面接でキレ散らかして採用された話
しおん あいです。
AI関連とは全く違う話なんですが、もうはるか昔、大学という学び舎を卒業したとき、社会人というものに、期待と夢と希望に、無い胸を膨らませていた、そのころの若き日の私の話です。
会社勤めを始めるためには、まず「面接」というクエストをクリアしなければなりません。
私は、適当にちゃらんぽらんに生きてましたので(今もですが)、面接とかいうものが一体何なのか、良く知らないまま就活を始めたんですね。
もちろん、エントリーシートの書き方だの模擬面接だの大学でセミナーをやってくれてたので、ある程度の対策は出来ていました。
どこへ行っても恥ずかしくない完璧な就活生!になれたと思っていました。
あの会社の面接を受けるまでは。
大学の4年生になって、すぐに就職活動を始めたんですが、IT関連なんてどこも人手不足で、正直な話売り手市場でした。
そこで私はとあるシステムベンダーの面接を受けに行くことにしたんですね。いわゆるベンチャー企業です。
書類が通り、一次面接も無事に通り、あとは社長面接とかいうラスボスバトルを残すのみとなりました。
指定された日時の10分前に会社に到着し、身だしなみを整えて事務所にお邪魔しました。ちょうど5分前で社会人としてはまぁまぁ良いと思うんですよね。
そこで元気に「失礼します!本日、11時より、面接の予定をさせていただいております、しおん あいと申します!」
と挨拶すると、この世の美をすべて集めてきたんじゃないのかというほどの美しいお兄さんに(お姉さんじゃないんですよ)お兄さんに、「あ、伺っております。こちらへどうぞ。」と別室へ案内されたわけです。
内心私はドキドキですよ、背中と脇は滝汗ですよ。こんな美男子画面の中でしか見たことないわ!惚れてまうやろーっ!じゅるり。
とド変態なことを考えながら、面接がある会議室に案内してもらいました。
「失礼します!」と元気に会議室にお辞儀をしながら入室し、じっと立っていると、美男子社員さんがとろけるような王子スマイルで「緊張してますか?大丈夫ですよ。さぁ、おかけになってお待ちくださいね。」と言って、すっと椅子を引いてくれたんです。
ホテルかよ!ホテルで食事するときに、椅子をすってやってくれるやつやん!どうしよ!私臭くない?滝汗かいてるし、いやもう無理、はやくどっかいって!(複雑な乙女心)
と思いながら「恐縮です!失礼します!」と椅子に座らせてもらいました。
王子スマイル美男子社員さんは、ニコニコしながら一礼すると、部屋をそっと出て行かれました。
執事か!セバスチャンか!セバスチャン・ミカエリスか!ファントムハイヴ伯爵家か!ここは!
ともはやがたがた震えが止まらない私だったんですが、静かにドアが3回ノックされたので、「はい!」とクソでか声で返事をしました。
すると今度は、どこのお嬢様やねんって言うぐらいの美女がお茶を持ってきてくれたんですね。ペットボトルの伊〇衛門。そのまま。まるっと。
今の私だと、ん?と思うんですが、その時の私はもう美男子からの美女にもう頭の中はみっくちゅじゅーちゅですよ!
「ありがとうございます!いただきます!」
と勢いよく立ち上がり、ペットボトルを受け取ったんですね。
これまたすべての男子の心をつかんで離さず引きちぎらんばかりの上質の微笑みを浮かべながら伊〇衛門美女は「うふふふ、そんなに緊張しないでくださいね」と言って、私に一礼して、颯爽と会議室を去っていきました。
ぽかーんですよ。どないなっとんねん。この会社。
え?IT企業やんね?間違ってないやんね?なんか、エンタメ系の会社に来た?芸能事務所に来た?え?あっれー??おっかしいなぁ。
と思っていたら、ドアがノックされたので「はい!!」とまたクソでか声で返事をしました。
今度は頭がちょっと寂しくなった、お腹が大きく出っ張った、恰幅のいいおじさんが入ってきました。
さっきの伊〇衛門美女と王子スマイル美男子も一緒です。
この人!この会社のWEBサイトで見た!
社長が来た!ラスボス来た!と思い、そのまま天井を突き破らんとする勢いで椅子から立ち上がり、
「こんにちは!しおん あいです!本日は面接の機会をいただきありがとうございます!よろしくお願いします!」
と滑らかに思っても無いことを元気に口にしました。
おじさん社長は、「あー、どうもどうも。まぁ、座って座って。堅苦しいの嫌いだから、楽にしてよ。」
と言って、椅子にどっかりと座りました。
その時、椅子からネズミが鳴くような猫が鳴くようなおじいちゃんの咳払いみたいな音が鳴ったのを覚えています。
「はい!失礼します!」と私も椅子に座り、面接というラスボスバトルが始まったわけですね。
美男美女の二人は、あとで知ったんですが人事担当の方で、男性が課長、女性が係長だったそうです。それはどうでもいいんですが。
で、月並みな質問から始まるわけですよ。
志望理由、入社したら何がしたいか、どんなことがしたいか、などなど良くある質問をしてきたんですね。
私も理系の大学を出ていて、そこそこ成績も良かったはずなんですが、その部分には触れもせず、なぜかお説教が始まったんですね。
「最近の若者は我慢が足りない。すぐにいやなことがあると逃げる、仕事をしなくなる、何よりも人の話を全く聞かない。なぜ大人の言うことが聞けないのか、うんたらかんたらへーへーほーほー」
と、持論を展開し始めたんですね。
私は笑顔を絶やさず「えぇ、なるほど、私もそうならないようにいたします!」みたいなことを言っていた気がします(おぼろげ)
「で、君は、金っちゅうもんについて、どう思ってるん?」
と聞かれました。
心の中で私は「は?何言うてん、このおっさん、ていうか、面接やろ?うちのことは興味ないんか?大学で何してたん?とか研究室ではどんなことしてたん?とか学生生活で得たものは?みたいなん無いんか?うちに興味ないんか?このうすら〇ゲが!自分の話ばっかりやんけ、なんじゃこの構ってちゃん。きもっ」と毒蛇も泣くぐらい毒づいてしまったんですね。
それを口に出すのは簡単なんですが、もうこの会社は無いなと思って、マイルドに私も持論を展開したんですね。
「お金とは、権力の象徴であり、お金で買えるものすべてを手に入れる道具であり、自由を得るための人生の選択権です」と答えました。
は?みたいな顔をされて、ぶっと笑われたんですね。そのうすら〇ゲに。
「なんもわかっとらんなぁ、若いなぁ君は。金で買えないものなんかいくらでもあるやろ。例えば、愛とか命とか(どやぁ)」
と言われたんですよね。
その時の腹立つ顔!もう、ラスボスにふさわしい憎たらしい顔よ!
もうわたしもぷちーーんですよ。こんなクソ会社、こっちから願い下げじゃ!と私もヒートアップし、
「愛ですか?買えますよ。何言ってるんですか。金があれば愛も買えるし、金がなきゃ愛も持続させられない。命ですか?確かに買えない。けれど健康は買える。命を繋ぐための手段を金で買える。金っていうのは生きていくためのj」
ここまで言ったら、急に〇ゲが怒鳴りだして
「生意気なこと言ってんちゃうぞ!!金よりも大事なもんはいっぱいあるやろが!!」とすんごい剣幕で怒鳴り散らかしてきたんですよね。
すかさず私は
「おーおー、そういうけどな!さっき、あんたはこう言うたで。『最近の若もんは我慢がたらん。すぐ逃げる、人の話を最後まで聞かん』だのなんだの。それはお前やんけ。お前が言うな!まずそれができてから言え!お前ができてもないことを人に押し付k」
「黙れ!このk」
「黙るのはお前じゃこの老〇が!!話を最後まで聞け言うとるやろがい!ワレ!あたまんなかズンベラボン(すっからかん)なんか!そうやって両脇に美男美女をはべらかして(はべらせて)、自己肯定感を上げることしか能がないんやろが!見てみろ!わしはこんなべっぴんとイケメンを社員にかかえとるんやぞ!すごいやろ!とでも言いたいんか!おっさんほんま、なんも分かってへんな!金を稼ぐ言うことをうちが教えたろか?あ゛ぁっ!?金っちゅうもんは魔物じゃ!魔物をどうやって飼いならすかが金儲けなんじゃ!金さえあれば何でもできる!世の中金じゃ!金がすべてじゃ!金があれば女も手に入る!金があれば男も手に入る!金があれば、地位も名誉も権力も、そして自由が手に入るんじゃ!愛だ?命だ?きれいごとで金が稼げたら苦労せぇへんわ!わかったか〇ケ!」
みたいなことを口走りました。
相当な罵詈雑言&暴言の数々。本当にお詫び申し上げます。
こんなところでしても無駄やけど。
その後はもう社長は激おこぷんぷん丸ムカチャッカファイヤー(?)でしたよ。
バーンと机を叩いて椅子を蹴り飛ばして立ち上がって、ドーンとドアを開けて出ていきました。
討伐成功です!
伊〇衛門美女は慌てて〇ゲを追いかけていきました。
王子スマイル美男子社員さんの顔は、ものすごい強張って恐怖に震えている様子でした。ネズミみたいでかわいかったです。ゾクゾクしました。(ド変態)
「帰ってもよろしいでしょうか。」
私は何もなかったように言うと
「あ、あぁ!はい!お疲れさまでした。お送りしますね。」
と言われましたが、
「いえ、結構です。あなたの世話になるつもりはもう一切ありませんので。一人で帰れます。」
と一ミリも可愛くない返事をして、机の上に投げっぱなしになっている私の履歴書を取り、
「これ、個人情報保護の観点からも破棄していただける確約が欲しいのですが」
と、もう業者かなんかですよね。
「え!あ、そうですね。責任をもって破棄させていただきます。」
と答えられたので、
「よろしくお願いします」
とだけ言って、さっさと帰りました。
面接でこんなに怒られて怒鳴られて、私も切れ散らかしたのは後にも先にもないですね。あ、先はわからないか。
ほんとによく覚えています。映画でも見てるような感じで、あの時の部屋の感じとか匂いとか、登場人物の顔もはっきりと覚えています。
言葉のすべてを覚えているわけではないですが、大体、上のようなことを言いましたね。
その社長さんの言葉じゃないですけど
生意気な子供でした。はい。
なので、私は人の話を遮って、持論を展開し始めたら年寄だなと思いました。
私は年寄になりたくないんですよね。写真家の植田正治さんも言ってました。
年寄りにはなりたくないなぁ。
せめて、若者たちの声は最後まで聞くようにしようと、思ったのでした。
あ、後日なぜか採用の連絡が来たんですよね。
恐怖と狂気しか感じませんでしたよ。
履歴書とか破棄する確約を口頭でも得たはずなのに。
丁重に辞退しました♡
ではまた。
しおん あいでした。