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神?世界最古のラノベ主人公になったヤツらのことさ〈日本神話から見る日本の成り立ち①〉

⚠️当記事には少々過激な表現、不快に感じる表現があります。ご注意ください。


1.日本神話とは

イザナギ、イザナミ、アマテラス、スサノオといった、神道及び日本神話に燦然と輝く神々。彼らの存在はいわゆる『日本神話』において語られております。
この日本神話ですが、その出典としてそれぞれ『日本書紀』『古事記』、そして各地に存在する『風土記』をベースとしており。さらに言えばそれぞれで神話の内容もほとんど違っています。
それでも日本という国の成り立ちや、その中心となった神々の構成など、大まかな部分は共通しています。
今回はその中から、神話の始まりである『天地開闢(てんちかいびゃく)』から日本の成り立ちを見ていこうと思います。

2.天地開闢

天地開闢――それは、宇宙において天地が生まれた瞬間のことを指しています。生まれたばかりの天地、高天原(たかまがはら)と呼ばれる場所には、髪が生まれることとなります。『古事記』『日本書紀』双方にも、現れる順番に多少の差異はあれど、いずれも名前は共通しており――

天之御中主神(アメノミナカヌシ)
高御産巣日神(タカミムスビ)
神産巣日神(カミムスビノ)
宇摩志阿斯訶備比古遅(ウマシアシカビヒコヂ)
天之常立神(アメノトコタチ)
国之常立神(クニノトコタチ)

彼らはそのように呼ばれています。なお、上述した神々には性別が無いとされております。
日本書紀において、高天原に最初に現れたのはアメノミナカヌシとされていますが、古事記においてはクニノトコタチが最初に現れた神であるとされています。
伊勢神宮を中心に信仰されている伊勢神道においては、このアメノミナカヌシとクニノトコタチはそれぞれ豊受大神(トヨウケノオオカミ)と呼ばれる神として同一の存在とされており、伊勢神宮外宮の祭神として祀られております。
伊勢神宮の祭神は天照大御神であることは周知の事実ですが、豊受大神はその立場上、アマテラス以上の神格を有しているとされており、伊勢神宮参拝の際は必ず外宮から参拝するのが礼儀とされています
何しろ、この日本に最初に現れた神です。いわば日本の創造神ということになります。そんな彼らが神話上でしたことはーー

アメノミナカヌシ「ほ~ん、天地ができとる。おもろ(チラ)

――具体的に言うと、姿を現して、すぐに姿を隠しただけです。これは他の神々も同じであり……

タカミムスビ「ミナカさんが天地が出来とるって言ってたけどどんなもんなんやろ。……ほ~ん、おもろ(チラ)

カミムスビ「タカさんが天地が出来とるって言ってたけどどんなもんなんやろ。……ほ~ん、おもろ(チラ)

アメノトコタチ「白って200色あんねん、黒はね、300色ある。ほんでな、空って無限に広がってんねん。おもろ(チラ)

ウマシアシカビヒコヂ「天地が気になって葦と同じくらいのすごい速さで成長してやってきました!なんか海に浮かぶクラゲみたいですごくかわいかったです!

なお、クニノトコタチに至っては姿を現すことすらしていません。ずっとスタンバっていたんでしょうか。
というか、ある意味スタンバっていました。実のところ日本書紀においては、アメノミナカヌシからウマシアシカビヒコヂまでの五柱の神々は『別天津神(ことあまつかみ)』と呼ばれており、クニノトコタチから先に出現した神々は『神代七代(かみよのななよ)』と呼ばれております。
この神代七代と呼ばれる神々ですが、七人の神々がいるというわけではなく、クニノトコタチ、及びクニノトコタチの後に現れたトヨクモノという神の後に出現する神々が全て兄妹であり、二柱で一代と数えているためです
この七代の神々をまとめるとーー

・国之常立神(クニノトコタチ)
豊雲野神、または豊斟渟尊(トヨクモノ)
宇比地邇神(ウヒジニ)、須比智邇神(スヒジニ)
角杙神(ツヌグイ)、活杙神(イクグイ)
意富斗能地神(オオトノヂ)、大斗乃弁神(オオトノベ)
淤母陀琉神(オモダル)、阿夜訶志古泥神(アヤカシコネ)
伊弉諾(イザナギ)、伊弉冉(イザナミ)

ーー神代七代

となっています。この神代七代の内、恐らく親の名前以上に見たであろう名前の神々、イザナギとイザナミが神話上、もっとも重要な出来事を行います

3.国生み

神々「なんか下界の、あの、あれ、海の上にさ、大地が浮かんでいるんよ。ラーメンのスープに浮かぶ油みたいな感じでさ。」
イザナギ「はあ。」
神々「なんか気になるしさ、天沼鉾(あめのぬぼこ)渡しとくから、これで大地まとめといてくんない?」
イザナギ「はあ。」
神々「思ってるほど簡単だよ、こう鉾でくるくる回しとけば勝手に固まってくからさ。ラーメンのスープに浮かぶ油を繋げるより簡単な仕事よ。」

と、高天原の神々に命じられ、イザナギ、イザナミの二人は天界と下界の間にある天浮橋(あめのうきはし)に立ち、下界の海に向かって天沼鉾を突き刺します。
そうして『こ~ろこ~ろ』と音を立てて鉾をかき回ていきます。この時に、鉾を抜いて滴り落ちた潮が一つの島となり、『オノゴロ』という名付けられました。

イザナギ「なんか案外楽しいな。世界を作るの。」
イザナミ「高天原もこんな感じだったのかしら。」

ーー『天之瓊矛を以て滄海を探るの図』小林 永濯

そうして出来上がったオノゴロ島に降り立つ二人。そこに天の御柱(あめのみはしら)と呼ばれる柱と、八尋殿(やひろでん)と呼ばれる建物を建てると、二人は婚約の儀式を行います。
イザナギとイザナミは天の御柱をそれぞれ左回り、右回りで回り、出会い頭にお互いの魅力を伝えあいます。さて、なぜここで婚約の儀式を行っているのかというと、国を生み出す方法が、人が人を産む方法と同じだからです

イザナミ「さあさあイザナギさん!早く早く!」
イザナギ「お、おう。」

そうして神々を生み出していくイザナギとイザナミですが――最初に生み出した『水蛭子(ひるこ)』、次に生まれた『淡島(あわしま)』は国や島と呼ぶにはあまりに不出来だったらしく、国生みは困難を極めました。え、ガチャ?

イザナミ「う~ん、何故かしら?イザナギさん、何か分かる?」
イザナギ「なんだろうな……もう少し海をかき混ぜてみる?」
イザナミ「そこじゃない気がするのよ、どうも。」
神々「あ~もしもし、お二人とも。」
イザナミ「あ、お疲れ様です。」
神々「あの……これさ、あんまり今、すごく言いづらいんだけど……あのね、イザナミから先に声かけたよね。」
イザナミ「え?はい。」
神々「婚約ってね、あの、あの……お、男の方から声かけないとダメなの。だからじゃない?」
イザナミ「だからか!ありがとうございます!
イザナギ「というか吃り過ぎだろ、何かマズいことでもあるのか?」
神々「い、いや……あの……フェミ……。」
イザナギ「は?」
神々「いいからさっさと国作れよ!もう野暮ったいなあ!」

神々からのアドバイスを受けて、改めて婚約の儀式を行ったイザナミとイザナギは、今度こそ国を産んでいくことになります。大八洲(おおやしま)と呼ばれる――淡路島を始めとして、本州、四国、九州といった島々を生み出していき、その流れで神々も生み出していくことになります。

余談ですが、この国生み神話には北海道と沖縄は含まれていません。
というのも、日本書紀及び古事記が成立した当時(西暦700年ごろ)、北海道と沖縄は未発見の地であり、そもそもその存在が認知されていなかったためです。

4.黄泉比良坂

そうして国々、神々を生み出したイザナギとイザナミでしたが、火の神である火之迦具土神(ホノカグツチ)を産んだ際に悲劇が起きました。カグツチを産んだ際に火傷を負ったイザナミは、それが元で亡くなってしまいます。
この悲劇を目の当たりにしたイザナギがした行動がーー

イザナギ「何しとんじゃこのクソガキャアアアアア!!!!」

と、神剣『天之尾羽張(アメノオハバリ)』でカグツチを殺害、この時に飛び散った血から、また新たな神々が生まれることになりますが、それはそれとして情緒ヤバいって。その後、イザナギはイザナミの遺体を比婆山と呼ばれる山に埋葬。しかし、それでもイザナミに会いたい気持ちを押さえられなかったイザナギは、死者が集うとされている黄泉比良坂(よもつひらさか)へと行きました。

イザナギ「イザナミ!」
イザナミ「イザナギさん……」
イザナギ「国生みはまだ終わっていない!ここから出て、もう一度……」
イザナミ「イザナギさん……お気持ちは嬉しいのですが……私は、既に黄泉の国の料理を口にしてしまいました。
イザナギ「黄泉の国のしきたりか……。」
イザナミ「ですが、気持ちは嬉しいという言葉は本心です。なので、黄泉の神々に相談してみます。」
イザナギ「イザナミ……!」
イザナミ「ただし、話し合っている間は決して覗かないようにお願いします。

イザナミはそう言って、イザナギをその場に残してその場を後にします。

イザナギ「……頼む。」

一時間待ちーー

イザナギ「………。」

一日待ちーー

イザナギ「………。」

ああ……えっと……

イザナギ「……長くね?」

随分長い時間待っているものの、いつまで経ってもイザナミは戻ってきませんでした。

イザナギ「……チラッと、見るだけならよくね?」

そう言って、イザナギはイザナミが歩いていった方向へと歩いていきました。そしてーー

イザナギ「うぁ」

彼が目の当たりにしたのは、疫病の神、火災の神といった黄泉の国の神々を囲むイザナミの姿でした。その姿は蛆が湧くほどに腐敗しており、見るもおぞましいものとなっていました

イザナギ「バケモノォォオオオ!!!
イザナミ「見るなつったよなァァアアア!!!

恐れ慄いたイザナギは逃走、イザナミは怒り狂ってイザナギを追いかけるという、R-18G指定必須のトムとジェリーが黄泉比良坂で繰り広げられることとなりました
そうしてどうにか地上まで逃げおおせたイザナギは、黄泉比良坂と地上を通じる穴を大岩で塞いでしまいます。

イザナミ「逃げるな卑怯者!!逃げるなァ!!」
イザナギ「来るなバケモノ!!」
イザナミ「ふざけんなお前!!絶対許さねえからな!!黄泉の国の長になって、お前が汗水垂らして育てた人間を毎日殺してやるからな!!
イザナギ「ぐ、具体的に何人殺すんすか?」
イザナミ「千人だ!!毎日千人だ!!ひと月もすれば三万!!年一つには幾億にも及ぼう!!クハハハハハ!!」
イザナギ「ならば俺は産屋を建て、一日に千五百の人間を作ろう。それならばひと月に一万五千が生き、年一つには幾千万が生き残ろう!」

そうして黄泉の国で得た汚れを落とすイザナギ。この時、イザナギが左目を洗った際に天照大神(アマテラスオオミカミ)が、右目を洗った際に月読尊(ツクヨミノミコト)が、鼻を洗った際に素戔嗚尊(スサノオノミコト)が生まれました。

三貴神と呼ばれるアマテラス、ツクヨミ、スサノオに、イザナギはそれぞれ高天原、夜、海原の統治を任せて姿を隠すことになります。そして、イザナミは宣言通り、黄泉の主神となり、黄泉津大神(よもつおおみかみ)道敷大神(ちしきおおみかみ)と呼ばれるようになりました

なお、この時のイザナギ、イザナミの壮絶な応酬によって人間に寿命という概念が定められたと言われております

さて、これ以降の神話の流れですが――

アマテラス「もうイヤだ!!バカ!!アマテラスもう知らない!!」
ウミサチ「だーかーら!!釣り針返せっつってんの!!お前人から借りたモン失くすとか脳みそ腐ってんじゃねえの!!?」
ニニギノミコト「え?おかしくない?それ。え、じゃあさ、それ俺の子じゃないってことだよね。え。それってさ。え。俺以外のヤツと……ってことだよね。それ。」

何かおかしくなっているようです。

〈続く〉

5.現実に見える神話の痕跡

記事を締める前に、日本神話に名前が出てきた淡路島。その周辺の沼島(ぬしま)と呼ばれる島には、日本神話に由来する場所が多く存在しています。
イザナギ、イザナミを祭神とする伊弉諾(いざなぎ)神宮を始めに、地元の人たちからオノコロ様と呼ばれた山を神体とする自凝島(おのころ)神社、神話の中で、イザナギとイザナミが婚約の際に用いたとされている天の御柱。その天の御柱とされている上立神岩(かみのたてがみいわ)などーーどこか神話の息吹を感じさせる場所が点在しています。

ーー沼島の名所『上立神岩』

また、淡路島にはもう一つ、オノゴロ島だったのではないかと言われている小さな島、絵島があります。自然としての美しさを全面に感じさせるその姿と、淡路島という神話の中心に属することから『オノゴロ島だったのであはないか?』という話が出てきており、平安時代には絵島を題材とした歌が詠まれていたりします。
神話のロマンに思いを馳せてみたい方は、是非一度訪れてみてはいかがでしょうか。ここまでご高覧いただき、ありがとうございました。

ーー淡路島の名所、絵島

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