遊ばなくなった子どものおもちゃ、どう捨ててる?
元テレビ局のアナウンサーで、NHKの「すくすく子育て」の司会も務めた天野ひかりによる連載です。 今まで5万人以上から相談を受けてきた親子コミュニケーションのプロが、実際によく相談される悩みをどうやったら解決できるか、自己肯定感を育てる会話のコツをお話します。
おうち時間が長くなると、ついおもちゃも増えますね。もう遊ばなくなったおもちゃを処分したい。でも子どもの気持ちを考えると、なかなか捨てられない…という方も多いようで、「モノを大切することも教えたいので、なかなか処分できません。どうしたらいいですか?」というご相談も増えています。
上手におもちゃとお別れするために、親子でどのようにコミュニケーションをとったらいいのかを見ていきましょう。
まずはよくあるNGパターンを見てみてください。
■「捨てる・捨てない」で議論しない
子どもに聞くと「捨てないで!」と泣いて暴れるので、見つからないようにこっそり捨てています……という方も多いです。
でも子どもって「あのおもちゃどこ?」って、ある時急に気付くんですよね(笑)。だからなかなか捨てられない気持ち、よくわかります。
一方で、飽きたらすぐに捨てることを習慣にするのも、モノを大切にする心が育たなくなるのでは?と心配で、捨てられない方も多いのではないでしょうか
・モノを大切にすること
・モノを捨てること
この2つは、まったく違う意味のように感じますよね。
でも、よくよく考えてみると、使わなくなったモノを放置したり、押入れの奥底に眠らせたままにしていることは、「モノを大切にしている」とは言えないと思いませんか?
「捨てる」「捨てない」でおもちゃを見るのではなく、「モノを大切にするとは何か?」という視点で、お子さんとおもちゃについて話してみるのがおすすめです。
OKマンガを見てみましょう。
■モノを大切にするってなんだろう?
OKマンガいかがでしょうか?
え? こんなにうまくいくはずないって? たしかに1回ではこんなにうまくいかないかもしれません。
でも、おもちゃを放ったらかしにするほうが、悲しいことだと思いませんか?
おもちゃが「誰かの・何かの」役に立つためにはどうしたらいいか? という視点をもってみましょう。すると会話も少しずつ変わっていきます。
たとえば
「お下がりとしてあげて、年下のお友だちに使ってもらう」
「リサイクルに出して、新しいモノに生まれ変わってもらう」
「処分して、すっきりしたお部屋で気持ち良くのびのび遊ぶ」
など。
こうした発想が、本当の意味でモノを大切にすることにつながります。このことに気づける会話を意識するのがポイントです。
■一方的な「捨てるよ」はNG
お父さん、お母さんは、おもちゃの価値を値段で判断しがちですね。でも子どもにとっては値段なんて関係なくて、こだわりや思い出が詰まっているモノこそが大切なおもちゃ。子ども自身が、自分で考えて、答えを出せるといいですね。
「使ってないなら捨てるよ」
「片付けないなら捨てるよ」
「おもちゃ箱がいっぱいだから捨てるよ」
といった声掛けでは、モノを大切にする気持ちはなかなか育たないかもしれません。
■おもちゃとの上手なお別れの仕方とは?
おもちゃ1つ1つの物語を子どもが話せるといいと思います。こんなふうに問いかけてみましょう。
「このおもちゃは、いつ、どんな時に遊んだっけ?」
「だれと遊んだっけ?」
「どんな工夫をして遊んだっけ?」
「他のおもちゃと何が違うのかな?」
こんな感じで丁寧におもちゃの一生について、親子でお話をしてみてください。
すると「もう自分は十分に遊んでおもちゃを卒業した」ことがわかってきます。また、そのおもちゃについて話すのも面倒な場合は「もう自分は今は興味がない」こともわかってきます。
処分するモノを決められない場合は、好きなモノや必要なモノを選んでみるのがおすすめです。捨てるモノを選ぶより、好きなモノを選ぶほうが、ポジティブ。子どもの目の輝きも変わります。
そして
「もう、このおもちゃとはバイバイする」
「このおもちゃは、あの子にあげる」
「これは、工夫してもうちょっと遊ぶ」
など、自分で決められるようになっていきます。
この積み重ねで、おもちゃと上手にお別れできるようになっていくのだと思います。
■別れ方が身につくと、買い方がわかる
親子でたくさん話し、おもちゃを捨てることに悩んだからこそ、新しいおもちゃを買うときに
「本当に欲しいのか?」
「本当に使うのか?」
「それが1番いいのか?」
「すぐに飽きないか?」
「使った後はどうするのか?」
を考えて選べるようになっていきます。
こういった選択が、モノを大切にすることにつながるのではないでしょうか。
たかがおもちゃ……ですが、おもちゃから学べること、たくさんありそうですよ。
#まとめ #
今日のコミュポイント
「捨てる・捨てない」ではなく、大切にするために「話す」ことを重ねよう!
マンガ:とげとげ。
■プロフィール■
天野ひかり
上智大卒。テレビ局アナウンサーを経てフリーに。NHK「すくすく子育て」キャスターの経験を生かし、親子コミュニケーションアドバイザーとして 講演や企業セミナー講師を務める。子どもの自己肯定感を育てるため自身で立ち上げた「NPO法人親子コミュニケーションラボ」代表理事、一般社団 法人グローバルキッズアカデミー主席研究員。主な著書に『子どもが聴いてくれて話してくれる会話のコツ』(サンクチュアリ出版)
や『賢い子を育てる 夫婦の会話』(あさ出版)などがある。