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位置情報×LINE 施設検索を手軽に実現!
身近なLINEで実現する施設情報の提供
今回は、自治体や施設の位置情報を、LINEという日常的に使われているコミュニケーションツールを通じて安定的に提供する。
このニーズに応えるため、AIと対話しながら試行錯誤を重ね、シンプルで安定性の高いシステム開発に取り組みました。
どのようなシステム開発においても「必要な時に、必要な人に、必要な情報を届ける」という理念は根底にあります。
私たちが今回取り組んだプロジェクトも、この理念から始まりました。自治体や店舗から「登録してある施設の位置情報をLINEでユーザーに素早く届けられないか」という要望を受け、日常でも役立つ位置情報提供システムの開発に着手しました。
ユーザビリティへのこだわり
人々が日常、様々な場面で必要とする位置情報。特に災害発生時は、人々が必要とする情報の一つが「どこに避難所があるか」という点です。
私たちはユーザーの立場になって考え、以下のようなポイントにこだわりました。
1.シンプルで迅速な情報取得
日常利用はもちろん、災害時などは特に複雑な操作は避けたいもの。LINEの操作が得意でない方でも簡単に使えることを重視しました。LINEに位置情報を送信するだけで、即座に必要な情報を得られるシンプルさを追求しました。従来の3〜4分かかる検索操作を、数秒で完了できる設計です。
2.位置情報の高精度化
実際の避難行動では、数百メートルの誤差が大きな影響を与えます。そこでハーバーサイン公式を採用し、地球の曲率を考慮した正確な距離計算を実装しました。
3.多様なニーズへの配慮
避難所だけでなく、保育所や授乳室のある施設など、状況に応じて必要な情報を選択できるよう配慮しました。一人ひとりの状況に合わせた情報提供を目指しています。
4つの開発指針:使いやすさと正確性の追求
私たちが目指したのは、次のような特性を持つシステムでした。
LINEというユーザーが日常的に使っているツールをプラットフォームとして使用
位置情報の送信だけで近くの施設が即座に分かる直感的な操作性
システム開発コストを抑えながらも、高い精度と安定性を実現
自治体や店舗との連携による情報の鮮度維持
このような課題に対して、私たちは試行錯誤を重ねながら、独自の解決策を模索してきました。
AIの最新の知見とアプローチを参考にしながら、コストを抑えつつ、ユーザーの利便性を最大限に高めるシステムの実現に挑戦しました。次章では、システム開発における具体的な課題と、私たちが歩んだ創造的な解決への道のりをお伝えします。
低コストと高精度を実現した開発プロセス
開発プロジェクトの開始時、私たちが直面した最大の課題は、コストを抑えながら正確な位置情報処理を実現することでした。当初は一般的なGoogleマップAPIの使用を検討しましたが、利用料金の問題から、より効率的な方法を探る必要がありました。
コスト面の削減
今回のプロジェクトでは、高価なAPIや複雑なシステムは使用せず、Google Apps Scriptのみで、シンプルかつ堅牢なソリューションを追求しました。
既存のツールと創造的なアプローチで、限られたリソースの中で最大限の価値を生み出すシステム設計を実現しました。
位置情報精度の壁
最初に直面した大きな課題は、位置情報の正確性でした。一般的なAPIを利用すれば精度は担保できますが、高額な費用がかかります。一方で無料のサービスは精度に欠けるというジレンマがありました。
そこで、地球の曲率を考慮したハーバーサイン公式による距離計算により、従来の500mの誤差が50m以下にまで改善されました。
データ管理の複雑さ
施設情報の効率的な管理と更新も大きな課題でした。
スプレッドシートを基盤として、施設タイプごとの検索半径設定、Googleドライブリンクの自動変換、10件までの施設情報をカルーセル形式で表示する工夫を施しました。
施設の最新情報をスプレッドシートに反映するだけで即座にLINEの配信情報も更新できる仕組みを構築し、メンテナンス工数を大幅に削減しました。
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ユーザビリティの追求
誰もが簡単に使えるインターフェース設計に挑戦しました。
LINEのクイックリプライ機能を活用し、位置情報送信を直感的に促す仕組みを構築。LINEの操作に不慣れなユーザーや緊急時の利用を想定した、シンプルで使いやすいシステムを実現しました。
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使いやすさと精度の両立
私たちが開発したシステムは、災害時の情報提供の形を大きく変えることができました。その成果をいくつかご紹介させていただきます。
まず、情報を得るまでの時間が大幅に短くなりました。
以前は地図アプリを開いて検索して…と、3〜4分ほど時間がかかっていた作業が、チャットに位置情報を送るだけの10秒程度で完了できるようになったのです。この変化は、特に急いでいる時に大きな違いを生み出します。
情報の正確さも、想像以上に良くなりました。ハーバーサイン公式の距離計算の方法を取り入れることによって、施設までの距離の誤差が大きく減少しています。
使い勝手の面でも、嬉しい変化がありました。位置情報を送信するだけのシンプルな操作で、必要な情報がすぐに手に入ります。慌ただしい状況でも、直感的に使えるシステムを目指した私たちの思いが、形になったように感じています。
システムの安定性も高まりました。
位置情報をオフにしている方でも、郵便番号や地域名から検索できるようになり、どんな状況でも必要な情報にたどり着けるようになっています。
このシステムは機能的な改善にとどまらず、利用者に安心と安全を提供する可能性を示しました。私たちは、テクノロジーが人々の日常生活を支え、より良いものにできることを改めて実感しました。また、この開発にはテクノロジーの可能性を追求する中で、人々のニーズに寄り添うソリューションの重要性を再認識しました。
人に寄り添う技術革新の次なる一歩
私たちが目指したのは、「必要な時に、必要な人に、必要な情報を届ける」仕組みづくりでした。高価なシステムに頼らず、創造的なアプローチと既存のツールの組み合わせで、革新的なソリューションを生み出せることを実感しました。
今後の展望としては、授乳室やバリアフリートイレなどの施設情報の拡充、雨の日や夜間の避難ルート提案、ユーザーの状況に応じたカスタマイズ機能の追加を検討しています。
このシステムは、技術的な成果以上に災害時の不安を軽減し、地域の安全・安心に貢献できるツールとして開発を進めたいと考えています。
限られたリソースの中でチームの創造性とこだわりが生み出した本システムを通して、技術と人間性の融合による新たなイノベーションを追求していきます。