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歴史的建築物の魅力について
こんばんは。今日もお疲れさまです。
たまには建築の話でもしようかと。
最近は観光振興で歴史的なまちづくりを進めている自治体も多いですよね
。
そんな歴史的建築物の魅力について、現代の建築物との違いといったところから自分の考えを書いていきたいと思います。
古代の建築物に求められているもの
古代の建築物は見た目重視です。(もちろん機能的にもいろいろ考えられていはいます。)
たとえば西暦600~700年代においては天皇を中心とした国家としてそのスタートを切ったばかりであり、天皇が中心であることを示すためには武力的な支配はもちろんのこと、その財力や象徴性を示すことで権威を保つ必要がありました。
そこで重要な鍵を握るのが建築物です。(あとは大きい都の造営など)
竪穴式の住居が主だった当時において、唐風の朱色に染められた木造建築物を建築することで視覚的・直感的に権威を示すことができました。(古代のひとは朱色に染められた建築物をみてその見事なさまを「あおによし」という言葉で言い表したという説もあるようです。)
また、古代に限らずとも中世・近世、あるいは近現代においても人々の感情を扇動したり、権威の象徴として華やかな建物が建築された例は数多くあります。例えば宗教建築物などは一般的に人々の宗教心を増強させるために象徴的で立派な建物(寺院やら教会やら)をつくりがちですよね。
国家の権威を示すための建築物と、信仰心をより集めるための建築物とは根本的に通ずるものがあるのかもしれませんね。あるいは国家への自発的な服従心と信仰心の共通性と言い換えることができるのでしょうか。
人々の心を動かすための建築物に求められるのは「外観」、そして建物の中に入ったときの「空間性」です。要するに「見た目」です。
人の心を動かす建物を作ろうという発想があったからこそ、古代の建物は人を惹きつけるのです。古いから人を惹きつけるのではなく、人の心を惹きつけるからこそ現代まで残っているのです。
現代の建物について
一方現代において、建築物で人々の関心を集めるといった事例といえば集客のために美術館や駅などで意匠を凝らすことによるものといったところで、かつての建築のような役割はあまり期待されていないようです。
人々の関心を集めるといった役割は現代においては企業におけるCM(あるいはそれに出演する俳優など)に取って代わられているようですね。
商品経済が成熟しテレビやネットが普及した社会においては、人々の欲求にそった商品が製造され、また欲求のイメージをわかりやすく伝えることで購買意欲をかきたてることが重要となります。(例えば清楚なイメージの化粧品のCMにはそれを象徴するような女優が起用されるでしょうし、活発なイメージであればそのような女優が起用されます。)
このような経済構造はイメージをわかりやすく伝えるため、女優や俳優を発掘・育成する市場の発展につながります。(「推しの子」の世界ですね。)
このような時代の流れによって建築が担ってきた役割は段々と消失していきました。いまや建築物の役割は経済的なコストで環境に配慮しつつ、必要十分な機能をもたせるといった、味気ないものになってしまいました。
もちろんそのような制約の中で工夫して生まれた建築物はある種の機能美を持っていることはたしかです。
ただし、かつてのなめられたら終わりの世界において、国家の存続をかけたような、迷える衆生の信仰心を全霊で集めようとするような、そんな見た目に真剣にこだわった建築物というのは、現代のような時代の流れには生まれようがないんですね。
歴史的建築物の価値というのはその時代にしか生まれようがない、これからの時代には作ろうにも社会的につくることができない。そういうところにもあって、ここに歴史的建築物の保存の意義といったものもあるのだと思います。
そういう視点でみるとまた違った見え方がして、歴史的な建築物の魅力を再発見できるのではないかと思います。