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私が聞いた、大谷グローブのコト

大谷グローブを覚えているだろうか?
全国の小学校に大谷選手から贈られた、あのグローブ。保管方法で物議を醸した記憶のある、あのグローブ。

私は一時期、小学校の子ども教室の先生をしていた。放課後だけの先生である。
我々先生も病気になったりして、人手が足りなくなる事がある。そういう時は、市内の他の学校から助っ人に来ていただく。
その、助っ人先生から聞いた話。

「この学校の大谷グローブは、どこにあるの?」と、その先生に聞かれた。考えたことも見たこともない。そうだよ、ここは小学校だ。大谷グローブがあるはず。
「いや~、見たことないですね。授業とかで使っているんじゃないんですかね?」
曖昧に答えた。すると
「うちの学校では、放課後になると、先生(子ども教室ではなく、本当の小学校の先生)が、バケツに入った大谷グローブとボールのセットを校庭にドンと置いておくんだよ」
と、教えてくれた。
「へぇ~、遊んでいいんですか?」
「もちろんだよ。《わ〜、グローブ初めて触った》とか、《何でここにボールあんの?》とか言いながら、子ども達はキャッチボールしてるよ。」
「持って帰っちゃったりしないんですか?」
「はは、するわけないじゃん。遊んだらまたバケツに戻して、時間になると先生が取りに来て、また次の日の放課後に出てくる。」
「取り合ったりしないんだ?」
「しないね」

どうも大人の私は、大谷グローブの大谷の部分に価値を見いだしてしまいがちになる。聞くところによると、保護者の中には(えっ、大谷選手のグローブあるんですか?)と話を聞きつけて見に来る人もいるという。私と同じタイプだ。

子どもはキチンとグローブの価値を分かっていて、野球チームに入っている子が、グローブのつけ方を教えてあげたり、ボールを遠くまで投げるコツを指導したりして楽しんでいるらしい。

グローブをはめて、ボールを投げて、取って、野球の楽しさを知ると、グローブは次の人に渡す。グローブを通して得た経験に価値があるのだ。

その小学校の大谷グローブは、汚れているという。先生達が手入れをしているようだが、グローブは、くたびれてゆく。
そして、子ども達の笑顔が増える。

「ねぇ、それ、いい話じゃないですか?
大谷選手はそういう風にグローブ使って欲しかったんですよね。」
私は続ける
「その小学校で《グローブ使ってるよ〜》って大谷選手に教えたいですね」
私は本気でそう思っている。
しかし、私はまだ大谷グローブを見たことは、ない。




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