントが多く、ドバイ空港のプロジェクトでは、2018年のDesign Effectiveness Award を受賞しています。

[引用元:https://www.enginegroup.co.uk/]

サービスデザインエージェンシーの中では珍しく、具体的な数字をどーんと打ち出し、プロジェクトのインパクトを表現しています。こんな感じ。↓

 [引用元:https://www.enginegroup.co.uk/work/]

ウェブサイトのNEWS & VIEWSには、興味深い記事が並んでいます。例えば、今年の2月26日にリリースされた 'The Big 6' service design and CX trends report などは、面白いと思います。フルストーリーを入手するには、登録をしないといけないですが…。

そして、私がサービスデザインを知るきっかけとなったのが、Engineでした。2012年、留学先のロンドンでItamar Ferrerさん(現在は、Engineのドバイオフィスにてシニアコンサルタントとして活躍)のレクチャーを受ける機会がありました。当時紹介されたのは、メルセデスベンツの事例でした。あれから早6年…。光陰矢の如し。

<ADDITIONAL NOTE :Engineが私のエンジンになった話>

私には、東京の下町商人の血が流れています。幼い頃から「お店に立つ」ことが大好きだった私が、大学卒業後、就職先としていわゆるホスピタリティ産業を選んだことは自然なことでした。カスタマーサービスのフロントステージとバックステージの両方を経験しながら、次第に大きくなり、無視できなくなった想いがありました。

それは、

「なぜ、サービスをもっと包括的に捉えないのか」

「サービスの現場で働く人の多くが心身ともに疲弊していく現状に何か打つ手はないのか」

「お客さまも、働く人も、様々なステークホルダーも、そのサービスに関わる人すべてが幸せになれるサービスの仕組みは作れないのか」

ということ。

渡英後、EngineのItamar Ferrerさんのレクチャーをきっかけに「サービスデザイン」という分野を知り、「これなんじゃないか?!これでしょ?これだ!」と頭の中がスパークし、身体が熱を帯び、鳥肌が立ったことを今でもはっきりと覚えています。「サービスデザイン」は伝家の宝刀ではない。魔法でもない。だから、それだけで全てが解決できる訳ではないと直感的に感じはしました。それでも大きな光を得たような気持ちになりました。Engineが、私のその後の道を照らす心のエンジンになったのでした。

(玉田)

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