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空母「かが」は空母では無い説

はじめに

今回は空母「かが」のお話です

海上自衛隊が保有するヘリコプター搭載型護衛艦(DDH)のいずも級2番艦「かが」が飛行甲板を台形から長方形に改修し、同時にジェットエンジンの排熱に耐えられるように甲板上に耐熱塗装を施し、これにより海上での航空機の離発着が可能なりました。

これは海自が導入を予定しているロッキード・マーティンF35Bを艦載機とし、事実上の空母として運用することを目的とした大型改修作業となります。

ただしスキージャンプ台やカタパルトなどの本格的装備の導入予定はない。

空母化改修作業

防衛省はこの空母化改修作業によって、対中国を意識した実戦的な海上航空戦力を保有することになり、戦後日本の専守防衛的な安全保障戦略の転換点となる。

左派メディアなどでは「日本の自衛隊がついに攻撃型空母を持つ!」「憲法上絶対に許されない!」などの報道がなされ大いに騒がれている状況です(いつものことですが)

しかしこの空母「かが」は、本当に空母と呼んで良いのか?という疑問があります。単純に性能やカタログスペックだけ見ても、空母「かが」は空母ではない可能性があります。

今回は、空母「かが」は軍事的に空母では無いということを解説します。
よろしくお願いします。

空母かがの基礎知識

まず最初に空母「かが」の簡単な基礎知識から始めます。

元々海上自衛隊は創設当初より、海上航空戦力としての航空母艦を保有しようと長年研究が続いていましたが、色々な事情により停滞していました。
(海上自衛隊の航空母艦建造構想)

こうゆう流れの中で、2009年ついに海自念願のへり搭載護衛艦「ひゅうが」(13,900t)が就航しました。

DDH181

「ひゅうが」の見た目は完全な空母に見えますが、残念ながら艦上戦闘機などの運用能力は一切無くヘリコプターやオスプレイのみの純粋なヘリ空母でしかありませんでした。(ヘリ最大10機搭載可能)

「ひゅうが」は311東日本大震災に救援物資をヘリ輸送し、人道支援に活躍しました。

この「ひゅうが」型をベースにして設計、大型化したものが19,500tの「いずも」型護衛艦です。


DDH183

そして「いずも」型の2番艦として2017年就航したものが、今話題の空母「かが」というわけです。

いずも型2番艦「かが」(DDH184)
建造費 1170億円
基準排水量 19,500t
満載排水量 26,000t
全長 248m
最大速度 30ノット
乗員 520名
搭載機ヘリコプター最大14機
母港呉(第1護衛隊群所属)


空母「かが」正面

「かが」は海上自衛隊が保有する水上艦艇の中で、最大規模の大きさを誇り、旧日本海軍の正規空母「飛龍」よりも大型で、アメリカ海軍ヨークタウン級と同じくらい規模となる。

他国の海軍だと、イギリス海軍の軽空母インヴィンシブル級に相当する性能を持っている(あちらさんはスキージャンプ台を装備しているという明確な違いはあるが)

約2万tクラスのヘリ空母である「かが」に、今後搭載予定の艦載機として
ロッキード・マーティン社製のF35Bが予定されています。


ホバリング中のF35B

F35Bは高性能な第5世代多目的ステルス戦闘機で、短距離垂直離着陸能力=STOVL機能を持ち対空戦闘や対地攻撃任務などの活躍が期待されている。

もしも空母「かが」にF35Bが搭載されるのならおそらくは10機前後が載せられるはずです。

世界の空母との性能比較

ここからは、現代兵器として空母「かが」の性能を比較検討してみようと思います。実際「かが」はどのくらい使える兵器なのかを考えてみます。

比較対象と取り上げるのは、アメリカ海軍の新型空母「ジェラルド・R・フォード」と中国人民解放軍の新型空母「山東」です。


ジェラルド・R・フォード


山東

これらは有事の際に、海自の空母「かが」が共同作戦を取る可能性のある友軍の空母と、実戦の相手となる仮想敵国の空母として取り上げています。

満載排水量
JRフォード 102,000t
山東 67,000t
かが 26,000t

全長
JRフォード 337m
山東 315m
かが 248m

エンジン出力
JRフォード(原子炉) 280,000hp
山東(ボイラー) 200,000hp
かが(ボイラー) 112,000hp

乗員数
JRフォード 約5000名
山東 約2500名(推定)
かが 約520名

艦載機搭載量
JRフォード 約70機
山東 約40~50機
かが 約10機

空母「かが」は中途半端

今回の結論として、海自の空母「かが」は純粋な空母として見ると中途半端なシロモノであるということが言えます。単純にカタログスペックだけ見ても、空母「かが」に海上航空戦闘は不可能なことがわかります。

「かが」の航空機搭載量はわずか10機ほど、ヘリでも最大で14機までしか乗せられない。

仮に台湾有事などが起きた際に、空母「かが」と「山東」が直接戦闘した場合、単純な航空戦力の差で日本側が敗北する可能性が高い。

日本の空母「かが」10機vs中国の空母「山東」50機
日中の航空戦力比率1:5で日本側の負け確定

このように空母「かが」を海上航空決戦用の主力兵器としては、考えることは難しい。では空母「かが」は一体何なのか?という話になります。

空母「かが」の正体は【島嶼部防衛用の航空支援移動基地】ということ。

その証拠に「かが」に搭載予定の艦載機はF35B、これは空母搭載を目的とした海軍仕様ではなく、ハリアーⅡと同じように垂直離着陸運用での地上支援を目的とした海兵隊仕様です。

空母「かが」のスペックと搭載航空機を見れば対空母用のアセットではなく、どちらかと言えば強襲揚陸艦に近い装備であるといえます。

「かが」の正体は強襲揚陸艦(に近いモノ)


ワスプ級強襲揚陸艦

「かが」の実戦的な運用シミュレーションとして、中国軍に占領された日本南西の島嶼部に対して海自の水上艦隊が島嶼部周辺の敵を制圧し、爆装したF35Bを搭載した「かが」によって航空支援を受けた陸自の特殊作戦群や水陸両用部隊が、島嶼部を奪還し防衛する。

仮にここで中国海軍の空母「山東」や「遼寧」が接近してきた場合は、アメリカ海軍第7艦隊の空母打撃群がこれに対応する。

こんな感じの流れになると思います。

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