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「叩くのはダメ!」と子どもに約束させることの無意味さ

元テレビ局のアナウンサーで、NHKの「すくすく子育て」の司会も務めた天野ひかりによる連載です。 今まで5万人以上から相談を受けてきた親子コミュニケーションのプロが、実際によく相談される悩みをどうやったら解決できるか、自己肯定感を育てる会話のコツをお話します。

我が子が、お友だちを噛んだり、ママやパパを叩いたりした時、親としてどう対応するのがいいのか。とても悩みますね。
叩いたり、蹴ったりするのはいけないことだとしっかり伝えたい。でも叱りつけても治らない。
そんな時、親としてどう対応したらいいのか、原因と対応方法を教えます。

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■暴力的な大人になるわけではない

子どもが叩いたり、蹴ったりすると「いつもはいい子なのに…どうして?」と不安になりますね。暴力はいけないと繰り返し伝えても改善しない場合、どうしたらいいのか…と途方に暮れる気持ちもわかります。

まずお伝えしたいのが、この年齢で手が出るからといって、暴力的な大人に育つわけではないこと。ですから安心してください。焦らなくても大丈夫です。
きょうだいを同じように育てていても、その成長はまるで違います。ですから育て方に問題があるわけでもありません。
でも、できれば収まって欲しいですよね。どのように対応すればいいのか、まずはOKマンガを見てみましょう。

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■子どもが人を叩く理由

子どもが叩いたり蹴ったりした時は、親へのサインと受け止めましょう。

叩くのは、わかって欲しいことがあるのに、それをまだうまく言葉で伝える力が育っていないから。
園や学校で、ものすごく頑張っている。
モヤモヤする気持ちがある。
でも自分でどう整理していいのかわからない。
そんなとき、言葉ではなく、子どもは手が出てしまいます。

そんな場合は、子どもの気持ちをOKマンガのように親が代弁することでだんだん言葉で伝えることを覚えていきます。

つい親としては、「叩いてはいけないことを教えなければ!」と焦ってしまいがちです。でも本当に大事なのは、子どもが何を伝えたいのかを受け止めること。
幼ければ幼いほど、自分の気持ちを言葉にしてうまく伝えることができません。自分の気持ちをママやパパに気づいて欲しい時に、叩く、蹴るといった行動に出ているのだととらえましょう。

ですから、子どもが暴力的になったら「何を伝えようとしているんだろう?」と、子どもの気持ちに寄り添い、理解しようとする姿勢が大切です。
つい、叩くことがいけないだと先に教えたくなりますが、言えば言うほど、「ママ(パパ)は自分の気持ちをわかってくれない!」と感じ、逆効果です。
なぜなら子どもは、自分の気持ち(今回の場合は、ママと遊びたい気持ち)を親にわかってもらいたいからです。

お友だちやきょうだいを叩いた時も同じです。
相手がいることなので、つい暴力がいけないことを諭そうとしてしまいがちですが、まずは、子どもの気持ちを言葉に置き換えていきましょう。
子ども自身が、「この気持ちを伝えるには、この言葉を言えばいいんだ」と1つ1つ言葉を覚えていけるように親が代弁していくと、叩かずに言葉でコミュニケーションできるようになっていきます。

次に陥りがちな間違った対処法を見ていきます。

■子どもが暴力的になったときのNG対処法

NG対処法 痛みを教えるために、親も叩くこと

叩いた子の手を握り、パチンと叩いて「ほら、痛いでしょ?」と痛みをわからせようとする人がいますが、これは絶対にいけません。叩いて痛みを教えるという考え方は言語道断です。

理解させるためには暴力をふるっても良いという考えを、正当化することになりますね。
熱いものの怖さを理解させるために、わざとやけどを負わせるのは間違いであることと同じです。
やってはいけないことを学ぶために、痛い思いをさせる必要はありません。

NG対処法 子どもの暴力を受け止め続ける

子どもに暴力を振るわれた時に、やり返さずに、ずっと受け止め続けている人もいるようです。「子どもにやり返してはいけない」という優しさからだと思いますが、これもよくありません。

人を叩くことで、モヤモヤが晴れたり、思いが遂げられたりすることを容認することにつながるからです。イライラしたら、暴力を振るえば発散できるんだという発想になってしまうのはとても悲しいことです。
OKマンガのように毅然とした態度で、叩く手を握って叩けないように制止してください。そしてしっかりと目を見て、穏やかな顔で、気持ちを言葉に置き換える会話を重ねてみてください。

言葉のわかる年齢であれば、叩くのはいけないことを伝えて、あなたの気持ちを知りたいのだ、と聞いてみましょう。

NG対処法 叱って、もうしないことを約束させる

叱りつけて理解できるなら、そもそも子どもも繰り返し叩いたりしないはずです。
一方的な約束をしても効果はないですし、子どもの成長においても意味はないので、やめましょう。

子どもが叩いた時に、親は「叩くことをやめさせる」という発想になりがちです。
そうではなく、子どもが暴力的になったら、「これは我が子の気持ちを知るチャンス!」と考え、子どもの気持ちを吐き出せるように心がけたいですね。

■コミュポイント
「叩いてはいけないことを教えるより、叩かなくても通じる言葉を教えよう」

マンガ:とげとげ。

■プロフィール■
天野ひかり
上智大卒。テレビ局アナウンサーを経てフリーに。NHK「すくすく子育て」キャスターの経験を生かし、親子コミュニケーションアドバイザーとして 講演や企業セミナー講師を務める。子どもの自己肯定感を育てるため自身で立ち上げた「NPO法人親子コミュニケーションラボ」代表理事、一般社団 法人グローバルキッズアカデミー主席研究員。主な著書に『子どもが聴いてくれて話してくれる会話のコツ』(サンクチュアリ出版)
や『賢い子を育てる 夫婦の会話』(あさ出版)などがある。

#子どもの噛みつき #子どもの暴力