20230121 日記268 アイカツ! 10th Story ~未来へのStarway~の感想
観てきました。
※以下めちゃくちゃネタバレするので、まだ映画観てない人は読まないでください。
俺とアイカツ2012-2016
映画館の座席に着席して、自分にとって『アイカツ!』という作品は何だったのだろうということを改めて思い直していた。
観始めたきっかけは、俺がスフィアという声優ユニットのことが大好きで、そのメンバーである寿美菜子さんが出演されていたからだった。
夏色キセキというスフィアメンバー4人が主演を演じたテレビアニメがあり、その制作スタッフが引き継がれたというご縁もある。
当時は、スフィアの活動を追う中で、アイドルとは何か、ファンとは何か、この感情はどこへ向かえばいいのか、自分は彼女たちに与えられ、何を返せるのかというのを、常に考えていた時期でもあった。
そんな中、テレビアニメ『アイカツ!』で描かれたアイドルとファンの関係性というのは、思いがけず、俺が考えていた理想の形、そのものであるように感じた。
俺はアイカツ第4話『Oh!My!Fan!』が大好き。
この回には、主人公の星宮いちごちゃんにとっての初めてのファン(※あおい姐さんを除く)である太田くんが登場する。
ステージの上で転んでも、諦めずに笑顔で立ち上がったいちごちゃんの姿をみてファンになった太田くんは、いちごちゃんとあおいちゃんと一緒にランニングする(越権行為では?)中で、走ることの楽しさを思い出し、辞めようと思っていた陸上を再開することになった。
いちごちゃんとあおいちゃんのオーディションの日、太田くんはライブで観て応援するのではなく、自分も陸上の地区大会に出ることを決意し、それぞれ練習の日々を過ごす。
いちごちゃんとあおいちゃんはオーディションに合格。太田くんも大会で自己ベストを更新し、予選を突破することになる。
太田くんとの出会いを通じて、いちごちゃんは観客席にいる『誰か』の想いに、初めて触れることになる。
彼はその後、星宮いちご最古参オタクとして頻繁に作品に登場するワケではなく、いちごちゃんのアイドルとしての成長を見守る一人として描かれ、次第に名もない観客の中に紛れていくことになる。
それぞれの人生の中で、ステージの輝きを受け取った一人一人が、善き日を過ごすための原動力となる。
俺がスフィアのステージを追い続ける中で、与えられてきた一番大きなものは、自分の人生を少しでも前向きに、善く過ごすためのエネルギーであり、この話を観た時、何か救われたような気持ちになったのだった。
アイカツ!が始まったのが大学3年生の冬で、就職活動という人生の岐路に立たされていた時期でもあった。
その頃には、自分の中で本当に大きな作品になっていて、アニメ制作会社に就職するなら『けいおん!』の京都アニメーションか『アイカツ!』のサンライズしかないと思い立ち、サンライズは実際に面接まで行った。(落ちた)
今にして思えば見通しが甘く、トライスターオーディションの結果を見守りながら、ダイヤモンドハッピーに勇気を貰いながら、俺はこれから何者になれるのだろうと就職活動をする日々だった。
『アイカツ!』と出会って全てが上手く行ったわけではないけど、毎週の放送には、日々を頑張って生きるためのエネルギーをもらった。
それは、俺が思うステージの上のアイドルの姿そのものを体現していたように思う。
俺とアイカツ2023
そうして『アイカツ!』に奮い立たされ、就職した会社で働き始めて9年が経ち、俺も30歳を過ぎていた。
テレビシリーズが完結した後も『アイカツ!』のことを常に考え続けていたかといえば、それもそうではなかったと思う。
新シリーズが始まる中、旧作が女子小学生に対してではなく、大人たちを喜ばせるためのアプローチを続け、独自に延命しようとしているのをみて、俺側に寄ってきてくれているのに、好きだった『アイカツ!』が俺側に寄ってくるのがあまりに嫌すぎて離れたりした時もあった。
それでも、武道館ライブで、やっぱり俺は『アイカツ!』が大好きなのだと魂を揺さぶられて、仕事で大遅刻するのが確定しているのに、それでも行かなくてはいけないと急遽チケットとった2日目で『MUSIC of DREAM!!!』を聴いてスターズも観ることにになった。
放映開始から10年という時間が経って、今回の映画も指折り数えて心待ちにしていたというより、皆さんのつぶやきを目にして、公開を思い出したような感じだった。
それでも、上映2日目に行かなきゃと思わされて、仕事を早く切り上げて映画館に向かったのは、血となり、肉となり、俺という存在と『アイカツ!』と過ごした時間が不可分になっていたからこそなのだとも思わされる。
映画の感想
10年という時間は、かつて夢を抱きながら『アイカツ!』を観ていた人が何者かになるには十分な時間で、実際に夢を叶えた人もいるのではないかと思う。
かつて、見通しが甘くても、将来どんな自分になるのだろうと不安と希望を抱えながら『アイカツ!』を観ていた俺が、今の俺をみたらどう思うだろうか。
変わったことも、変わらないことも、変われなかったこともたくさんある。
それでも『アイカツ!』と出会って10年が経って、ココまで歩いてきたという、ただ、その事実と道のりを、星宮いちごちゃんと作品が肯定してくれる作品だったように思う。
『アイカツ!』が支えてくれた日々は、間違いなく青春の一つで、俺はその青春を振り返り、永遠にする卒業式をちゃんとやってくれたことが、ただただ嬉しくて仕方なかった。
印象的だったのは『翼』のモチーフの使い方だった。
これまで、憧れの象徴である神崎美月さんや、アイドルとしての己を跳躍するための味方として、各ブランドのデザイナーさんが創ったプレミアムドレスに翼が授けられた。
今回、ソレイユのユニットドレスに生えた翼は、ここまで歩き続けてきたお互いの時間があれば、これからは時間や空間を超越して、いつでも会うことができる。その約束を果たすための翼であったように感じた。
そして、10年経っても、自分の心の中にここまで大きく『アイカツ!』が残っていたという事実をもって、この映画を見るたびに、きっと約束は果たされるのだろうとも思えた。
アイカツと出会って10年が経ち、30歳になった俺だからこそ刺さった映画で、2014年に観た劇場版アイカツ!よりも、今の自分にとってはこの映画がいいと感じて、今も俺の心に確かに『アイカツ!』は生きているのだと思えたことが嬉しかった。
印象に残ったシーンや描写
1個だけ言っていい?
7頭身のらいちが出てきた時、爆笑しちゃった……。
その後、アイドルたちに囲まれて、酔っぱらったユリカ様に近距離で絡まれたり、かえでちゃんにタクシーで送られても平気そうな顔してるらいちに「〇す………〇すぞ…………」という感情が蘇り、久しぶりに湧き立つ血の記憶も蘇った。
らいちも、女装してスターライト学園に侵入する犯罪者時代を経て、己のファンとしての情熱をちゃんと真っすぐに表現できる男になっていき、和解への道を辿ったが、7頭身になって、おすまし顔でメシ食ってるシーンで、てめぇ表出ろや!!!!!!!!!!!!!という気持ちが蘇ってしまった。
スターライト学園のアイドルたち、成人したからといって、すべからく飲酒しすぎだろ。
そこも含めて、もろもろこちらに向けたサービス精神がめちゃくちゃ旺盛だなとは思ったけど、この映画に関しては、逆にそのくらいの濃い味付けでちょうどいいと思えたのも凄いバランス感覚だった。この辺りは加藤陽一さんが巧みな気がしている。
中学時代、卒業式前に、その世代のヒストリーを振り返るストーリー調の語りがあって、合唱に入るという型があり、冷静に考えるとお涙頂戴すぎだろ……と思っていたけど、なんやかんやめちゃくちゃ感動したやつを思い出している。
あと、ルミナスのライブパートが掛け値なしに良かった。
俺は、サムライピクチャーズが作った『アイカツ!』のライブパートが大好きで、観客の興奮度によって優劣が決まるアイカツ世界のライブのどこに勝敗があるのかを、わずかな目線や振る舞い、カメラワークを通じた観客の目線の中に、説得力をもって描写できていて、感覚的に感じたライブパートの優劣と、作品内で描かれる勝敗に齟齬があったことはほとんどなかった。
ただ、唯一、大スターライト学園祭で、ぽわプリとトライスターを抑えて、ルミナスが2位になった判定だけは、今でもあまり納得できていない(両ユニットへの想い出補正を抜きにしても)(本当にそういうの抜きにしたいなら、あそこで満を持してしおんちゃんのステージを描く仕掛けをするな)のだけど、単純に、ルミナスというユニットに分かりやすいアンセムが無かったことも理由の一つではないかとは感じていた。
いい曲は多いのだけど、テクニカルというか、ノリづらいというかという感じだったので、今回の新曲は、3人それぞれの個性が生かされつつ、ルミナスのわくわくした感じが的確に表現されていて、ようやく、ライブパートでルミナスめっちゃいい…………と思わせてくれた。
あと、いつも笑顔の中にどこか影を背負って笑っている(それが大きな魅力でもあった)新条ひなきさんが、ユニットの中では100%楽しいという表情で歌っているのを確認して涙してしまったりもした……。
ライブパートは全体的に嬉しかったが、先輩の美月さんが普通に卒業式に混じってる(しかも単体ではなくトライスター、ぽわプリ合同ユニットとして)の、学園やめて卒業式するタイミングなかったからかな……とは思ってしまった。
2023年現在、初代アイカツのライブ技術はもう最新ではなくなっているのだけど、それでも、あえて当時のままにしているようにも感じ、今でもこのライブパートでしか表現できない質感はあるように感じた。
大人になったおとめ様みたかった……。
出したいキャラクターはたくさんいただろうに、お話を真っすぐ成り立たせるために、ドリアカやルミナスの3人を除く大空あかり世代の後輩たちは描かず、星宮いちご世代で大半のお話を展開したのは潔かったと思う。
楽曲も田中秀和氏の曲たちが避けられる中で、割とこれしかないという選曲になっており、エンドロールが『SHINING LINE*』なのは、普段ならやりすぎだろと思っちゃうけど、この映画に関しては、やはりこれしかないよね……という気持ちだった。
『Signalize!』も同じく。(最後のスライディングする振り付け久しぶりにみて、めっちゃ嬉しくなってしまった……)
俺とアイカツ2023-
スフィアの話に戻ると、コロナ禍もあって、スフィア名義のライブは3年近く行われておらず、新曲も1年以上出ていない。ソロの活動も豊崎愛生さんのアルバムリリースとツアーを最後に止まってしまっている。
俺自身、代わりに活発に行われているIDOLY PRIDEのライブ活動や展開、スフィアとしてのWebラジオ、YouTube動画の配信などを熱心に追えているかというとそうではなく、徐々に楽曲を聴く頻度も減ってきている。
ある意味、今回『アイカツ!』に感じた思いと似ているような気がしていて、かつて自分のほとんど全てだったステージと出会えなくなっても、自分の中には、血となり、肉となり、あの時受けた輝きは残っていて、そのエネルギーで歩き続けてきた先に、今の自分がいる。
31歳になろうとしている2023年、10年前に抱いた夢を叶えるために、もう一度ゼロから積み上げて、今度こそは挑戦をしようという気持ちになっている。
大好きで、憧れで、生きるための目標でもあったあの4人に、今は会えなくても、いつか再会する機会は絶対にあると信じて、その時までに、今度こそ見通しが甘い自分と向きあって、夢を叶えた自分で会いたいなと、今回の映画をみて改めて思わされた気がした。
今、向こうが小休止してくれているのであれば、こちらがそこに辿り着くためのチャンスでもある。かつては早すぎて見えなかったので。
でも、多分小休止しているのではなく、彼女たちも、次に会った時はもっとすごい姿で再会できるように日々を重ねているのだとも思う。
いちごちゃん、あおいちゃん、蘭ちゃんのように、なりたい自分を探して、見つけて、積み重ねて、乗り越えて。そういう日々を過ごした先で、また『アイカツ!』と再会する日が来るのだろうと思う。