ポステコグルー退任〜「ブレない」とは?
2018年1月23日 横浜F・マリノス新体制発表会。
それまで伝統的に「堅守」の色が強かったマリノスがシティグループと提携し、エリク・モンバエルツが改革の種をまき、満を持して現れたのが元オーストラリア代表監督のアンジェ・ポステコグルーだった。
アタッキングフットボールこそ勝利に一番近い道であるという信念。
ボスのサッカーはここから3年半の間ブレることはなかった。
1年目はあわやJ2降格かというところまでチームは追い込まれた。
勝っているのに攻め続けた結果追いつかれた試合もあった。
飯倉チャレンジという言葉が生まれ、ハイラインが原因の失点も幾度とあった。
選手の判断で固いサッカーを展開し3−0で勝った試合の直後に激怒したこともあった。
ただ、試合に勝っても負けても監督コメントはほぼおなじ。「自分たちのサッカーをするだけ」
ボスが就任してから3年半。アタッキングフットボールを展開し続けたマリノスの全公式戦のうち、スコアレスドローはたった5回。(俺調べ)
2018.3.14vs仙台(ルヴァン)
2019.3.29vs鳥栖
2020.7.7vs浦和
2020.4.21vs名古屋(ルヴァン)
2021.4.11仙台
では、この3年半、マリノスには変化がなかったのか。もちろんそうではない。選手、スタッフ、フォーメーション、戦術。サッカーの大きな要因になるものは変化し続けていた。しかし、それでもアンジェが指揮するマリノスは「アタッキングフットボール」=「自分たちのサッカー」からブレることはなかった。
退任の会見ではハイラインに伴うロングシュートを打たれるシーンについてこう言っている。
「私が監督をしていて、あの状況で実際に(ゴールを)決められたのは4回ぐらいで、他の3000回以上はゴールに入っていないので、あれを決められたらしょうがないと割り切っている」 (うん、BOSSやっぱあんた最高だぜ!!)
トレードオフ的な思考。それによる失点のリスクより得点と勝利のリターンの方が大きい。それ以上に、ハイラインという戦術(具体)を放棄することでアタッキングフットボールという理念(抽象)を実現するのが難しくなるというのがあるのではないかな
では、「ブレる」と「変化する」はどのように違うのか。
自分は「目的・理念=変えてはいけない」「手段、方策=変わってもいい」ということだと考えている。言葉を変えれば、抽象部分は変えず(=ブレない)に具体部分は変えて良いということだ。
例えば、会社。
YouTube講演家の鴨頭さんによれば、10年前存在した会社で10年後の今日存在している会社の割合はわずか「6.3%」だそうです。生き残っている会社は「世の中のために」という理念は変わらず、事業内容は時代に合わせて少しずつ変化しながら、生き残っているのです。確かに、今尚、頑なにポケベルを販売しようとしている会社が生き残っているわけありませんね。
例えば、GKコーチ。
「優れたGKを育てたい!」という理念は変わってはいけないと思います。しかし、指導方法、指導内容は経験や勉強を重ねて少しずつアップデート(=変化)していかなければなりません。というか、なるものです。むしろ、10年前とまったく同じ練習をしている指導者は淘汰されていくでしょう。(昔の教え子に申し訳ない思いを抱き続けながらやっていくしかないのですね)
例えば、人生。
「幸せになりたい」という思いは大事にしなければいけません。それは「一度始めたものをやめてはならない」とは全く違うものです。会社を辞めたからといってそれが「ブレてる」ことになるのでしょうか。心身ともに辛く消耗していく仕事を止めることができずに命を絶つ方が後を絶ちません。
例えば、DOGSO(決定的な得点機会の組織)
4要件の1つに「プレーの方向」がありますね。それはあくまでプレーの方向なので、飛び込んできたGKをかわすためにボールや攻撃側の競技者の進行方向が多少ゴール方向からずれてもそれはぶれたことにはなりません。(この例えあっているのか?w)
理念や目的がコロコロ変わるのはいいことではないと思う。しかし、具体的な方策や手段がいつまでたっても変わらないのは「ブレない」というポジティブなものではない。学習意欲や好奇心が乏しく、柔軟性や積極性、応用力に欠けるただの頑固者である。
(もちろん、抽象↔︎具体は相対的なものなので、何が理念・目的なのかは時と場合によって変わることもあると思う。)
色々な変化があっても3年半に渡り「アタッキングフットボール」からブレなかったアンジェ。そのサッカーを継承するのは並大抵のことではいと思うが、今こそ「ブレずに」「勇猛果敢」にトライして引き続き攻撃的なサッカーを展開してほしいと思う。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?